雨の残り香

マンションの玄関を出ると、目の前に広がる光景に違和感を覚えた。
全体的な色合いがなんとなく違う。

空と路面のコントラストが強いことに気づくのに少し時間がかかった。
どうやら外に出る直前まで雨が降っていたようだ。
通り雨だったのか空は既に晴れ渡り、そこだけ切り取ればなんてことのない青空。

何事もなかったような空とは対照的に、路面はまだたっぷりの水分を含み濃灰色に変化したままだった。
それがコントラストの強みにつながっていたようだ。眼前に広がる景色に違和感を覚えた原因がわかり、エレベーターに乗り込んだ。

地上に出ると、今度は路面に染み込んだ水分が降り注ぐ光を反射していた。面として光を跳ね返しているから、かなりの光量になるだろう。
上を見ても下を見ても、まぶしい。光に板挟みされた気分になる。

人工的な街に暮らしていても、いたるところで自然を感じることはできるんだな。
朝からかわいいイタズラをされた気分。

そうして出来た光の道を歩くのは、悪い気はしない。

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