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節操のないデンマークの卒業式

6月のデンマークは素晴らしく美しい季節ですが、個人的には憂鬱なこともあります。それは何かというと、学校の卒業式、特に高校の。

私は大学で教えているので、高校は関係ないやん?と言われればその通りです。が、6月の最後の週にデンマークにいたら、高校卒業を祝うイベントのせいで、かなりの騒音に耐えなければなりません。

6月末、デンマークでは、白い学生帽をかぶった10 代の若者たちをあちこちで見かけます。高校を卒業したての子たちです。彼らの精神年齢を鑑みると、あえて「子たち」と言いたくなります。

高校卒業のトレードマークともなっている学生帽をかぶって群れているだけならいいのですよ。むしろ、微笑ましい光景です。

しかしながら、デンマークでは、高校卒業を祝うのに独特の慣習があります。それは、大きな飾り付けをしたトラックの荷台に卒業生たちが乗り、大音量で音楽を流しつつ歌い踊り、歓声をあげながら(というか、奇声を発しながら)街中を巡回します。

あえて日本のものにたとえて言うと、選挙の街宣車に近いうっとおしさです。むしろ街宣カーよりも迷惑なくらいです。

デンマークに来た直後、これに出くわしたときはびっくりしました。
なにせ、大音量で音楽を鳴らしてちんたら低速で走行するトラックに、若者男女がすし詰め状態です。暑い日なんかは、ほぼ全員半裸です(まじで)。男子は100%上半身はだかです。

自分達はトラックに乗っているのをいいことに、通行人(とくに有色人種)にたいして蔑視的な言動をしたり罵声をあびせる場合もあると聞いています。また、信号で止まって隣り合わせになった日には、運転している人達を煽ってきます。

これに比べると、日本の高校の卒業式はなんと純情で情緒あふれることか、と思います(昭和世代なもんで。今は知りませんが)。意味がないとか無駄遣いではないかと賛否両論ある、日本の成人式ですらかわいいもんです。

行きかう人や車に暴言を吐いたり挑発したり、時間を問わず大音量の音楽を流して徐行運転してたり(夜中まで徘徊しているオープンカーもたまに見かけます)ハタ迷惑なこと、この上ない。

でも地元住民は何食わぬ顔をしている場合が多いです。むしろ、この騒々しい集団に、クラクションを鳴らして応答するドライバーなんかもいて、その相乗効果でよけいにうるさいです。でも、もはやこれが風物詩になっていることに加え、大人世代も過去にそれをしてきたので、むしろ郷愁の念をもって受け入れているのだと思います。

外国人の私からしてみれば、そんなん知らんがな、としか言えませんが。

騒音などのネガティブ要素を度外視して、やれ白い学生帽がかわいいとか、北欧文化は素敵とかほざいている人達をみるにつけ、北欧幻想は根深いな、とちょっとゲンナリします。

若い頃のわが身を振り返ると、自分もやんちゃな時期があったのですよ。私が日本で高校を卒業した時代はバブル真っただ中でしたし、ディスコ全盛期でもあり、仲のいいグループで集まって乱痴気騒ぎもありました。

でも、デンマークの高校卒業生のように、白昼まっただなかの公道でバカ騒ぎを延々とする、というのは、ちょっと理解できません。

デンマーク人って、実は、精神的にすごく抑圧されているのではないかな、という気がします。それがゆえに、通常は大人しく、表面的にはある程度の節度を保っていても、集団化がすると突如豹変し、むしろ傍若無人になる傾向があります。

あれ? ひょっとして日本人の国民性に似てるかも。

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