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梨さんの『Araneid』に思いを馳せる

今回の話は”いかにも怪談話〜”って感じで、夏にピッタリでしたね。
それにしても、ウェブでしかできない文章表現には度肝を抜かれた!
こんなにも縦に長い文章に出会ったの、たぶん人生で初めて。
ゲーム感覚で読めて楽しい〜

とても有名な”芥川龍之介の『蜘蛛の糸』”を下敷きにした怪談話だったようですが……こんな悍ましい話になるとは😅

色々思いついたことを書いていきます。
考察にあたり、梨さんの著作『6』や、そのトークショーでのことも触れてます。
ナチュラルにネタバレしますので、未読の方は、まずはオモコロ行って読んできてくださいね!



◉まずは感想

・今回、本当感心したのは文章の形態です。
何がすごいって、登場人物たちの動きが文章の形に連動してるところ。
”別行動してるとき””一緒に行動してるとき”が視覚でスッと理解できる。
おもしろい。

・最後の逃げ惑ってるところが文章の蛇行に表れてて、良かった☺️
あそこの形が漢字の『四』にも見えるのは、肝試しした『4人』という人数に掛かってたりするのかな〜?

・あとはオチの”子供たち”で真っ黒になっちゃうとこね。
すごいよね〜。
蜘蛛の子供に集られて真っ黒になってる姿が自然と頭に浮かぶもん。
ゾッとした🥶

明快で怖い怪談話でしたが。
深読み考察していくとさらにひんやり出来たので、以下に書き記します。
納涼🎐

・この画像のあみだくじも洗練されたロゴっぽくて好き。オシャレだよね〜


◉考察&妄想

※仏教についてはネットでサッと調べた程度のガバガバ知識しかないです。

✳大まかなストーリー

・このお話、だいたいのストーリーとしては「日本家屋で亡くなった誰かと、逆さ屏風を使った儀式で蜘蛛の異形を呼び出してしまった。
この異形は噂を流して、肝試しに来た人間をエサや仲間にしている。」

……みたいなのが想像できたんですけど。

もうちょい考えてみた。

✳仏教をモチーフとした怪談

・『Araneid』と新刊『6』は同じ【仏教】をモチーフとした作品っぽい、というのが読み取れるので、そこに着眼して考察していきます。

『Araneid』
→極楽浄土の話、阿弥陀如来がいる安楽の世界

『6』
→六道輪廻の話、苦しみと迷いの世界

※極楽浄土とは六道の天上界とは別物で、六道輪廻を離れている世界。
なので、一応全く違う世界みたい。

・こないだのトークイベントで梨さんが言ってた「”救い”としての死後の世界という概念を潰したかった」という言葉を適用させると……
素晴らしい世界であるはずの『極楽浄土』も、この怪談では我々が想像するものとは違うのではないかしら……?


✳サブタイトルの”謎の数字”

・いつも梨さんの記事は、サブタイトルのところも何か隠されてることが多いのですが。
今回は謎の数字の羅列。

私は、最初全く気付けなかったんですが、これタイトルの『Araneid』の文字を並べ替えると、別の単語が出てくる仕組みだったんですね〜
アナグラムってやつです。

・公開当初はサブタイトルの数字は
【1263745】だったはず。並べ替えると、『ariadne(アリアドネ)』となりました。

蜘蛛のことを指す『Araneid』が別の単語になるなんてスゲー!と思って興奮しましたが……梨さんはもう1段階用意していたようです。

・現在のサブタイトルには【1246735】に変更されており、並べ替えると『arnidae』となる。
こんな単語無いのでハテナ?となるんですが……

この単語をちょっと目の焦点ずらして眺めると『rn=m』に見えてきませんか……?
そして『ae=æ』だとすると発音記号で『ア』と読めそう。

たぶん『arnidae=アミダ』となるんですね……

文章の形態が『あみだくじ』みたいなので、その繋がりというのがひとつ。

そしてもうひとつは『阿弥陀如来』のことを指してそうなんですよね〜

文字とはいえ”蜘蛛が阿弥陀に変化”してるわけで。
つまり、この怪談世界では『阿弥陀如来』は『蜘蛛』に近しいナニか……ってことなのかな……という嫌な連想😨


✳阿弥陀籤の由来について

・『あみだくじ』といえば”平行線の間に横線を入れた、はしご状のもの”をイメージしますよね?

でも調べてみたら、『あみだくじ』が作られた当初は”放射状に引かれた線”で行われていたといいます。

この放射状の形が『阿弥陀様の後光』の形にそっくりだから『あみだくじ』と名付けられた。

  (左)初期の『あみだくじ』 
(右)阿弥陀様の後光の図

・そのうち、”放射状の線だけ”の形に、横線を入れるアレンジをしたんでしょうが……
これが【蜘蛛の巣】を想起させるんよね……

 (左)横線も入った放射状あみだくじ
(右)蜘蛛の巣

怪談の舞台となった日本家屋も【蜘蛛の巣】であり【阿弥陀籤】でしたね。

✳怪異の正体

・「天井から顔を出した老人」は「天上から顔を出した阿弥陀様」なのかな〜、と思ってる。
「天井」と「天上」掛けてるよね?

やっぱり私達のイメージしてる存在とは違うものなんだろうなぁ……

・あと調べてる中で『還相回向(げんそうえこう)』って言葉を見つけたんだけど。

『還相回向(げんそうえこう)』

念仏して極楽に往生した者が,再びこの世にかえってきて衆生を教え導いて,ともに仏道を実践すること。
また極楽からこの世にかえって衆生を導く能力を,阿弥陀仏が往生者に与えることをいう。

今作は、もしかしてこれの話なのかな〜、って思った。

阿弥陀様の来迎図の屏風を飾るくらいの信心深さを考えると。
往生したこの家の主が現世にかえってきて(蜘蛛の異形として)、他の迷える人々を極楽に導こうとしてるのかもしれない。善意で。嫌だな。

✳アリアドネの糸

・タイトル『Araneid』のアナグラムである『アリアドネ』も、梨さんのことだから意味があるとして考えてみると……

よく耳にする「アリアドネの糸」とは、ギリシャ神話においてアリアドネという女性が恋人に渡した”迷宮から脱出するための導きの糸”のこと。

たぶんこれ、六道輪廻の"迷いの世界"からの脱出と掛けていると思われる。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』では”地獄から極楽へ脱出するための糸”が垂らされていましたよね。

・私達からすると『蜘蛛の怪異に襲われた怖い話』だけど、怪異側からしたら『六道輪廻に囚われている人たちを"苦しみと迷いの世界"から脱出させてあげた話』なのでは?

ざっくり調べた感じだと、阿弥陀様は”すべての命に平等で、救おうとしてくださるお方”らしいので……肝試しのメンバーも全員、平等に”救われた”んだろうなぁ、って思ってる😇

✳思いついたことポツポツ

・何でこのお話の登場人物は4人なのかな〜って思ってたんだけど、 

「4人×両脚2本=8本の脚」
=蜘蛛みたいな異形と同じ脚の本数

ってことで、彼らはあのあと一体化されて、玄関にいた沢山の脚の仲間入りを果たすんじゃないかと踏んでいる。
🦵🦵🦵🦵🦵🦵🦵🦵=🕷️

・この作品、縦線の『あみだくじ』のようにどんどん下に読み進めていって、最後に無数の蜘蛛に集られるのが、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の最後のシーンを彷彿とさせていて、ここも面白いよね。
「一番下=地獄」という無意識下のイメージがある。

あの悍ましさを考えると、肝試しメンバーはわざわざ地獄まで降りて行ってしまった感がある。

・「必ず1名は恐ろしい目に遭ってしまう」という噂話も意地悪でニヤリとしてしまった。
「1名しか」恐ろしい目に遭わないとは言ってないんだよね……
誰か1人が犠牲になれば残りは助かると思ってたんだろうけど。

・あと今作の媒体として紙ではなくインターネットが選ばれたこと。
文章が縦長すぎだから紙はまず不可能だとわかるんですけど。

・インターネット……net=
・ウェブ……WebはWorld Wide Web(ワールドワイドウェブ)の略称で、直訳すると「世界規模の蜘蛛の巣

とか考えちゃうと、梨さん上手いな〜!って。
この作品にピッタリすぎる媒体なんだよね〜🕷️🕸️

・芥川龍之介の『蜘蛛の糸』では一本の糸を巡って醜い争いの末、みんな糸から離れ、地獄へ落ちる結末。

一方『Araneid』では一本の糸から逃げ惑い、最終的に全員残らず絡め取られ、極楽へ釣り上げられる結末。

逆さ屏風のように、ちゃんと反転してるねぇ。



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