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トランスジェンダー問題とデンマーク政府のヤバさ

前回の記事を読まれた方の中には、日本の LGBT法に比べると、デンマークは比較的マトモかも、という印象をもった人がいるかもしれません。
しかしながら、北欧神話信者が日本でさらに増加すると困るので、今回は、デンマーク政府のヤバさについて一点明記しておきます。

その前に先ず強調しておきたいのは、トランスジェンダー問題については、政治的左派・右派の二元論はこの際さけるべきです。これは党を越えていろんな意見・立場があるからです。

ただ、だれが政権を担っているかは重要なので一応書いておくと、デンマークの最大政党は、社会民主党 (The Social Democratic Party) です。弱冠45歳のメッテ・フレデリクセンが現党首で、彼女が現在、デンマーク首相の任についています。

性別の定義を軽視するデンマーク政府

で、何が問題かというと、現在 デンマークで与党となっている社会民主党は、法的に性別変更をするための「年齢制限 撤廃」を推し進めています。

現在、デンマークでは18歳にならないと性別変更はできません(念のために繰り返すと、前回も書いた通り、性転換手術は必要ありません)。フレデリクセンが首相になった翌年の2020年に、政府はこの年齢規定を、10歳~12歳まで引き下げることを提案しました。

ただし、この案は倫理評議会からの批判にあい、廃案になりました。
倫理評議会が年齢引き下げに反対したのは、「思春期前の子供が、性別変更に伴う法律上の責務などを理解できるか疑わしい」と言う、至極もっともな理由からです。

これで懲りたかと思いきや、フレデリクセン政権は、昨年(2022年)に、今度は、年齢制限撤廃、つまり、ゼロ歳児から合法的に性別変更を可能にする案を提出しました。これも確か昨年末の審議で否決されたはずです。

そもそも、「ゼロ歳児からの性別変更を合法にする」法案って、一体どういう了見なんでしょうか。それって単なる親のエゴじゃないですか?親の勝手な好みで子供の性別を法的に変えられたら、たまったものではありません。

本当に法的な性別変更が必要なのか

たしかに、幼稚園くらいになったら、女の子・男の子の嗜好が子供本人にも表れてくるかもしれませんが、それとて成長と共に変化します。というか、女の子の物が好きだったからといって、女の子になるわけではなりません。逆もしかりです。

「性別変更に性転換手術がいらないんだから、幼少時に法的に性別を変えちゃってもいいんじゃない?」という軽率な意見もありますが、例えば、男の子が、自分は女だと思うからと言う理由で書面上の性別を女性に変えたところで、身体的には男なので、デンマークではトイレは男子用を使い続けることになります。たんに女性の身なりや振る舞いをしたいんだったら勝手にすればいいわけで、それを正当化するためだけに「法的な性別変更」がいるのか疑問です。

にも関わらず、デンマークは、「人権擁護」の名のもとに、性別を「自称」に基づいて、いとも簡単に定義しています。そして、あまりにも安易かつ早期に性別変更をするのは、たとえそれが性転換手術を伴なわずとも、個人のアイデンティティー形成に大きな影響を及ぼします。

若年層の性転換手術を助長する恐れ

むしろ心配なのは、安易な性別変更が、若年層の性転換手術を助長する危険性です。書面上、法的に他方の性になった場合、当然、その「トランスしたほうの性」に体も適合させたい心理が働くからです。

また、社会的プレッシャーもあります。「法的に女性っていっても体は男だよねぇ?(又はその逆)」と言われるのが嫌で、やむなく性別適合手術に至るパターンです。

性不同一が明らかで、一生続く人はそれでいいのかもしれません。ですが、実際には、例えば女性の場合、18歳を過ぎてから女性としての性や母性にめざめることは多々あります。何なら出産してから初めて母性に目覚める人も結構いるんじゃないでしょうか。

さらに言うと、女性だけれども母性本能に欠けていたり、女性的な物事に興味がないとしても、だからと言ってその人が男性になるわけではありません。性別を決定づけるのは、とどのつまりが身体的・生物的な性別です。

そして、それを人工的に変える性別適合手術は、不可逆的外科手術です。やったが最後、戻せません。身体的な見た目を若干やり直すことはできても、生殖能力は失われます。若年層にたいして、そんな一大決心を促すのって、政府としてどうなんでしょうか。

デンマーク政府の意図とは

デンマーク政府がなぜ「ジェンダーの自由化」をそんなに熱心に推し進めるのか私には分かりません。たんにジェンダー先進国のイメージを定着させたいだけかも知れません。

あるいは、フレデリクセン首相の個人的思想かもしれません。ちなみに、フレデリクセン首相は「子供たちの首相」を自称しています。ですが、子供の「権利」のためというよりも、少数派の「欲求」に対応しすぎて、むしろ長期的には子供の人権蹂躙になりかねない危険をおかしています。

あと、前回の記事で LGBT には利権が絡んでいる、と書きましたが、実際、性別適合がらみの医療は儲かるのですよ。アメリカでは、「思春期ブロッカー」と呼ばれる思春期抑制ホルモン治療などを含む性転換医療は、何十億ドルの巨大マーケットです。

そして、デンマークの主要産業のひとつをなしているのが、製薬・バイオテクノロジー業界です。
デンマークが、単にハッピーなおとぎの国だと思っていたら大間違いです。

参考 (YouTube videos - 思春期ブロッカー等の被害者: 米国の例):
Detransition: The wounds that won't heal (2023) [ただし2時間と長いです]
Former trans kid Chloe Cole takes on John Oliver (2022)
Identity Crisis (2022) [閲覧注意:手術や治療過程の場面があります]


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