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肌荒れが「アレルギー」や「アトピー」を引き起こすって本当?

アレルギー疾患やアトピー性皮膚炎の人の肌は、カサカサと乾燥していて荒れている印象がありますよね。アレルギー疾患があるから、アトピー性皮膚炎だから、肌が荒れている。そう思われがちですが、実際はその逆です。肌が荒れているからアレルギーが発症しやすかったり、アトピー性皮膚炎になりやすかったりするのです。

肌が荒れている人はアレルゲンを取り込みやすく、アレルギー反応を起こしやすくなります。専門用語ではこれを「経皮感作」といいます。今回は、「経皮感作」が起こる原因やその影響、予防と対策方法についてご紹介していきます。


「経皮感作」とは


バリア機能

「経皮」とは、“皮”膚を“経”て、つまり「皮膚から」という意味です。「感作」とは、食物やハウスダスト、花粉、ダニなどのアレルゲン(抗原)に対して免疫機能が働き、アレルギー反応を起こす体質になってしまうことです。つまり「経皮感作」とは、皮膚への接触が原因でアレルギー体質になってしまうことをいいます。

アレルギー疾患には、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)、薬剤・昆虫アレルギーなどさまざまな種類があり、症状・経過も人それぞれ。「経皮感作」を防ぐことで、これらのアレルギー疾患になることを防ぐことができます。

「経皮感作」が起こる原因

アレルゲンに触れたからといって、肌が健康な状態であったなら、すぐにアレルギー疾患を発症したりアトピー性皮膚炎になったりすることはありません。「経皮感作」を引き起こしやすいのは、乾燥や湿疹などがみられる、荒れた状態の肌です。それは言い換えると、「バリア機能」が低下した肌のこと。

健康な肌の表面には角質層がきちんと並び、そのすき間は細胞間脂質で満たされ、さらにその上を皮脂膜が覆っています。通常は、この天然の「バリア機能」が働くことによって、乾燥を防ぐとともに、アレルゲンなどの異物が肌に侵入しないようになっているのです。

でも「バリア機能」が低下した肌の場合、アレルギーの原因となるアレルゲンが表皮や真皮までするすると侵入して、「経皮感作」を引き起こしてしまいます。乾燥や湿疹、すり傷、掻き傷などで角質が破壊されると、アレルゲンが入り込む隙間がさらに広がり、症状は進行。それまでアレルギー反応を起こさなかった物質にも、反応するようになっていきます。

「経皮感作」がもたらす影響

「経皮感作」は、乳児湿疹や幼少時期の肌荒れとも大きく関係しています。乳幼児期に乳児湿疹やアトピー性皮膚炎などの肌荒れが改善されなかった場合、その後成長するにしたがって食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎……とさまざまなアレルギー疾患を引き起こす原因となってしまうことが分かってきました。これを「アレルギー・マーチ」と呼び、この概念に基づいて近年は早期診断、早期介入が進められています。

2014年には、「新生児のころからしっかり保湿をしていると、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下した」という研究データも出ています。生涯におけるアレルギー疾患対策として重要なのは、特に生後1〜2か月の乳児期での肌荒れをできるだけ防ぐこと。その後もその時々の症状だけで判断するのではなく、日頃からしっかりスキンケアを心がけて、余計なアレルギー疾患を予防していきたいところです。

「経皮感作」の具体例

「まさか、そんなことで?」と耳を疑うような具体例もあります。「経皮感作」の危険性は、どこに潜んでいるか分からないということを覚えておきましょう。

■赤やピンクのマカロンでアレルギー症状が……

他の色だと問題ないのに、赤やピンクのマカロンを食べたときだけアレルギー症状が出る人がいます。その原因はなんと、日頃のメイク。メイク用品にはコチニール色素という赤色の着色料が使われていることがあり、知らないうちに「経皮感作」を起こしてしまったのです。その結果、同じコチニール色素を使用している赤やピンクのマカロンを食べたときにのみ、アレルギーが発症したということです。

コチニール色素はカイガラムシのメスを乾燥させたものから抽出したもので、外国産の口紅などに使用されることがあります。また中華料理や中華菓子にも使われている可能性があるので、コチニールアレルギーの方は十分に注意してください。

■お寿司屋さんなのに、魚アレルギーに……

魚にアレルギーがあったらお寿司屋さんにはならないはずですが……いったいどういうことでしょうか。実はその方は、お寿司屋さんになってから毎日、鮮魚を長時間にわたって素手で扱うことで「経皮感作」を起こしたのです。魚をさわったり、食べたりした後に、腹痛や下痢などの消化器症状、蕁麻疹などの皮膚症状が出るようになってしまいました。

魚アレルギーは、症状がひどい場合は呼吸困難や血圧低下(アナフィラキシーショック)にも繋がるものです。今はアレルギー症状が出ていない方でも、日頃から鮮魚を扱う方は常にリスクがあると考えましょう。鮮魚にさわるときは手袋やマスクなどを着用して、予防することをおすすめします。

「経皮感作」の予防と対策

もし今すでに、湿疹やすり傷、掻き傷などがある場合は、まずは皮膚科で治療しましょう。そのような状態の肌は、スキンケアでは改善できません。スキンケアは、あくまでも予防です。きちんと治療した後は、毎日のスキンケアでしっかりと保湿をして「バリア機能」を整えることを意識してください。化粧水だけ……など一時的な保湿ではなく、正しい保湿方法を知り、「バリア機能」を高めるのによい成分を選ぶことが大切です。荒れやすい敏感肌の場合は、「合う」「合わない」をしっかり見極める必要があるので、必ずパッチテストをしてから使うようにしましょう。

本来なら、少なくとも朝と夜、全身を保湿してあげるのが理想です。ただそこまでは難しいということであれば、まずは顔と手からでもOK。衣類に覆われている他の部位に比べ、常に外部にさらしている顔と手は、「経皮感作」が最も起こりやすく、最もダメージを受けやすい部位だといえます。できることから、コツコツと。アレルギー疾患やアトピー性皮膚炎の原因となる「経皮感作」を防ぎましょう。

【記事監修】STスキンクリニック青山 院長 田澤 しおり


ハダマグ

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