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乳と蜜の流れる食卓④本場アカシア蜜か地元ソヨゴ蜜か

本場のアカシア、その理由

7月に届いたはちみつのサブスクは、先月採れたばかりという、秋田県産アカシアはちみつと奈良県産ソヨゴはちみつだ。(*アカシアはちみつは、正しくはニセアカシア(ハリエンジュ)のはちみつで、アカシア属のアカシアとは種類が違うのでご注意!)

まず、アカシアはちみつ。今回のは秋田の小坂町産で、数あるアカシアはちみつの中でもはちみつ屋雅蜂園の大塚社長いち推しのものなのだそう。それもそのはず、秋田県鹿角郡小坂町のアカシアはちみつは花の純度は抜群! 何といっても山全体がニセアカシアなのだから。
江戸時代以降銀の鉱山として栄えた小坂町だが、明治時代には鉱山の煙害で一帯の山の木が枯れはげ山に。そこへ煙害にも強い樹木として大規模に植林されたのがニセアカシアだった。今では300万本にまで群生を広げ、小坂町のシンボルとなり、毎年「アカシアまつり」も開催されている。
そんな本場のアカシアはちみつを「いただきます!」

「ん~、まったくクセなし。あっさり。さらっとして粘度が少ない」。採れたてで色が薄いので、ヨーグルトにかけても黄色くならない。クセがないのでそのまま紅茶に入れてもいい
はちみつがあまりにさらさらしているので、ヨーグルトはギリシアヨーグルト、毎日牛乳の「至福のギリシア」を選択。ギリシアヨーグルトは製造過程で水切りしているため水分が少なく、クリームチーズのようにしっかりとした質感だ。さらっとしたアカシアはちみつをかけると、チーズケーキのような味わいに。チーズの食感が強いのでワインにも合うような気がする。

ソヨゴの「ソ」はそのへんの「ソ」

一方、奈良県産ソヨゴはちみつの産地は、生駒山頂付近だそうだ。京都府南部に住んでいる私にとって、生駒山と言えば自宅から車で30分の距離。地元のはちみつではないか! 一気に親近感がわいてきた。

ソヨゴはモチノキ科の常緑樹で、直径5ミリほどのほんとに目立たない白い花が咲く。ソヨゴは生駒山だけではなく、多分関西の「そのへんの山」ならいくらでも見つかる木で、秋になって赤い実を付けて初めて存在をわかってもらえるような「そのへんの木」という印象だ。ソヨゴの「ソ」はそのへんの「ソ」、とちょっと見下してみたりするものの・・・。ところがところが!この花のはちみつときたら、抜群においしい! 何を隠そう私は数ある百花蜜の中でもソヨゴはちみつが一番好き。あの目立たない花からどうしてこんなにおいしいはちみつができるのだろうか! いつも教室の隅っこにいる目立たないあの子が、実は読者モデルしてた、みたいな意外性だ。
ただ、ソヨゴ蜜として売っているお店は少なく、ふつうは百花蜜として売られている。さて、今年のソヨゴ蜜をいざ試食。「あ~、やっぱりおいしいわ~。淡い柑橘系の香りとコク。いつまでなめていても飽きがこない」ソヨゴはちみつはいつまでもなめていられる。もちろんしっかりした味なのでどんなヨーグルトにも合う。ちなみにソヨゴはちみつについてきた雅蜂園さんの解説は以下の通り↓

少しビターなコクのあるほろ苦い甘さは何にでも合います。山の蜜としては優秀な蜜源ですが、今年は少しあっさりした他の花が近くに咲いていたのか?まろやかな味のソヨゴの蜂蜜です。

ふつうよりもまろやかな味なのだそうだが、私にはそんな微妙な違いまではわからない。他の花が混じっていてもこのおいしさだ。馴染みある地元の山で採れたという親近感と誰がブレンドしたわけでもない自然の調合による味わいの深さにただただ感心するばかりだ。

百花蜜が豊作

「異常気象が続くと百花蜜が多く採れる」と話すのは、はちみつ屋雅蜂園の大塚美和社長。最近、季節の変わり目がはっきりしない気候が続いているが、こういう気候下で採れるはちみつはどうしても百花蜜になるという。

植物にはそれぞれ開花に適した気温がある。開花時期を変えることで、昆虫による受粉機会を増やすことににつながるからだ。養蜂カレンダーでも桜の後はレンゲ、レンゲの後はミカン、ハゼ、アカシアとだいたい花が咲く順番は決まっている。ところが、最近は春なのに真冬のような寒さに戻ったり、夏なのに長雨で気温が上がらなかったりして、野山の植物が同時に開花してしまう。これが養蜂家泣かせで、本当ならなるべく1種類の植物の花だけから採れたはちみつだけを採りたいところが、他の花の蜜も混じったりするのだという。
秋田の小坂町のように1種類の植物の大群落があるなら別だが、野山で開花のタイミングを見極めながら蜂の巣箱を移動させて特徴あるはちみつを採っている養蜂家にとって、同時開花はあまりありがたくはないようだ。本来なら商品価値が高い「単花蜜」として売りたいところをいろんな花の蜜がたくさん混じってしまうと、「百花蜜」として売らざるを得なくなるから。
でも、これからはきっと百花蜜ファンも増えるはず。本当のおいしさを知れば、はちみつのラベルなんてどうでもよくなるんだから。

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