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伊坂幸太郎『777』感想


そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そして――
累計300万部突破、殺し屋シリーズ書き下ろし最新作
『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!

やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。

そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!

KADOKAWAオフィシャルサイトより引用

物語に引き込まれ、後半の怒涛の展開に合わせるかのように読むスピードがつられて早くなっていき、あっという間に読み終わってしまった。

私の大好きな殺し屋シリーズという事もあり、楽しみにしていたのだが
期待を上回る面白さ。

777は登場人物がかなり多く、戸惑うかもしれない。
しかし伊坂さんの殺し屋シリーズに出てくる登場人物にはユニークなコードネームがつけられており、意外と覚えられてしまう。
『奏田(ソーダ)』と『高良(コーラ)』とかね。

物騒だけど、びっくり系のホラーではないため、
『殺し屋シリーズ』と聞いて構えてしまう人にも是非読んでいただきたい。

小説でいて、映画のようだった。
それぞれの視点でスピーディに切替わる物語が、ひとつのアクション映画を観ているようだった。

会話の書き方も面白く、空白や鍵かっこの連ね方で会話が音で聞こえてくるようだった。
ここは考えながらぽつぽつと話してるんだな、とか
ここはみんな一斉に話してるのかな、とか。

同著者の作品『フーガはユーガ』を読んだ時も思ったが、
対比の表現が面白い。場面の対比もそう、人間の性質の対比もそう。

持っているものと、そうではないもの。
平凡なものとそうではないもの。
惨忍さと慈悲。
お互いの表現が繊細で解像度が高い。

どちらの該当者も解像度の高さに驚くかもしれない。

登場人物のキャラクターが立っており、
それぞれの人生の背景を考えさせられた。

情であふれている場面もあり、
絵空事で片づけないリアルさもあり。
私にはその温度感が心地よかった。

人との何気ない会話って、忘れているようで
関連するものを見たときにふわっと思い出したりする。
なんでこれ?って笑っちゃったりする。
忘れたいことほど忘れられなかったりするし。

自分の中の曖昧で繊細なところをくすぐられているような気分になりながら読んでいた。

タイトルの秀逸さに毎回驚かされる。777。
三つそろう事は滅多にない。
揃ってしまった、揃ってくれた話、そう解釈した。

2回目以降は落ち着いて読み返そうと思う。

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