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梨さんの『瘤告』について考えたこと

梨さんが2021年3月11日から19日まで期間限定でネップリで頒布していた作品。
『瘤シリーズ』の2作目に当たるのかな?

現在はBOOTHにて配布中の『瘤話』(瘤談、瘤告、瘤報の3作品をまとめたもの)をダウンロードすれば読めます。
良質なホラーが無料で楽しめる……ありがたや🙌

もうね、公開当初のリアルタイムで追ってた人たちの考察がすごいんですよね!
過去のツイートを漁りまくりました。

ここでは、情報を整理しながら、個人的に疑問に思ったことや、感じたことを書き連ねていこうと思ってます。
ネタバレしてますので、読後推奨です。

また、一個人の見解に過ぎませんので、その点はご承知おきください。


◆情報の整理

◈『報告』

・2014年1月3日に記載された報告書。
→カウンセラーが書いたものか?

〈だいたいの内容〉

・クライエントの名前は「叶 結依」。
・2013年5月にODして昏睡状態になり救急搬送。→自殺目的か?
・アームカット、過食嘔吐、慢性的なアカシジアなどが見受けられたため、診察とカウンセリングを受けることになる。
・短期入院で投薬治療をするものの、9月に症状悪化(幻聴、睡眠障害)。

〈叶結依の症状〉
・境界性パーソナリティ障害
・解離性同一性障害
・解離性健忘
・摂食障害
・睡眠障害
・幻聴
・持続性身体表現性疼痛障害

・5歳から6歳(幼稚園から小学校)の時期に選択性緘黙の症状があったらしいが、7歳になると急に回復をみせる。

→生まれてから4歳までの発語について言及がないのが気になる。
症状回復は、小学校入学が切欠ではなさそう。他に何かがあった?

・6月のカウンセリングで、強い解離の症状が見られた。
→”別紙参照”との書類は次ページの『解離性体験尺度』の検査のことか?

《2013年10月20日 解離性体験尺度の検査》
質問された内容について、自分がどの程度当てはまるか答える検査。
叶氏が80〜100%当てはまると答えたものを抜粋してある。

→自分の記憶にない行動をしていたりと、いわゆる二重人格の症状があるように感じ取れた。
頭の中での声、幻聴もある様子。

◈『誣告』

言葉の意味としては「わざと事実を偽って告げること」。
つまり、この文章のどこかは嘘が語られているということ……?

〈だいたいの内容〉
・「今から約8年前にODで救急搬送」と2013年5月のODが同一と見られるのでつまり、これを書いたのは2021年前後か。

・また、「酒を買えない年齢」と言及されているので、2013年5月時点の叶氏はまだ未成年(19歳?)。

〈叶結依の症状〉
✢解離性健忘→幼児期の記憶がない(7歳以前の記憶のことか?)
✢持続性身体表現性疼痛障害→慢性的な痛みを訴える。(ストレス由来?)
✢摂食障害→過食嘔吐
✢アカシジア→じっと座っておくことが出来ない。(ODの副作用?)


叶氏は、これらの症状を霊的なものとして解釈することで、心の安寧を保とうとしていた。

・じんじんと続く原因不明の痛み
→何かが自分を罰しようとしているから。
・すっぽりと抜けた幼児期の記憶
→自分がゆうれいと話す能力と引き換えに失ったもの。
・過食嘔吐
→自らが予期しない心霊体験をすると身体の中に悪いものが取り込まれてしまうから食べ物と一緒に吐き出す行為。

・7歳になり活発になった彼女は、「霊感少女」として児童の人気者になった。

とりわけ「こっくりさん」に傾倒していたという。
コミュニティで飽きられないように、彼女は次々と趣向を変えて「不思議なこと」を紹介し続けていた。

→そうしないと飽きられてしまうからと、エスカレートしていった?

・「さそひのよわ」の儀式は、彼女の中では 「願いをきいてもらえる」儀式。
コレをしてから、他のおまじないをすると「もうぜんぶうまくいく」らしい。

→”何が” 来てくれたのか言及してないのが気になりますね……
霊魂なのか、神様なのか……

・「彼女はこの錯覚によっていわゆる自己催眠の状態を作り出し「おまじない」の効果を高めていたのでしょう。」という記述。

→”自己催眠で効果が高まるおまじない”って、こっくりさんのこと?

・ブログアーカイブから引っ張ってきたのは、冒頭の「さそひのよわ」の紙と2014年7月時点のブログ。

・調べてみたら、スマホが日本で一般的に使われ始めたのは2008年以降らしいので、彼女が使い始めたのがその頃とすれば14歳くらいから?
→スマホを買い与えてもらえる家庭環境なの……?

《2013年10月24日 言語連想検査》
・刺激語に対しての連想語と連想にかかる時間を調査する。

・遅延反応(10秒以上の長考)、反応不能はコンプレックスやトラウマからくる「自我防衛」の兆候と捉える。

反応不能の単語
→「がっこう」「ちちおや」「ふうせん」「はり」「しろい(白い)」「した」「ないふ」

遅延反応、反応不能の両方該当の単語
→「がっこう」「ちちおや」

〈特異なイメージ想起〉
刺激語「ひも」→連想語「ねがう」
刺激語「じゅう」→連想語「りぼん」「むすぶ」

→刺激語「じゅう」に対する、連想語「りぼん」「むすぶ」とは”十円玉の模様”だと思われる。

・彼女は、糸や紐で結ぶ行為に「願いを叶える」という意味を付与していた様子。
→十円玉の模様が「りぼん」や「結ぶ」というイメージなので、十円玉を使う「こっくりさん」は彼女にとって「願いを叶える儀式」になった?

・「霊感少女として人気者」だったはずなのに「陰で笑われていた」という矛盾する記述。
→最初は良かったが、だんだん周りから浮いてきたのか?
「がっこう」がトラウマになっている?

・「これ誰が書いたの?」という一文で締めくくられる。
→本当、誰が書いたんだろう……?
一気にこの文章の信憑性が低くなったし、薄ら寒さを感じる。

◈叶結依は二〇二一年一月十七日に首を括って死んだ。


◆考察

◉『誣告』は誰が書いたのか?

・なんとなくですけど、「これ誰が書いたの?」の人、無意識で『誣告』の文章を書いていた風だよね……

結依の幼少期から現在までの状況を詳しく描写できる人物……🤔
何故か結依に対して良い感情を持ってないみたいなのが気になる。

私は「結依の別人格」か「儀式経由で降りてきた何者か」が結依か梨氏に書かせたのかな〜、って思ってる。

・あと気になるのは『誣告』で、結依の解離の症状は「多重人格のようなかたちで顕れるのではなく、精神病様症状としての幻聴、つまり別人格の声が彼女の脳内に語りかけるというようなかたちで顕れました」という部分。

『報告』の2013年10月20日 解離性体験尺度の検査では、多重人格のような症状が書いてあるように見えるのだけれど……?
「したという記憶はないのに何かをしていた」とか「自分が書いたと思われる文章を、自分で書いたということが思い出せない」とか、まさに「これ、誰が書いたの?」って状況じゃない?

あっ、でも結依は2021年1月17日に死亡してるので、それまでに『誣告』を書いてないと成り立たないね。

◉『誣告』の「偽り」とはどの部分?

・読者は『誣告』という単語の意味から、この文章のどこかが「偽り」だと察する
だが、どの部分がそうなのかは推測するしかない。

・『誣告』において、一番伝えたいことはおそらく最後。

「様々な儀式も、心霊体験も、全てでっちあげの虚構」という部分。

すると、ここが「偽り」の文章?と読者は疑うことになる。

・私はリアルタイムで追えなかったので、残されたツイートを辿るしか当時を知る術はないんですが。

ネップリで印刷した、新しいこっくりさんの用紙。
「この印刷した紙の処分方法は?」
って思った人は沢山いたようですよね。

『瘤告』を印刷した人たちは「人為的に作られている虚構の儀式です」って赤字で注意書きがなされてて、逆に不安になったのでは?

・この印刷した紙をどうしようか迷った時点で、その人は「”この儀式は本物だ”という自己催眠」にかかっちゃってるのではないか

疑心暗鬼になってる時点で、手の平で転がされてるんですよ。

「虚構」を「本物」かもしれないと思ってしまえば、その人にとって儀式は「本物」になってしまう。
儀式は力を持ってしまう。

……という呪いなのでは?

・あと、『誣』という字の見た目が「巫が言う」で……
こっくりさんで何かを降ろして、お告げを言うイメージがわいてきた。
そんで、漢字の意味を考えると、そのお告げは「偽り」なんでしょ。
『誣告』を書いた人が伝えたかったこと、まんまだな〜って思った。

◉『叶 結依』という名前の意味

・名前の漢字の意味をざっくり調べたものです。↓

叶……かなう。思い通りに行く。
結……むすぶ。つなぐ。契る。
依……よる。頼る。よりどころとする。

・結依が「糸や紐で何かを結ぶ、括りつけるという行為に対して『願いを叶える』といった意味を付与していた」のは、自分の名前から来てそうだなぁ、と。

【結ぶ】ことに【依って】
願いが【叶う】

・あと、「こっくりさん」は「リボン結び」が描かれている10円玉硬貨を使う。
だから、自分の名前の「結」と近しいものを感じ取って気に入ってたのかも……


◉「さそひのよわ」について

・「さそひのよわ」の「よわ」の漢字。
いくつか候補はあるけど、私はこれを推します。

「嬬」
→「嬬」は、心身を清めて神に仕える女性(女巫=じょふ)の意で、万葉集の時代には「妻」の意で用いられたという。

遊女が一途に「あなたの妻になります」と誓ってるイメージ。

そして「女巫」という意味をとると、「さそひのよわ」はまさに”何か”を身に降ろすのにぴったりの儀式じゃない?

◉「じゅう=むすぶ」の汎用性

・結依の「じゅう=むすぶ」方程式が凶悪ですね……汎用性高い。

(「じゅう」……10円玉
   「むすぶ」……10円玉の柄のリボン)

・まずは、ネップリ印刷で「必ず10円玉」に触るよう仕向けて(印刷代が20円なので、50円玉や100円玉を入れても、お釣りで10円玉を触ってしまう)、『瘤告』との縁を「むすぶ」。

・そして10円玉を使って、紙でフリック入力を擬似的に行うことで、スマホでのフリック入力の動きと儀式を”結んで”る?

ホラーオタク、絶対に「さそひのよわ」って検索しちゃうじゃん……
本来の儀式では5回唱えるから、合計5回入力したらマズいのかしらね。

・しかもこれ、相手との指を”結ぶ”手段である「麻紐」が「10円玉」で代用できるってことだよね?

麻紐で結ぶか、10円玉で結ぶか、って話でしょ?

◉他のゾワッとポイント

・「さそひのよわ」の説明文で「人差し指を伸ばし」ってとこ、「スマホを操作する指」と重ねてるのかな……👆

スマホの鏡面で反射した指がちょうど合わせた指に見えますね……ヤダ……

・結依の死因は「首を括った」ことですが、これも彼女の理論でいけば「願いを叶える」儀式だったのかな〜

リアルタイム時は、QRコードで飛んだ先に、noteの『瘤告』の本文があったんですよね?
今は「公開前記事の共有画面」に「みんな死にます。」って呪詛みたいな言葉しか載ってないけど……

つまり、最後の方は”愚痴や罵詈雑言ばかりをSNSに書いて”荒れまくりな結依が「首を括って」叶えようとした願い事がコレってこと……?😵

・そういえば『瘤告』に「”新しい”こっくりさん」のことを「自分流の開運術として理屈をつけようとしてました」とあるが……

あの動き方の指示は、明らかに「さそひのよわ」とフリック入力させる動き。

「さそひのよわ」と「こっくりさん」を自己流にミックスしたってことか?

それとも「こっくりさん」のフリをした「さそひのよわ」だったのか……

もし後者だった場合、悪意あるよね……
何か良からぬモノと契りを結ばせようとしたとか?

・「”新しい”こっくりさん」だと思っていたものが、スマホのフリック入力のそれで、しかも『瘤告』内で結依がやっていた「さそひのよわ」を知らぬうちに実行させられていた。

……という一連の流れは、鮮やかすぎて称賛したくなったね!呪われてるけど!


⛩️⛩️⛩️

他の『瘤シリーズ』との関連はまだ良くわからない…… 
けど、単体での完成度の高さよ……!✨
良質なホラーでした☺️

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