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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6… もっと読む
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#書評ブログ

本のことをとつとつと

16年前くらいから読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6年ほど続けたものの、忙しくなって中座して今に至りますが、今回会社で綴っているコラムをアップし始めましたので、並行して過去の備忘録をこちらにもアップしてみようと思い立ちました。 一番新しくても6年前の本にはなりますが、いいお話は時代を越えますので何かの参考になればと思います。

水戸黄門化しても面白いもの

久々の読書の投稿となります。 IWGP この文字の並びを見てピンときた方は、プロレスファンか私の好きなシリーズのファンですよね。 毎年、9月中旬頃に最新刊が発売されるのを楽しみにしています。 ずっと読んできた大好きな現代ものの連作短編シリーズはと言えば、この「池袋ウエストゲートパーク」か「東京バンドワゴン」になります。 池袋駅西口公園の片隅で八百屋を営みながら、様々なトラブルに巻き込まれながら無償で問題解決をしていくトラブルシューターの物語。 文才のある主人公が、

平和を求めて歴史に抗った好漢の物語

織田信長が好んで唄ったとされる幸若舞の演目のひとつである「敦盛」。 その中に、「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり」というくだりがあります。 ここでいう「人間」は、「にんげん」と詠むのではなく、「人の世」を意味する「じんかん」と詠みます。 つまり、「人の世の五十年は、下天と比べればただの一日でしかなく、はかないものだ」という意味になります。 そして、今回紹介する一冊は、この「人の世」を何とかせんとして最期まで奮闘した武将の生き様のお話です。 主人公は、

ど直球のラブストーリー

ど直球のラブストーリー。 自己表現の不得意な彼氏に、自分に自信が持てない主人公。 二人が織りなす圧倒的にピュアな恋愛模様が、心臓のど真ん中を貫いていきます。 ちょっと乱暴な岐阜の方言が、かえって彼氏の優しさを際立たせてくれます。 心の荒んでいる人には、是非ご一読いただきたいです。 久々に誰かに教えたくなる漫画でした。 11月からドラマ化もするみたいですけれども、観たいような観たくないような。 今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

逞しい少女たちの物語

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で大好きになったノンフィクション作家による最新小説。 切り口はこれまでどおりシニカルな子供目線。 今回の主人公は女の子。 イギリスの低所得者層としてアル中の母親とひ弱な弟を支えながら、今を必死に日々を生きるその姿勢と語り口は、これまで以上に切れ味鋭くイギリス社会の貧富の差と現実を鮮明に描き出します。 同時に、この物語には裏の主人公がいます。 女の子が現実逃避をするために没頭する本というのが、日本の大正時代のアナキストである

パンチのある風刺の効いた男女逆転小説

ビル・ゲイツとオバマ前大統領、エマ・ワトソンらがその年に読んだベストの一冊として推薦する本書。 かつてあったとされる男性社会からどのように今の女性社会が樹立されていったかを描いた、男女の立場を逆転させたディストピア小説。 本書の作者は女性ですが、物語は「男流作家」の書いた小説という体裁をとっているのも興味深いです。 「男流作家」、聞き慣れない単語ですけれども反対の立場の単語は使っていますよね・・・ ある時、女性は進化します。 鎖骨辺りに眠っていた渦巻き状の器官が目覚

夢で見るほど先の展開が気になる本

全米のSF小説部門で5ヶ月連続1位。 AmazonでもSFファンタジー部門で年間ベストの一冊。 ビル・ゲイツの今年の5冊に選出。 とにかく読みはじめたら止まらないし止められないし、止めたら続きの展開が気になって夢に出てきます。 ただ、これだけは残念ながら本書の面白さを味わっていただきたいがために、一切の情報を与えられずに是非読みはじめてみて欲しいです。 ひと言だけ触れるとしたら、 というのが、本書の醍醐味でしょうか。 いや、本来ならこんなことさえ言ってはいけない

ナウシカの世界観と農業の融合

精霊の守り人シリーズ、獣の奏者、鹿の王。 圧倒的に読ませる壮大な世界観を持つ物語が、また新たに紡がれました。 今回はタイトルからお察しのとおり、「香り」がひとつのテーマとなっております。 そして、それ以上に大きなテーマは食物の連鎖について。 国同士の争いの中で、人々の新たな在り方について模索して、自らの生命を賭して説いていく。 そんなナウシカの世界観と重複するような雰囲気を持つ、魅力溢れた物語です。 多くの予備知識は不要です。 本好きで、上橋菜穂子さんの物語にま

透明になった時の対処本

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2005年10月28日に投稿したブログより。 面白い本に出会えることは嬉しくそして喜ばしいことです。 娯楽のエッセンスがぎっしりとつまった、本の雑誌でここ30年のベスト1に選ばれた作品。まあ果たしてベスト1かどうかは別にしても、一気読みは間違いなしです。 透明人間って聞くと、俺らの世代はイクラを食べると透明になっちゃう下世話なマンガ(驚くことにまた新たに連載が

男の品格とは?

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2006年8月24日に投稿したブログより。 久々の教養本。ホント小説ばかりしか読んでなかったですし。 これは上司から薦められました。 しかも夜のお付き合いでご迷惑をおかけした相手からだったので、手渡されてタイトルを見た瞬間は、アチャーッという感じでした。向こうもニヤッとかこころもち笑っていましたし。 ただ、読み進めていくうちに、あ、あの人は私にもっともっと成

名前をもらった女流棋士

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2006年8月29日に投稿したブログより。 娘の名は棋士である高橋和さんからヒントを得て、というか、まんまいただいております。 で、ご本人のことをどこまで知っていたのかというと、娘の名前を決めた時には正直知っていたのはお名前だけ。 本書の単行本版を読んでいたのは私の両親の方で、ちょうど娘が生まれた際に、本やらテレビやらで目にしていたらしく、いい名前があると薦め

殺し屋小説の佳作

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2006年7月12日に投稿したブログより。 めちゃめちゃ抜きん出ている訳ではないけれども、新作が出るたびに手にしてしまう、そんな作家の一人です。 殺しの動機や、痕跡をきっちりと消して仕事をすることからも、消し屋を名乗る主人公の殺し屋小説。 一匹狼の主人公が淡々とターゲットを見定めたり、語ったりするあたりは、ローレンス・ブロックの殺し屋ケラー・シリーズを彷彿とさ

優しいお話

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2006年7月26日に投稿したブログより。 このテイスト好きです。 博士の愛した数式を読んだ時には、あまりにも作品自体がメジャーになっていたので考えもしなかったのですが、小川洋子のテイストって結構いしいしんじに似ているのかも、と今回読んでみて感じました。 フワフワとした感覚の中、意味不明と言うかヘンテコリンなキャラクターが出てきて、何だか分からないうちに絵本の

ブ厚くても一気読みで最高の読後感

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2005年12月21日に投稿したブログより。 おそらく今年読んだ中でも1,2を争う家族小説の佳作です。 前から気になっていたのですが、案の定今年の文庫王国ベスト1の座を獲得。それも納得の読み応えです。 娘二人と両親の四人家族が主役ですが、母親は20年以上のプチ家出中、お父さんは変化やトラブルを嫌う超ことなかれ主義、姉は甲斐性なしの男へ貢ぐことを生き甲斐とし、妹