五月十一日、今日の一句
▼ 五月一一日 清水
底の石 動いて見ゆる 清水哉
明治四〇年(一九〇七)
ふたたび「清水」の句ですが、透き通った湧水を通して、まるで川底の石が動いているように見える、と詠っています。強いて理屈を云えば、風(空気の流れ)によって水面が波打ち、そのため水と空気の境界で生じる光の屈折角度が波打つ周期に同期して変化する。そのため、屈折光を捉えた人間の眼には、あたかも石が動いているように見えるということでしょうか。
師の句は、こういった物理現象からくる錯覚をうまく使って、清水の「透明感」を表現し、かつ動いているように見える石の美しさまでも描いています。
季節も句趣も異なりますが、
秋の川 真白な石を 拾ひけり
という句(明治32年)も好きです。
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