ピアスと元カレ

高校生の頃に付き合っていた人とは、別れた後も友だちで、頻繁に連絡を取る訳ではないけれど、ゆるく繋がっていた。

付き合っていた当時
「ピアスあけないの?」と聞かれて、
「大人になってからあけようかな。」
「大人って20歳?」
「いや、20歳ってまだ精神的に子どもでしょ。もう少し大人。26歳くらいかな」
というやりとりがあった。

別れて何年も経った後で、何のタイミングか忘れてしまったけれど、久しぶりに会うことになった。

そのとき私は、26歳だった。
でも、ピアスはあけていなかった。

大人になったらあけたいと思ってきたのに、実際に大人になってみたら、完全にピアスへの興味を失っていたのだ。

高校生のときにピアスがカッコよく思えたのは、校則で禁止されていたからだったのかもしれない。

ピアスを開けている子は、検査の時にはファンデーションを塗ったりしてやり過ごしていたので、本当にあけたければ、別に校則を破ってあけることもできた。
でも私は「校則を破ろうと思えば破れるのにあえて破らない」ことに謎に美学を感じていたのだ。
安易に破ることを安っぽく思ったのだと思う。

かと言って、校則から解き放たれた途端にあけるのもシャクで。

その結果「大人になったらあけたい」と言っていたのだった。


彼と会う日にちが決まってから、イヤリングを買った。銀色で、ダイヤみたいなガラス玉が3つ連なっていて揺れるやつ。自分的に大人っぽいと思うやつだ。

銀色のイヤリングを付けたら、自分が普段よりも大人に見えた。
「大人になったんだなあ」と、過ぎた時間の長さを、しみじみ噛み締めながら、彼と待ち合わせをした駅に向かう。

彼は、私の耳にアクセサリーが付いていることにすぐに気が付いた。

「ピアス、あけたんだ?」
「いや、イヤリング」
「なんだよ、挟んでるだけかい」
「うん、挟んでるだけだよ」

イヤリングのことを挟んでるだけという言い方をする感じが、なんとも彼らしくて笑った。

「26歳になったらあけるって言ってたじゃん?」
「うん、気が変わった」

久しぶりに会った彼が、16歳の頃の会話を覚えていてくれたことが嬉しかった。

10年経って、変わったこともあるけど、変わらないこともある。昔の自分を知っている人に会うと、定点観測みたいに振り返る機会になって楽しい。

そういえば、最近連絡を取ってないけど、元気にしてるかな?




最後までお読みいただき、ありがとうございます。

それでは、今日も無理せずがんばろう〜

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