映画『放送禁止 劇場版 洗脳〜邪悪なる鉄のイメージ〜』の感想・考察を書き綴る
劇場版『放送禁止』の3作目となる今作。2014年の作品です。
今回のテーマはタイトルにもあるように『洗脳』。
一度観終わったときは「え……いい話じゃん……😭」という感じで感動的ドラマだと思ってたんですけど。
でもこれ『放送禁止』ですよね?
表向きの感動的ドラマの裏に、えげつないこと隠されてるのが定石ですよね?
ということで考察サイトを漁ってきました。
一応、検索して上位に出るサイトはザッと見てきましたが、まあ不穏な考察が出るわ出るわ……😅
頭の中の整理も兼ねて、感想・考察を書いていきたいと思います。
今作、特に疑問とか、怪しい点とか膨大なので、とっ散らかった文章になるのはご容赦ください。
もちろんネタバレしてるので未視聴の方は気をつけてください。
初見でしか騙されないような仕掛けもあるので、本作をしっかり楽しみたい方は、先に視聴してくるのがオススメです!
◎あらすじ
◎ざっくり本編
◇登場人物
・江上志麻子(えがみしまこ)
→強い洗脳状態にあり、脱洗脳の治療を受けている元・主婦。
・小田島霧花(おだじまきりか)
→”脱洗脳”のスペシャリストである心理セラピスト。
・鷲巣みなみ(わしずみなみ)
→志麻子の親友のビデオジャーナリスト。小田島に志麻子の治療を依頼した。
・久慈マリア(くじまりあ)
→色んな女性の悩み相談に答えるカリスマ主婦。
……というのは表の顔で、裏では弱みにつけこみ洗脳を施し、財産を搾取したり、家庭崩壊させたりしている。
・五十嵐猛(いがらしたけし)
→志麻子の元夫。
以前は証券会社に勤めるエリートだったが、不倫騒動のあとに退職。
今はトラック会社に勤める。
離婚して家を出る。
・江上乃理(えがみのり)
→志麻子と猛の一人息子。
◆時系列
【〜2011 年8月】
・志麻子はエリート会社員とのセレブ婚を果たし、息子も設けて幸せな主婦生活を送る。
・しかし、忙しさから家庭を顧みなくなった夫の態度に、寂しさを覚えていたときに、マリアと出会う。
目をつけられ洗脳を施される。
・夫の不倫が発覚し、マリアの言うままに離婚。
そして洗脳をより深くするために、マリアは志麻子の家に移り住む。
・志麻子からお金や家の権利を搾取し、風俗で働かせるまでしたマリアは、最後に一番大事な息子まで奪い取ろうとした。
さすがに一人息子を手放すことを拒否した志麻子に、マリアは激昂し「天罰が下る!」と言い放つ。
【2011年9月30日】
マリアは志麻子宅から出て、この日から行方知れずとなる。
【2011年10月】
鷲巣が小田島に依頼して、志麻子の脱洗脳の治療が始まる。
【2012年3月23日】
志麻子と乃理が暮らす自宅が火災で全焼。(→ここから小田島宅に移り住み治療続行か?)
【2012年4月24日】
志麻子に人格転移による『小田島霧花』の人格が現れる。
❁❁❁❁❁
⇧ここまでが回想シーンや会話から読み取れた過去の部分
❁❁❁❁❁
⇩ここからが劇中の時間軸
【2012年9月13日】
志麻子は『小田島霧花』役を演じ、霧花は『江上志麻子』役を演じて治療を続けている。
もう少しで、最初の治療から約1年経過しようとしている。
【2012年9月28日】
火災の原因は「鷲巣による放火だ」と志麻子が糾弾。
小田島が『小田島霧花』になりきっている志麻子に声をかけ催眠を解く。
すると、志麻子にアイデンティティの崩壊が起こり『小田島霧花』としての人格は消えた。
【2012年10月10日】
志麻子の人格が復元され、「火災の原因は自分だった」と告白。
江上志麻子の治療は終了する。
志麻子が「死んでしまった」と言っていた乃理は実は生きており、感動の再会を果たす。
◆とりあえずの”真相”
上の時系列にはあえて書きませんでしたけど、作中ところどころに元夫の『五十嵐猛』が見切れて出てきます。
この出てくるポイントと話の流れを総合すると……
離婚した後も別れた妻子のことを気にかけ、見守っていた五十嵐が『マリアを殺した』という事実が浮かび上がってきます。
最後に映る【この映像は取材者である鷲巣みなみさんの希望により放送禁止となった】というテロップ
→この理由も、鷲巣が五十嵐の『妻子を想う気持ち』を汲み取って、殺人を隠蔽しようとした……風に見えますよね。
一見すると、家族愛のイイ話でじんわりする終わり方なんですよ。(まあ、元夫が殺人犯してますけど!)
でもこれは『放送禁止』!
穿った見方をすると、地獄みたいなストーリーが見えてきます。
◎裏の”真相”を考察
◆私が見た『真実』
先に結論を書きましょう。
これは『脱洗脳を経て息子を取り戻す感動ドキュメンタリー』の皮を被った『鷲巣と小田島による、志麻子の再洗脳』のお話だと私は思います。
だいたいのあらましとしては
・志麻子にコンプレックスを持つ鷲巣と、金が欲しい小田島の利害が一致。
・小田島の支配下にあったマリアを利用し、志麻子を洗脳。
財産の搾取、一家離散、風俗落ちを目論む。
・不幸のどん底にいる志麻子から息子を奪えば、もうほとんど目的達成……というところで駒であるマリアが消える。
・財産は全て搾り取ったし、マリアが消えたから、これ以上は何も出来なそう。そろそろ潮時……ということで家に火を点け焼き殺そうと画策。
タバコの不始末に見せかけるため、鷲巣がタバコの火を投げ入れる。
・しかし、志麻子と乃理は五十嵐により助け出された。
五十嵐が接近禁止命令により、すぐ立ち去ったのをいいことに、鷲巣と小田島が志麻子たちを回収。
タバコを吸わない志麻子の家がタバコの不始末で火災になるのはおかしいと、本人に証言されるとまずいからだ。
(事件性アリとなって警察に、洗脳や財産搾取のほうまで調べられるのを嫌がったのか?)
・志麻子と乃理を小田島のマンションに住まわせ、脱洗脳と言って自分たちの都合のいいように『再洗脳』する。
志麻子が正気に戻ったときに、自宅火災について、鷲巣と小田島の不利にならないような証言をさせるのが目的。
・放送禁止になったのは、『小田島霧花』として自分を客観視した志麻子によって真実に近いことが語られたから。
(鷲巣が志麻子に嫉妬して放火した〜ってくだりですね)
あとは五十嵐が志麻子をストーキングして睨みを効かせてたからじゃないかなぁ。
「これ以上やったら、マリアの二の舞いだぞ」と考えて、志麻子と乃理をハッピーエンド風に仕立てて解放したのかな、と。
◆根拠となったことがら
まずは『洗脳に詳しくない人が視聴しても、謎解きができるように作られてるんじゃないか』と思って、劇中で出てきた専門家のセリフをよく考えてみたんです。
✤人格転移は意図的では?
「催眠はかけた人が解く。かけた人以外は解きにくい」
(脳科学者の苫米地英人氏の話より)
→志麻子がアイデンティティの崩壊を起こしたとき、小田島が呪文みたいの唱えてましたよね?
あれであっさり『江上志麻子』に戻ったのは何か不自然さを感じたんですよ。
だって、あの成り代わり状態って『脳が混乱して小田島霧花の人格が勝手に生まれた』んでしょ?
呪文でどうこうできるなら、これは意図的に『小田島霧花の人格を植え付けられていた』のではないかと思ったんです。
理由としては『小田島視点で、志麻子の状態を客観視して、マリアからの洗脳を解きやすくする』というのもありますが……
逆に『志麻子の口からあることを言わせる』ためにこの状況を作り出したのではないかと考えました。
先の例では小田島に成り切ってるときに『志麻子の口からマリアが死んだと言った』ことで、志麻子の人格に戻ったあと、マリアの死を受け入れることができました。
✤志麻子の口から何を言わせたかったのか?
素人考えですが、志麻子の口から言わせることで深層意識に働きかけをしてるんじゃないかな〜と考えました。
そもそも、小田島に成り切ってる志麻子に鷲巣が意見を求めてる時点で、何かしら意図はあるはずなんですよ。
セラピストっぽく振る舞ってるけど志麻子はただの主婦なので。
ここで、鷲巣と小田島が『小田島霧花』役の志麻子に、何をしたのか挙げていきたいと思います。
《鷲巣のアプローチ》
・放火の可能性を言い出す
→放火だと思わせたい?
→志麻子は「私も、なんかこの火災は、普通の火災でない気がしていました」と言う。
・黒い噂のあるマリアが放火したのではないかと言う
→マリアが放火したと言わせたい?
→でも志麻子は「マリアだとは考えにくい」と言う。
・志麻子の部屋の鏡に乃理のような人影が見えると言い出す。
→幽霊を信じ込ませたい?
→しかし志麻子は、そう見えるだけだと否定。
・五十嵐の吸ってるタバコが火災現場の火元と同じ種類だと言う。
また当日のアリバイもないと伝える。
→志麻子がマリアの犯行だと言わなそうなので、矛先を変えて五十嵐の犯行だと言わせたい?
→志麻子は「確たる証拠」がないと肯定できない様子
・テープに撮れた足音、笑い声を見せ「死んだ乃理くんがお母さんに会いに来た」とオカルト発言
→志麻子に幽霊を信じ込ませたい?
→でも志麻子には一笑に付される。
・五十嵐は火災当日のアリバイがあった。「久慈マリアが犯人でしょうか?」
→マリアが犯人だと言わせたい?
→でも志麻子は「その可能性は高まった」とだけ。
《小田島のアプローチ》
・乃理の足音、笑い声が聞こえたと騒ぐ→志麻子に「乃理くんはいません!」「乃理くんは死んだの!」と言わせる。
→乃理の死を強く印象づけるため?
・アルファベットの玩具でメッセージ
→(視聴者に向けてのヒントもあるだろうが)深層意識に『乃理は生きてる』と思わせる。
✝✝✝✝✝
ここで、死後1年経つマリアの遺体が発見されたとニュースになる。
→火災時にマリアはすでに死亡していたので、マリアの犯行だと言わせることができなくなった!
ここから方針を変更せざるを得なくなったのではないかと思う。
『誰かの放火』路線ではなく『志麻子のタバコの不始末』路線にかじをきった。
✝✝✝✝✝
《鷲巣のアプローチ》
・「あの火災は放火ではなかったってことなんでしょうか?」
→放火ではなく火の不始末としたい?
・「やっぱり天罰なんでしょうか?」
あとマリアの怨念が云々言う。
→ワンチャン、マリアの幽霊のせいにできるか賭けた?
でも志麻子にはまた失笑される。
✤もうひとつの意図
放火をマリアにも五十嵐にも擦り付けることに失敗し、残る方法は『志麻子に自分のせいで火事になったと言わせること』。
ここでもうひとつ専門家の言葉。
「洗脳者は、人間の意識の闇の部分に埋め込まれた心的外傷、つまりトラウマを巧妙に操作して、洗脳者が支配者であるという新しい現実を作り上げる」
(小田島霧花のセリフより)
志麻子の最大のトラウマは『乃理が死んだこと』でしょう。
ここを強調され、トラウマを操作されたのでは?
そもそも、これをトラウマとして利用するために、乃理は死んだことにされ、同じ建物に住んでるにも関わらず、1年も母親に会わせてもらえなかったのではないか?
最初の案では『乃理が死んだ』トラウマを使って再洗脳し、放火をマリアのせいにしようとしていたんじゃないかな。
でもマリアには不可能だったし、マリアの霊も信じないからオカルト路線もムリ。
なので、他の理由をでっち上げることになった。
急に小田島が「乃理の霊が取り憑いている」とか言い出したのは『乃理の死』の補強かと思われる。
「火事のことを思い出さないと、愛してる乃理がずっと苦しむ」と言われて、今までの鷲巣とのやり取りで得た情報から脳内で構築した整合性のあるストーリーを志麻子が語ったのだろうと思ってます。
火事のことを「覚えてない!」と絶叫してたのは本当のことだったのでは……😅
やってもないことを無理やり自白させられてるようなもんかしらねぇ。
◎他に色々
・『放送禁止』の名前ネタはガチでネタバレに食い込んでくるので『鷲巣=プロメテウスの鷲』と
『washizu minami➔wash is minami(洗脳はミナミ)』説は有力だと思うな〜
・小田島が、マンションに住まわせてまで付きっきりで治療をしていたのは志麻子から搾り取った金があるからできることなのかな〜、とか邪推。
だって志麻子に成り代わってたときなんか他の仕事請け負えないよね。
無収入になっちゃうじゃん。
メリットがないと、さすがにやらないと思いますわ。
・マリアは志麻子をもっと深く洗脳するために、一緒に住むようになった。
では、志麻子が小田島のマンションに移り住んでるのも、そういうことですよね?
・マリアの悪い噂が流れてるという割に、余罪というか他の被害者の話は出てこないんだな〜
もともと志麻子だけがターゲットだったのか?
・離婚前、五十嵐の帰りが遅くなってたのは『(自称)不倫相手の顧客』が無理言って仕事増やしてたのかな〜、とか思ったり。
不倫騒動はマリアが関与してそうですよね。
志麻子を孤立させ、さらにマリアが信頼を得るための自作自演的な。
・火災の火元のタバコの銘柄まで分かるものなの?
・全焼したのに防犯カメラの映像残ってたの?
・志麻子が『小田島霧花』に成り切ってたときにプロメテウスの話し始めるけど、どこで仕入れたウンチクなんだろね〜
もしかして、鉄の指輪嵌めてたマリアから過去に聞いたんですかね……😇
・乃理くん、2年前の家族ビデオの時点で6歳表記だったから、これ小田島のマンションいる間は小学生よね。
でも絶対、学校通えてないよね……?
ヤバいな……
そして、母親が「乃理!何で死んじゃったの」って悲痛に叫んでても部屋を一歩も出てこなかったし、騒ぎもしなかったのは洗脳されて出てこないようにされてたんですかね……
・最後、志麻子が包丁で手首を切ろうとするシーン。
なかなか切れなかったのは、深層意識に『乃理が生きてる』と刻まれてたからだったら面白いですね。
死んだら本当に会えなくなると脳は判断したのかも。
・感動の再開シーンで乃理が急に部屋から出てきたのは何かセリフにトリガーでもあったのかな〜
小田島がやたらと「乃理くんのことを愛してましたか」って確認してたあたり、怪しいよね……
う〜ん、わからん!
◎総括
途中まで志麻子と小田島が役割入れ替わってたのは、全然気づかなかった!
急に喋り方変わってギョッとしました(笑)
女優さんの演技も真に迫ってて凄かった!
セラピーの対話を使って、これまでの経緯を説明していく手法は上手いな〜、と感心しました。
自分の『洗脳』についての知識が、フワフワしたものしかなかったので、全容が掴みにくかったかな?
『洗脳』技術が悪用されないように具体的な方法は一般人にはボカされてるから尚更。
地獄みたいな考察しといてアレですけど、最後のアパートの窓際で家族3人がカメラフレーム内に収まるとこはジーンと来ます。
いつか、また家族として暮らせたらいいと願わずにいられません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?