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銭湯日記 7

久しぶりの休みに、いつもの銭湯はあいにく定休日だった。車で10分くらいのところに、スーパー銭湯があるので、そちらへ行くことにした。

疲れていると出かけるのもおっくうだが、とりあえずキャップをかぶり、Tシャツとジーパンの上にダウンを羽織って車に乗り込む。行き先が銭湯だと身仕度も簡単である。

いつもの銭湯と違って、ここには露天風呂がある。室内の風呂で少し体をあたためてから、外に出る。岩で囲まれ、温泉風にしつらえられた露天風呂が中央にひとつ。それから薬草湯と、壺湯がある。

独特の香りに惹かれて、まず薬草湯に体を沈める。花の香りなどとは少しちがうが、なぜかとても落ち着く。体が求めている成分が含まれているのかもしれない。褐色のお湯は柔らかく、なめらかである。

露天風呂のまわりには、竹が植えられ、なんとなく日本庭園風になっている。竹が青々とした葉を風になびかせていて、とても美しい。そういえば、竹の春という言葉があったのを思い出した。

のぼせてきたので、ベンチで休憩する。
考えてみれば、11月も下旬、冷たい風の吹く日に、裸で外にいるというのはなかなか異常だ。風呂であたたまっているとはいえ、最初は寒いと思ったが、少し経つと、体の内側からぽかぽかとあたたまってきて、風がむしろ快い。冷たい外気は、水風呂と同じ効果があるのかもしれない。

壺湯がまた最高だった。壺のふちに、足と腕、首を引っ掛けると、湯に浮いたかたちになり、体が重力から解放される。視界に広がるのは、高く、澄んだ青空だ。
海やプールに、浮き輪で浮かんでいる感覚を思い出す。しかしここでは遭難の危険もなく、通りすがりのバタ足に水を浴びせられることもない。

平日の午前中で、空いていたこともあり、露天風呂をぞんぶんに楽しめた1時間だった。

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