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ジェンダーと経済の関係

近年の日本ではフェミニズムの話題を聞くことが多くなりました。ジェンダーの問題にここまで世間が強い関心を寄せることは今までの時代にはなかったことです。

日本においては、ジェンダーの問題は主にポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)に基づいて議論されることが多く、その中にはミサンドリー(男嫌い)やミソジニー(女嫌い)を含む感情的な意見も目立ちます。

一方、世界的にはフェミニズムは経済学的な視点から語られることがあり、経済学者にはフェミニストが数多くいます。たとえば、欧州中央銀行の理事であるクリスティーヌ・ラガルド氏もフェミニストであり経済学者ですし、 IMF理事長のゲオルギエヴァ氏もフェミニスト。日本でよく話題になるジェンダー・ギャップ指数も「世界経済フォーラム」が発表したものです。

さて、女性の社会進出が進んでいる国は、1人当たりGDPが高い傾向にあるのをご存じでしょうか。考えれば簡単なことで、男性が働いて女性が主婦をするより、男性も女性も働けば単純に労働者が増えるからGDPも上がる。たったそれだけのことです。ただでさえ日本は少子高齢化で(今はコロナ禍ですが)本来は人手不足状態なのですから、ことさら日本は女性の社会進出が求められているというわけです(日本や韓国は工業国のため男社会になりがちですが、北欧のようなITの発達した国は女性でも不利になりにくい。経済学で言っても製造業よりIT産業のほうが高次元です)。

ただし女性の社会進出を促すのは容易ではありません。それにはまず職場における女性の賃金や待遇を男性と同等にすることが必要であり、パワハラやセクハラ対策も欠かしてはなりません。日本で専業主婦志望がいまだ50%近くいるというのは、日本の伝統的で劣悪な労働環境のために女性が就労を嫌がっているのが社会背景としてあるのでしょう。

さらに出生率も上げることが目標なら国の政治家たちは子育てしながら働けるよう児童福祉施設や幼稚園の拡充、経済的な支援、復職支援などを行う必要があります。安倍内閣は女性活躍社会と銘打って女性の社会進出を促していますが、そのための支援は少なく、空回りしています。

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日本は30代女性における労働率の割合が低くなっており、これは妊娠や出産に伴い退職する人が多いことが背景にあります。アメリカも低めですが、一方でスウェーデンは高水準であることが分かるでしょう。


ちなみに、LGBTについても経済と深い関係があります。アメリカのサンフランシスコという都市は早くからLGBTの権利拡大に動いてきました。今では市の人口のうち1割が同性愛者であるそうです。国内外からサンフランシスコ・ベイエリアに移住するゲイの人はかなり多いですが、その中には資産家や優れた技術を持つエンジニアも数多く含まれています。そのため地域にカネと技術が集まり、サンフランシスコ及び後背地であるシリコンバレーは世界屈指のテクノロジー都市へと変貌したのです。

よく「人権はビジネスだ」だと言う人がいます。その指摘は私は正しいと思います。女性や同性愛者の中にも優れた技術者や経営者がいる。金になるから人権を与えるのです。逆に言えば、金にならないような人に人権は与えられません。ムンバイのスラムに住んでる子供にアメリカの市民権が与えられるでしょうか。男女平等にしろLGBTにしろジェンダーの議論は「経済の成長」のためには回避できない問題なのです。

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