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鳥取県日南町ブレンド ~いろといろ~

自分の起源の50%は神戸で、残りの50%は鳥取県日南町だ。農業と林業が中心で自然豊かな町。母が6歳の時に祖母がなくなり、男手ひとつで育った影響からか、幼い頃から何度も通った町。

20年余り前に亡くなった祖父の家は空き家で、現在もたまに空気入れ換えに行く。江戸時代からの建物で、母屋、 馬小屋、 囲炉裏、釜戸、五右衛門風呂。もちろん便所は「はなれ」だ。屋号が代名詞のこの集落では、私のことを「○○屋の孫」と呼ぶ。田畑の手伝い・川遊び・ハンザケ・蛍・花火大会。そしていつかの小学校の盆踊り大会。母の通った小学校だったらしく、既に廃校になっていた。「かしこく、が笑えるでしょ!」と母がいつか言っていた校訓は「仲良く かしこく たくましく」だった。

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そんな思い出ぶかい町は、かつては伝統的な 「たたら製鉄」で栄えていた。 そして製鉄に欠かせない「炭作り職人」の支えがあった。町では数年前から「たたらの火(伝統)を絶やすな」 との思いから、地域の人たちが窯を作り、少しずつ炭を作り始めている。「コーヒーに最適な炭」と言うわけではない。ただ、町の人たちも、わたしも思いが深く詰まっている。便利とか、値段とかじゃなくて「ひととひと」の話なんだと思う。だから、コーヒー焙煎に使用させていただいている。

今回、この町のブレンドコーヒーを作らせていただくことになり、あらためて日南町を訪れた。町役場の方の心づかいで母の生家の近く、多里で昼食を取り、旧日野上(ひのかみ)小学校を訪れた。

そこには、いちょうの木がある。高いのではなく「丸い(まぁるい)」。そして、ひと目で長い年月を感じられる大きさ、何かを包み込むような形だ。昔の校長先生が、強風でも木が倒れないようにと、先端(主幹)を切ったそうだ。だから一本一本の枝がとてもよく伸び、絡み合いながら「まぁるく」なっている。

あの信号をすぎると 大きな木がみえてきます
いつも いつも たっている大きないちょうの木
手をつなぎ 助け合い ともに生きていく
大きないちょうの木の下で 僕らは出会う
※ 一部引用:大きないちょう木の下で / 作詞作曲 木下 忍

まちの人たちにとって「大いちょう」は思い出の場所だけではない。再会の場所、出会いの場所、人々が集う場所でもある。四季を通じて色が変わったり、見る人によって思いが違ったり。まちをモチーフにして作られるブレンドコーヒーは、それらのすべてを「まぁるく」包み込むような風味に仕上がり、「いろといろ」と名付けて頂いた。

今回の訪問はデザインを描いていただくryokaさんから希望があり、実現した訪問だった。訪問後に日南町のみなさんへメッセージを頂いた。※一部掲載

昔の記憶の中の いちょう
人と繋がる いちょう
この先も受け継いでいきたい いちょう

日南町の方々が惹かれているのは
目に見える「いろ」だけではなく 目に見えない「いろ」

大いちょうの枝葉は 人々の思いの受け皿であって
そこに集まる「いろ」に目を向けたい

※ このコーヒーは、鳥取県日南町のために作るコーヒーです。萩原珈琲では買うことができません。是非、この機会に日南町を訪れ、町に触れてみてください。

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