『100年の徳』 (前半)
囲炉裏がある家
2020年2月、岐阜にある私の実家に友人・知人の皆さんが大勢集まってくれました(まだコロナ騒動が始まる前)。私の実家は築120年ほどの古民家になりつつある感じの家です。土間や囲炉裏があります。そして土間や囲炉裏しかありません。
田舎というところは、都会の方からしたら何にも無い場所です。いえ、この表現は少し的を外した言い方なのかもしれません。田舎というところは、むしろ田舎の者からすると、ほんとうに何も無い場所なのです。
知人である、神奈川の男性、京都から遊びに来てくれた女性、関東出張の帰途に立ち寄ってくれた富山の男性。読書会イベントで知り合った地元の男性や、私のFacebookを見て初めて遊びに来てくれた若い女性、フィールドワーク調査で街を訪れていた名古屋外国語大学の先生とそのゼミ生の女の子達、等々。
私の実家に集まってくださった皆さんと何をしたかと言えば、「囲炉裏で火を焚く」。この一択でした。冬の真っ只中、私にできる "おもてなし" と言えば、火を焚いて、訪れてくださった方々が居る場所を暖かくすること。コレだけでした。
ふだんは空き家となって静かな私の実家ですが、私が帰省するたびに少し騒がしくなるものですから、ご近所のオバちゃん達が、もの珍しそうに覗いて行ったり、仏壇の祖父母に線香をあげに来てくださったりしました。
マシュマロを焼いてみる。
みなさんはマシュマロを焼いて食べてみたことってありますか?そう、あの白くてポニュポニュ柔らかくて甘いあのお菓子のような食べ物です。キャンプの時などアウトドアで焚き火をする時にこんがり焦がして食べたことある方も多いかもしれませんね。
マシュマロを焼く時には、小まめにクルクルと回しながら火のあたる面を変えていくことが上手に飴色の焦がしをつけるコツです。そうしないと気を緩めた瞬間にマシュマロは黒々と炭のように焦げてしまいます。
炭の遠赤外線でゆっくりジンワリと表面に焦がしがつけられると、マシュマロの中身はトロットロに柔らかくとろけています。外はカリカリ、中はトロトロ。2つの食感と甘さを楽しむことができます。
マシュマロをせっかく焼くのですから、どうせならクラッカーを用意しておくと良いでしょう(クラッカーがなければビスケットでも大丈夫)。クラッカーに焼けたマシュマロを挟んで食べる。これがまた最高に美味しい。シンプルですが、時間をかけてようやく味わえるからこそ、なんだかすごく美味しく感じてしまいます。
「こりゃ、おったまげたよ」って、近所のオバちゃんが喜ぶ。
数年前に祖父母をおくり、今は空き家となっている実家ですが、私が時々帰省した折には、近所のオバちゃん達が気にして覗きに遊びに来てくれます。祖父母と仲が良かった皆さんですので、私よりはずっとずっと歳上のお姉様の皆様。
ちょうど私が友人の皆さんと囲炉裏でマシュマロを食べていましたら、Yさんがいらっしゃってくれました。「あれっ、随分と大勢のお友達が今日はいらっしゃるねぇ〜」とオバちゃん。
「そうだ、オバちゃん、マシュマロ食べない?」と私が勧めてみると、オバちゃんは不思議そうな顔をしながら、「ほぉ〜、ほぉ〜、これがマシュマロかい。焼いてなんてオバちゃん食べたことないよ。」と興味津々に口へ運びます。
「ふわぁ〜、こりゃまたなんて美味しいんだい。オバちゃん、こんなの初めて食べたよぉ!」と、オバちゃんは私が思っていた以上の反応。とっても嬉しそうに美味しそうに食べてくださりました。
で、わらしべ長者の物語がはじまる。
(つづく)
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