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“答え“はお客さんの中にある—CTO工藤真のプロダクト論と「hacomono」の挑戦


株式会社まちいろ 取締役 CTO
工藤真 (MAKOTO KUDO)

株式会社エイトレッドにて開発リーダーとして、ワークフロー製品 X-point、AgileWorksを生み出す。2012年から株式会社サイバーエージェントにてスマホソーシャルゲーム開発を経て、2015年10月 株式会社まちいろにジョイン。CTO、プロダクト開発責任者として、チームコミュニケーションサービス「marchily」、会員管理・予約・キャッシュレス決済プラットフォーム「hacomono」を生み出す。

Introduction

まちいろは、フィットネスクラブ・ヨガスタジオ など月額制店舗のための会員管理・予約・決済システムのSaaSプロダクト「hacomono」を開発する南池袋の会社です。「池袋地域密着」「テクノロジードリブン」など、独自のカルチャーを持っていて、エッジの効いたプロダクトを世に生み出しています。
でも、ここまでの情報は、ホームページにも書いてある、まちいろの一部にすぎません。
hacomonoマガジンがいちばん伝えたいのは「会社」と「プロダクト」に関わる「人」の物語。まちいろで働く個性あふれるメンバーの想いをつなぎ、これからジョインする「あなた」に届けます。
第1回はCTOとして開発チームをリードする「まこさん」にお話をうかがいました。

エンジニアとしての第一歩

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--今日はよろしくお願いします。まこさんについて聞いたときに、メンバーからの第一声は「職人気質」という言葉でした。

職人と言われるとちょっと嬉しい(笑)。できればそうありたいと思いますね。

--今日はせっかくなので、ふだん語らない「モノづくりへの想い」を聞かせてください。もともとエンジニアを志したきっかけはありますか?

この業界や仕事に興味を持ったのは高校生のときです。

私は「中高生くらいで親にパソコンを買い与えられて、昔からコードを書いてました」というタイプとはちょっと違くて。

「コンピューターやプログラミングが好きだろうな」という感覚でなんとなく大学に入って、自分で調べて、遊びながら勉強していたら、すごく肌に合ったんですよね。今では当たり前になっているんですけど、アウトプットを重視するようになったのは社会人になってからです。

--現在はCTOとしてチームをリードするまこさんですが、エンジニアとしての第一歩を踏み出したとき、どんな気持ちで仕事をしていましたか?

子供っぽいんですけど「頑張った分だけほめられる」ことがすごく嬉しかったんです。

最初に入社したエイトレッドでは「X-point」「AgileWorks」というBtoBのワークフロー製品をつくっていました。

自分が成長した分、できることが広がって、お客さんに喜ばれる。その循環がどんどん楽しくなってきて、初めて「プログラミングを仕事にする経験」ができたと思っています。

クライアントワークも1人で要件定義からつくるものが多く、個人の裁量が大きい環境に身を置けたことも良かったかもしれません。3〜4年くらいでポジションを変えつつ、結局10年間ほどいました。


BtoCサービスから得た学び

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--その後、メガベンチャーでBtoCの経験もされています。

2社目のサイバーエージェントでは、ソーシャルゲームの開発を担当しました。BtoCのゲーム開発・運用に求められるスキルやマインドはこれまでとぜんぜん違くて……めちゃくちゃ忙しかった記憶があります(笑)。トラフィックの量もケタ違いに多いので、土日にゲーム内でイベントがあるときは、常に見ていないといけなかったり。

とにかくハードな環境に加えて、とにかく事業判断がシビアで早い。売上が立たないとチームがなくなってしまうというなかで、「愚直にKPIを追う」という意識は大きな学びでした。そういう感覚はそれまで持てていなかったと思います。

--現在のまちいろは少人数の組織です。最初のエイトレッドに近い環境かなと思いますが、いかがでしょう?

大きな組織で開発を3年間やってきて「またスモールチームで一からやりたい」という気持ちが芽生えてきて、転職を考えました。30代で結婚して子供が生まれたときに、土日のハードワークが難しくなってきたということもあります。

ちょうどその頃、エイトレッドで一緒に働いていたけんさん(代表取締役・蓮田 健一)に「取締役のCTO」というお話で、まちいろに誘ってもらったんですけど、プレイヤーでありつつ、会社とチームを育てていく経験もできそうだということで、最終的にジョインを決めました。

--一緒に会社をやるうえで何か心配なことはありませんでしたか?

けんさんと一緒にやることに関して、心配事は一切ありません。どんなプロダクトをやるか決まっていなかったんですけど、「次は何をやろうか」と一緒に考えていく面白さ・ワクワクするような期待感がありました。


まちいろを支える、開発チームの武器

--まこさんが「プロダクトを通して実現したいこと・世界観」はありますか?自由度の高い状態においては、開発者個人の思考が与える影響も大きいのでは。

私自身でゼロからアイデアを生み出すことはそんなになくて。目の前のお客さんから課題を聞いて、製品・機能を考えることが好きなんです。

けんさんとワークフローの製品をやっていたときに、ホリゾンタル(業界横断型)なSaaSとして、いろいろな業種・パターンがあるなかで、汎用的な機能に落として使ってもらうアプローチをしてきました。

エンジニアとして、お客さんに言われたことをそのまま要件に落とすのではなく、課題の抽象度を上げて捉えるということを何年もやってきたので、そこがまちいろの開発の根底になっているし、会社としての武器でもあると思います。

--エンジニアとして、影響を受けた人・出来事があれば教えてください。

その課題解決に向けて抽象度を上げて物事を考え抜く、というのを徹底して教えてくれた師匠のような方がいます。

エイトレッド時代に「AgileWorks」の企画を立ち上げた人なんですけど、その人と一緒に設計をやっていた1年間がめちゃくちゃ面白かったんです。ずっとモデリングと設計をし続けるという感じで、コードは何も書いていないという。

たとえば、新しい要件や漏れていた要件が出てきたり、単純に機能を満たしていないというときに「それはどこかで考えが足りていないから、デザインした設計にはまらないんだ」と。詰めるような言い方ではなく、ニュートラルに「もう一度考えてみよう」と言って立ち返るんです。

本当に「考えが足りない」って何度も言われたんですけど、たしかに根底のロジックが積み上がっていると設計にピタッとはまるし、お客さんから新しい要望がきたときにも、スッと対応できるんです。

そのときに学んだことが今でも活きているし「思考すること」に1年間注力させてもらえたのは、すごく貴重な経験でした。

「hacomono」事業の面白さ

--エンジニアとして「hacomono」に関わる面白さを教えてください。

「hacomono」はフィットネスクラブ、ヨガスタジオ、インドアゴルフ、商業施設などの会員管理・予約・キャッシュレス決済システムを提供しています。

事業の面白さの1つは、BtoB全般に共通する「お客さんとの距離」。サポート1つとっても学びがあるし、直接いただける要望の1つひとつに、プロダクトへの期待が感じられます。

もう1つは「業界課題の大きさ」です。お客さんの中には、10年以上同じシステムを使っていて、なかなかリプレイスが進まないという店舗も少なくありません。

とくに今はコロナの状況下で、オンライン予約やキャッシュレス決済を進めなければいけない。また、人手不足の中でも運営するためのシステム化も課題になってきます。

そこに対して、我々のプロダクトで改善ができるというのは、すごく意義があるというか、社会貢献ができるんじゃないかなと。そういった視点で「hacomono」をやってみるのも面白いんじゃないかなと思います。


店舗ビジネスの現在と未来

--「hacomono」は今後、どのような発展を考えていますか?

「hacomono」は最初の導入事例でもある、暗闇フィットネスの「b-monster」から始まっています。そこから店舗ビジネスの課題にふれていくうちに、リアル店舗にテクノロジーを作用することによって、解決できることがたくさんあることに気づきました。

まちいろはフィットネス業界のほかにも、飲食店のモバイルオーダーシステムをやったりしているんですけど、そちらではまた別の悩みがあったりして、永遠に課題が尽きないところが面白いと思っています。

そのような課題に「hacomono」でアプローチするか、新しいプロダクトでアプローチするかは今まさに考えているところなので、新しい領域でたくさんチャレンジができるんじゃないかなと思います。

--個人的に注目している業界はありますか?

個人的にはコワーキングオフィスやレジャー施設の予約とか。子供がいるのでそちらの視点に寄ってしまいがちですけど(笑)。自社のプロダクトでできたらいいなと思うことはあります。

昨今「DX」がバズワード的に使われていますが、既存業務が「DX」というワードのもとにデジタル化されていき、人がやらなくてもいい業務が最適化されていくことは必然です。

私らはそこに対して「hacomono」で戦っているところがあるので、まちいろにとっては追い風になるし、結果的に人手不足など、それぞれの業界課題の改善につながっていけばいいなと思います。

文章:宮原透