小説

「ガリレオ・ガリレイ」あとがき

昨年2018年に『科学者の真実』というソロアルバムをクラウドファンディングによって制作しました。

・クラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/view/72015

科学者「ガリレオ・ガリレイ」を題材に彼の青年時代から晩年までを小説と音楽で表現したコンセプト・アルバムとして発表しました。

・CD『科学者の真実〜Galileo Galilei〜』
https://nanagenshop.thebase.in/items/13757326

ここでのクラウドファンディングによるリターンについてる小説を、いま英語版、中国語版として翻訳準備中でして、それ用に「あとがき」を加えることになりました。

その日本語小説はすでに発行されているので、このnoteで著者・葛城エース氏の「あとがき」を新たに公開する運びとなりました。

また後日、こちらのnoteにてアルバム『科学者の真実』付属の小説『掟と真実』著者・葛城エースを全文無料で公開する予定です。

この「あとがき」を読みながら改めてアルバムを聴いてもらえたら嬉しいです。

〜あとがき〜
この場をお借りしまして、この小説を書く事になった経緯を語らせていただきます。

ギター教育者として著名な小林信一氏より、同行させていただいた上海での音楽イベントの折、

「人生を掛けた壮大なテーマで、セカンドアルバムを完成させたいのですが、何か良い題材は無いですかね?」

との意見を求められたのがきっかけでした。

瞬時になぜか、ガリレオ・ガリレイが脳裏に浮かび、「ガリレオの小説を書きましょうか?」との運びとなり、この作品に着手しました。

なぜガリレオが頭に浮かんだのか?思い返してみると、それは、私の心のどこかに、人や人間界といった小さな世界ではなく、壮大な宇宙の真理と語り合ったガリレオの大きさが引っ掛かっていたのでしょう。

人生を掛けたテーマという小林氏の要求にガリレオを題材にするのであれば、適うのではないか?と思えたのです。

出来上がった作品を読み直してみますと、正直、文章に拙い部分も多くあるのですが、ガリレオについて断片的にしか知らない状態、つまり全くのゼロから資料を集め、ガリレオの言動や歴史、時代背景などを調べて、構想を練り、人物像を考察し…まあ、今となってはエース!良くやった!と自分で自分を褒めるしかありません(笑)

資料を調べていて改めて分かったのは、ガリレオという人物は非常に面白い男であるという点です。

一般的にガリレオという人物を伝記や物語で語る時「それでも地球は動いている」という有名な言葉と共に、信念を持ってはいましたが、権力者に自分の信念を捻じ伏せられたというニュアンスで扱われる内容が多いのではないかと思います。

しかし、調べるうちに、ガリレオは世の中に“真理(正しい理論)とは何か”を問う為に、わざと火の無い所に煙を立てて自分から問題を大きくしていったように私には思えました。

現存する体制に反するのを革命といいますが、まさに彼の行いたい内容とは“真理への革命”だったのでは?と。

それは、世の中への疑問や矛盾をぶちかます、現在でいうところの、ミュージシャンやロッカーと同じです。

もちろん、ただ世の中を掻き回すというのがガリレオの目的なのではなく、“信じる前によく検証しましょうよ!”と、それはガリレオ自身の信じる聖書にある使徒パウロの言葉、
「信仰とは望んでいる事柄に対する保証された期待であり、見えない実体に対する明確な論証です。」を彼なりに解釈し実行しただけだったのではないかと私には思えました。

さて、情報量が多い現代社会。大勢の人々が色々な意見をありとあらゆる方法で主張します。もちろん主張するのはよい事です。

ですが、真理や価値あるものとは、主張する人の“多さ”で決まる訳ではないという真実を、私も執筆しながらガリレオの人生から改めて考えさせられた一人です。
それよりも、気付いた情報、発見した情報をもう一度自分自身で検証し、結果という証拠を示す。

思い付きで好き勝手に意見をつぶやき、発信するのではなく、思ったまま社会に文句を、考えもせずに不平を述べるだけではなく、自分自身でなぜそうなったのか?なぜそうしたのか?どう改善できるのか?

そう、自分自身できちんと調べて、証拠に基づく代案を提出する…ガリレオが人生を掛けて提出したこの方法は、そのまま色々な世界で応用出来ます。

そうするなら、社会は理に適う提案を受け入れ、そして自分自身の心は、問題発生の原因を知り、その状況や背景を理解する事で“寛容さ”を取り戻すのかもしれません。

そして社会が少しだけ面白く見えてくる。闇の中の扉をガリレオが開け放ったように…

世の中を斜にしか見る事ができず力を持て余す少年期、尊敬する人物との交友から刺激を得て道が拓かれた青年期、自分を慕ってくれる弟子達と歩む壮年期、そして結果を未来に託した晩年…

拙い文章ではありますが、この作品を通して読者の皆様に、何か人生を輝かせるヒントとなるようなものがあれば幸いです。最後にガリレオの言葉をお伝えさせていただきます。

「人に何かを教える事は出来ない。出来るのは自分で発見するのを助ける事だ。」
さて、この小説ガリレオ・ガリレイ“掟と真実”は、小林信一氏のセカンドアルバム“科学者の真実”とリンクして執筆しています。

小説を読んでいただけるなら、小林信一氏が作曲した12曲の楽曲が物語と見事に調和している点に気付かれるでしょう。

ここでは、私、葛城エースが各曲にコメントを述べさせていただきます。

M01:透き通る闇 ~Darkness of Transparent~
透き通る闇…というガリレオの人生を象徴するようなオープニングテーマである。全く何も分からない闇の状態から、何かがその先があるような、その先に何か違う世界があるような…そんな思いを、見事に表現しながらのオープニングに相応しい期待を抱かせます。

M02:鈍色 ~Dark Gray~
”人生を色に例えると、ドブネズミのような色”だと全く希望も夢も持てなかった少年時代のガリレオの気持ちと焦りを見事に表現しています。ガリレオの少年時代は、調べると体力だけは持て余している、要はクソガキだったんですよね。彼は。

M03:黎明への扉 ~Dawn’s Door~
闇の中の扉を空けたら、新しい世界が開けた…出会いが人の扉を開けるのは今も昔も同じですね。

M04:水の都 ~The Lagoon City~
水の都ヴェネチアで、恵まれた環境の中、充実した人生を送る…。恋をし、子供に恵まれ、ガリレオ自身が「最も幸せだったのはヴェネチア時代の10年だった」と後述していますね。そんな思いを表現していますね。

M05:師匠と弟子 ~Master and Pupil~
自分が人に教えるという立場になり、多くの弟子が集ってきます。弟子達もそれぞれの主張を展開します。そしてその意見に答えるようにガリレオ自身も応答します。小林のギターに複数のギタリストが応答し、見事に楽曲がそれぞれの個性を生かしながら完成されていく様子は、まるでガリレオとその弟子達の討論のようです。

M06:心の底 ~Deep Inside~
人は必ず死ぬという現実をテーマにしています。尊敬するガリレオの師オスティリオ・リッチの死で、別れる現実を受け入れると同時に、師の教えを受け継ぎ守る。その事で師の意思を生かすというガリレオの気持ちを力強く表現していますね。

M07:Amore eterno ~Everlasting Love~
恵まれた環境から一転して自ら周囲に別れを告げて、真理探究のため、そして自らの研究を証明するという戦いのため愛する者達に別れを告げるというガリレオの想いを表現しています。決して愛が冷めた訳でも、嫌いになった訳でもない…どこか切なさを感じるバラードです。

M08:地動説 ~Copernican Theory~
いよいよ人生を掛けたテーマに挑みます。自分自身の研究の探求の集大成を世界に公表します!どうなるのだろう…?不安を感じない訳は無いですが、それよりも希望が勝る!という思いを見事に表現しています。

M09:保守派 ~Conservatives~
さて、論戦になりました。周囲は全て反対意見!法廷に呼ばれたガリレオの主張と、保守派の舌戦がヴォーカリスト達の応答という形で繰り広げられています。私が小説の中で異端審問を詳しく扱わなかったのは、このスーパーヴォーカリストの皆様に表現して頂いた方が的確だと感じたからです。大切なのは周囲に従う事なのか?それとも真実を証明し既存のものを否定する事なのか?見事な論戦が繰り広げられています。

M10:裁判 ~Judgment~
そして、ガリレオは異端として自らの説の撤回を求められます。不条理な世を憂う…そんな楽曲に仕上がっていますね。

M11:花鳥風月 ~The Beauties of Nature~
しかし、永い時を経たなら、自分の行ってきた業はどんな報いを得るのだろうか?自分の探求しひたすら走ったその道は、必ず理解されている!という確信に満ちた希望の歌です。素晴らしい構成の曲ですね。
歌詞の1番の小節の頭文字を並べると“花鳥風月”、2番は“光風霽月”という四字熟語となっています。花鳥風月は自然の美しさ、そして光風霽月は、心がさっぱりと澄み切ってわだかまりがなく爽やかであることの意味です。
星という自然を探求したガリレオに相応しいと思います。

以下に歌詞を記載致します。

1
花の命 儚くて
鳥のように 去っていく
風に吹かれ 移ろう人の世で
月の光のような 思いを
込めて今 花のように 輝いて 咲き乱れて
舞い上がる鳥のように 風に乗って
だから今 高く 強く 大きな夢を求めて
闇を優しく咎める あの月の光のように

2
光遮る 憂いと
風に任せる 日々
晴れる心 夢見て彷徨えば
月は心見透かし 微笑む
だから今 光照らし 雲を裂く風となって
晴れ渡り澄んだ青く 広い心で
だから今 高く 強く 大きな愛を求めて
闇に優しく微笑む あの月の光のように
だから今 花のように 輝いて 咲き乱れて
舞い上がる鳥のように 風に乗って
今だから 高く 強く 大きな夢求めて
闇を優しく咎める あの月の光のように

作詞させていただきましたが「月の光は常にあなたの活躍を見ていましたよ。」という思いと、「人の憂い、そして人間なんて、大自然の中では小さなものなのだ。」というガリレオの悟りを込めさせて頂きました。

M12:若き星の夢 ~Dream of Young Star~
エンドロールのような曲ですが、どんな人間であってもガリレオと同じで、最初は何も無い状態からのスタートですが、星として光り輝けるのだ!という思いが込められていますね。
ミュージシャン、絵描き、そして小説家(笑)皆様に思いを届けるという点に関しては、ガリレオと同じです。

さて、最後になりましたが、この場をお借りしまして編集、構成等様々に助けて頂きました皆様に心より感謝を述べさせていただければと思います。そして、この素晴らしいプロジェクトに招待してくださった小林信一氏に心よりお礼申し上げます。

ありがとうございました!

この作品に関わってくださった全ての人々、そして読者の方々にガリレオの信じた神からの祝福がありますように。

葛城エース
https://note.mu/ace_katsuragi


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