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東京芸大デザ3年成果展「アフターコロナのユートピア」アフタートークレポ

GOOD DESIGN Marunouchiで開催中の東京藝術大学デザイン科 3年生の課題成果展「アフターコロナのユートピア」のアフタートークイベントにオンラインで参加させていただいた。

展示会詳細:https://www.jidp.or.jp/ja/2020/09/01/20200901?query=tagNames%3DNEWS%26tagNames%3DREPORT
アフタートークイベント:https://www.youtube.com/watch?v=9asWUDGG8aQ

自分は今回タイミングがなく現地には足を運べなかったが、制作の裏側がわかり勉強になった。こういう機会が増えたのも1つの「アフターコロナ」かなと思う。

授業スケジュール

担当教員は藤崎圭一郎氏とSputniko!氏。作品検討会、講評などすべてリモートで行ったグループワークの実技課題で、課題説明後、実際にどう提案していくか生徒自身が選択していく。また定期的に講義を挟む。

振り返って

miroの生徒の適応力にびっくりした。情報ネイティブ世代(スマホを中学から使っている世代)を目の当たりにした。(Sputniko!氏)

Miro - チームコラボレーションソフト https://miro.com/

会場での展示について

コロナが流行ってから、もう今では奇妙な「当たり前」も多く存在する。今までは何の疑問もなく満員電車で一時間も揺られていたが、実は心身ともに疲れていた。会場では、そんなビフォーコロナの奇妙な「当たり前」や、「今後のアフターコロナの世界」を来場者にポストイットで壁に貼ってもらうことで、今一度考えるきっかけを提供している。

「人とのつながり」を描いている人も多く、今までは恥ずかしかったり情に厚いラッパーが言うようなことも、実際にコロナになって実感した人が多かったのだろう。また、今は社会や政治が不安定な時期でもあり、「正解がない」と多くの人が気づけたいい機会だったと思う。(Sputniko!氏)

いろいろな社会の仕組みや自分の行動などを今一度見直す機会をコロナが作ってくれた。(藤崎圭一郎氏)

Zoomでのプレゼンと講評の様子(抜粋)

これがとても面白かった。興味があればぜひご覧になってほしい。また、まとめ部分はイベントでのプレゼンターの発表を自分が要約しているので、解釈の違いなどがあってもご勘弁を。

①あのとききゅうりは冷たかった

「食」をお金で買うことについて、現状の世の中ではお金でしか生活を助けたり、苦しめたりすることができない。しかし「食」の栄養素は味だけでなく、食べるまでのストーリーにある。ストーリーが思い出、感動、記憶となり心の栄養素となっているんじゃないか。そのため、外で食事を買うのみでなく、ときに自分の手で作ってみることも大切である。

成果物としてはプロパガンダ(メッセージ)に近い。手作りの良さや、食を作ることと食べることの距離の広さに着目している点ではよいと思う。ただし、食を作るシーンでビジュアル的にお母さんやおばあちゃんが登場しており、無意識かもしれないがその役割を女性に押し付けることになっているかもしれない。(Sputniko!氏)

②2mの赤い糸デート

新しい恋愛のカタチとして「触れ合わないデート」 2mの赤い毛糸を男女の小指に結んだデートを提案した。このグループはアフターコロナによって遠隔恋愛と近接恋愛の二極化が進むと予想。実際にコロナ禍での恋愛事情について250人にアンケートを取り、遠隔恋愛派の「お互いを大切にしたい/肉体関係が絡まないことでより純粋」、近接恋愛派の「愛する人は理屈とは別に会いたい/スキンシップは大切」などの意見を参考にした。最終的なプロダクト提案としては、2mの赤い毛糸を小指に結び、会っているけど触れ合わない、触れ合わないけどつながっているデートを演出する。「赤い糸」という象徴的なモチーフに、実際に会っている暖かさや触れられない繊細さから毛糸を素材に選び、プラトニックな恋愛を応援するものになっている。また動画内のキャラクターは様々な恋愛の志向があり、自分はどんな恋愛がしたいか?を考えさせるきっかけになっている。

着眼点・アンケートの規模(250人)はいい点である。キャラクターの恋愛の志向に関しては、動画単体では気づかなかった。また、これからの恋愛のカタチとして、デートだけでなく妊娠やセックスについても言及があるとなおよかった。(Sputniko!氏)

メルヘンな世界観にこだわった。よく見ると奇妙な優しいディストピアでも、当事者にとってはユートピアかもしれないというちぐはぐ感を大切にした。バーチャルとリアルの違いを考えるいいきっかけになった。(学生プレゼンター)

③U 

※ここから時間が無くなってきて簡単な概要になってます

現実世界のニュースとリンクした環境問題を考えさせるゲームを提案。動画では、男子大学生がゲームをきっかけに、現実の世界中の動物が人間が引き起こした環境問題によって大変な状況になっていることを知り、環境に配慮した行動をとるようになるという流れである。

このグループは、miroをとても使いこなしており教員側も驚いた。作品としてはなかなか現れずらいが、miroなど制作背景を見るといかに中身が詰まっており細かい設定まで考えられているかがわかる。現実世界のニュースを反映させるゲームというのも新しくてよい。(Sputniko!氏)

miroに関しては、まとめやくだらないこと、アイデア未満のものも入れていた。「とりあえずやってみる」がしやすいツールだった。リモートになったことで、それぞれが役割をより明確にして作業を行い、結果を持ち寄ることができたことが良かった。(学生プレゼンター)

プレゼンでは触れられなかったが個人的に気になったこととして、いわゆる小学生向けのゲームと違い、動物が「人間なのにそんなことも知らないの?」と皮肉っているところも罪悪感を芽生えさせる工夫かな、エッジが利いてるなと感じた。

④自粛警察

「自粛警察」という他人に対しても過度に自粛を要請することに対して、そのキャッチーなフレーズとそれを実際に視覚化した時の小ネタを詰め込んだ作品。細かいところまで作りこむことで、ドキュメンタリーにちょっとずつリアルなエッセンスが入り、見た人に面白いけど考えさせられる作品と思わせるように作っていった。

ユーモア・皮肉が利いていて、作品として見ごたえのあるものだった。展示もよかった。(Sputniko!氏)

メンバーがお笑い好きなことから、そのテイストでまとまったグループワークを発揮できた。役割分担して、楽しんで課題を行っていた(学生プレゼンター)

個人的な感想

自分は某工業大デザイン系出身なのだが、普段芸大/美大生などと話をする機会がないのでまずはどんな授業をしているか知れたことが新鮮だった。美大生とはインターンなどで何度かお会いしたことはあっても、芸大生の場合はがっつり就職するタイプでもなかったり、芸祭も敷居が高くなかなかタイミングがなかったので正直こういう機会はとてもありがたかった。

内容としては、提案といってもかなり生徒にゆだねられている部分が多く、自由な発想だからこそ現実的な話に落とし込むことが難しかったり... と、芸大生とはいえやはりそういう調整は難しいところだよな~と思ったり。

そもそも自分は全く芸大を受験候補に入れなかったので芸大というだけで全知全能な気がしてしまうんですが、そういう無意識にハードルが勝手に上がってしまうんだな~、本人たちにとっては大変だな~と思ったり。イベントでは、画面上で芸大生や芸大教員とzoom飲みをしているような錯覚におち入り、勝手に身近に感じてしまった自分でした。(これもリモートならではの体験かもしれない。)

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