純粋な愛の怪物に成り果てた少女【映画『レディ・マクベス 17歳の欲望』の感想を書き綴る】
2016年の作品。
R15+のドロドロしたロマンス映画です。
ロシア作家の『ムツェンスク郡のマクベス夫人 』という小説が原作。
『ミッド・サマー』のフローレンス・ピューが主演で見応えあります。
ネタバレしつつ、諸々感想を書いていきます。
◎あらすじ
◎感想
・静かな画面で淡々と進んでゆく物語。
どこかで『まるで絵画のようだ』という感想を聞いたのですが、まさにその通りだと思いました。
定点カメラから視点が動かずに話が進んでいくので、室内装飾や小物を観察できて興味深かった。
昔の西洋の暮らしに、じっくりと思いを馳せることができました。
物事の描写も、間接的なものが多くて、役者さんの表情だとか、前後の会話から読み取る必要があるのも雰囲気あって良い。
舅の毒殺のシーンなんかは、扉の向こうの声とか物音から、事切れたことが察せられましたね。
・主人公であるキャサリンは、新しい家族から愛されず、子を産む義務すら果たせず、不遇な花嫁でしたね。
体裁のためにお金で買われた、お飾りの妻だったようです。
夫は外で子供こさえてたしね。
・しかし、不倫をしてから彼女は変わった。
なんか、堂々とふてぶてしくなりましたよね(笑)
夫と舅が留守の間に、寝室にセバスチャンを連れ込んで愛慾の毎日。
若さゆえの過ちというか、タガが外れるって、こういうことなんだな……と考えさせられました。
・真っ昼間から情事に耽って、使用人にバレるんじゃ……!?とヒヤヒヤしてたら、使用人どころか街を経由して、遠くの地の夫にまで届いていたというのは笑うしかない。
人の口に戸は立てられぬ。
・キャサリンは『愛のために』合計3人の人間を殺しましたが、そのどれもが必要に迫られてすぐ、躊躇いもなく実行に移されていたのが恐ろしいと感じました。
・あと、夫を殺したあたりから、セバスチャンに敬遠されるようになっていましたが、あのときのキャサリン本当にウザい女でしたね😓
人殺しの余韻が消えず気もそぞろだってのに、イチャイチャを強要されても、そんな気分にならないだろ……
これ『セバスチャンを愛してる』んじゃなくて『セバスチャンを愛してる自分が好き』なだけでは?
・原作では映画版と最後の展開が違うらしいですね。
『愛のために』投獄されても間男に着いていき、最後には裏切られ身投げする原作。
殺人の罪を間男とメイドに擦り付けて屋敷に留まり続ける映画版。
これ、セバスチャンがキャサリンの『愛を捨て』て、警察に告発したから切り捨てた、というのもあると思うんですけど。
もうひとつは『お腹に子供が出来たから』投獄されるわけにはいかなくなったのかな〜、と思いました。
終盤らへん、キャサリンやたらとお腹抑えてましたよね。
あと、殺してしまった夫も「太った」とか「体が一回り大きくなった」とか言ってましたし、キャサリン自身も姿見を見て険しい顔してるシーンがありました。
あれ、お腹が大きくなってきてた描写なのでは?
『母は強し』とはよく言いますけど、原作のように『男に依存するだけの愛』を求めるのではなく、映画版のキャサリンは『子供との新しい愛』を築こうとしてるんじゃないかと。
夫の婚外子と野原でのんびり会話してたキャサリンは、あのとき『親子っていいな』と思ったんじゃないかなぁ。
男がいなくても生きていく強かさは、現代の女性像を反映してる気がしますね。
・家を切り盛りする夫も舅も居なくなって、キャサリンは今後どうやって暮らしていくつもりなのかなぁ。
慎ましく暮らせば一生過ごせるくらいの遺産でもあるんだろうか……?
あ、でも子供が産まれれば『夫との子供』と言い張って、養育できる……?
若くて人生経験が浅いゆえの無鉄砲さはあったものの、悪知恵は働きそうなので、どうにかうまく生きていきそうな気がしますね!
◎総括
キャサリン役のフローレンス・ピューの貫禄ある演技に惚れ惚れしました!
自分の愛のためなら、平気で人を陥れる悪い女なのに、どこか応援したくなる不思議。
キャサリンのみならず、この世に生きるすべての女性が抱えてる『男社会に対する鬱屈』を晴らしてくれるカタルシスを感じるのかもしれないですね。
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