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感想:ちいかわ島編は本当に【バッドエンド】だったのだろうか?

漫画「ちいかわ」の「島編」が完結した。
半年にも渡る長編、作者の急病、緊迫する世界情勢のなかで大いに世間を賑わし続けたナガノ先生に、まずは楽しませてくれてありがとうございますと感謝したい。

さて前回の記事でとんでも考察をしてみたりしたのだが今回は純粋に感想を。
作品を読んだ人向けです。

連載開始当初はオールキャラ登場で暗黒大陸編やらサウンド・オブ・ミュージック編やら色々推測されたが、独自の世界観で結局「島編」と呼ばれたシリーズ。
その前が悪夢編だったため、読者としてはもう既に「先生やめてよぉ」と言う気分で、最早シーサーと栗まんじゅうの回にさえ不穏を感じていたのだが、洞窟に入ってからその不穏は脅威に変化した。
その脅威であるのが今回のラスボスでありセイレーンというキャラだ。

最高にキュート…。
また可愛らしいのを生み出してくれたな?と思うと同時に「どうか誤解が解けて実はセイレーンは悪くないという展開になってくれ」と願っていたものだ。
しかしどうやらセイレーンがヤベー奴だと確信しはじめ、読者に可愛いと敵対生物への葛藤が生まれだす。

そんなところで突如として現れたキャラが「島二郎」である。

ちいかわという作品が一瞬「島二郎」になりかけたくらいのインパクトだった。
誰にも予想のできないタイミングで、誰にも予想のできないキャラで、主役を食うレベルの活躍。
そして、尻、尻、尻。
それぞれのキャラが役に立ったり立たなかったりする中で物語の真相は明かされていく(あらすじは省略)。

さて本題。
島編ラスト回更新後、トレンドには数々のちいかわ関連用語がアップされていた。
その中で「バッドエンド」がトレンド入りしたのだ。ちいかわ関連のワードである。
しかし実際バッドエンドだったのだろうか?
島編ラストはこうやって締めくくられる。

元いた島を去って新たな島で暮らそうと決めた葉っぱちゃん二人。
その島に近づくセイレーンの影。


自分も初見ではバッドエンドだと感じた。
だってセイレーンに捕まったら「なんかずっと暗いとこ」に連れて行かれるよ!?と……

だが終盤を読み直しいていくと自分の視点を疑い始めた。
バッドエンドだと思ったのは、あくまで読者視点。
島編は葉っぱちゃんたちが起こした物語であり、このストーリーの主役は葉っぱちゃんたちなのである。
彼らは罪を犯し、それを隠した。
それ故に多くの犠牲者を出してしまった。
それでも二人で生きようとしたのだろうが、そこはもう多くの仲間たちと離れ、なんかずっと暗いところに行くという選択しかなかった。
ちいかわには見逃してもらった。
もしあそこでちいかわに皆の前で指摘されていたなら、なんか小さくて優しい島民たちは、セイレーンたちとはまた違った受け入れ方をしたのかもしれないが、自責の念からだろう。あのキャンプファイヤーの夜に覚悟を決めたのだ。
おそらく結末は変わらない。
ちいかわは鱗を持ち帰って証拠を隠滅したが、葉っぱちゃんズはもうこの島にはいられないと考えた。
二人が辿り着いた島は、無人島だった。
セルフ島流しである。
葉っぱちゃんたちは、もうずっと一緒にいようと決意しているのだ。
彼らの燃料は電池だ。彼らは所謂永遠の命ではあるが、電池がなければ機能は停止してしまうし、二人しか居ないのなら交換手段も尽きるかもしれない。有限の命だ。もはや生命と呼べる存在ではないかもしれないし、普通より短い時間しかない可能性もある。
セイレーンたちが知ってか知らずか二人のいる無人島に近づいている。
もし見つかったら拷問されるのだろう。
でもあのときの二人はもう覚悟を決めていて、二人で生きる未来を見つめていた。
島編の主人公である二人は前向きに罪を受け入れたのだ。

果たしてこれは、バッドエンドなのだろうか?
確かにハッピーエンドではないのかもしれない。
読者から見れば、彼らの将来は暗いしあっという間に終わる可能性すら見える。
しかし葉っぱちゃんはそうではない。
これはつまり、メリーバッドエンドというものなのだろう。
いわゆる「メリバ」である。

メリバは視点により色んな受け取り方ができる。
例えば住人たちからすれば脅威が去ったし、島二郎からすればカレー屋が儲かるのでハッピーエンドとも言えるだろう。
ちいかわ除くちいかわ御一行からすると、やれやれと行った感じではあるが、ハチワレはおそらくこれをきっかけに強くなっていくだろう(?)
こちらのサイドから見れば決してバッドエンドではない。

最後にこのモモンガのセリフのコマに触れたい。
「…まっ オリに入れられて暗いとこじゃ意っ味ないからなッ」
空飛ぶ鳥は二羽。

この更新の前々日、金曜ロードショーでディズニーの「ノートルダムの鐘」が放送された。ノートルダムの中だけで暮らすカジモドは育てていた小鳥を空に放つ際に言う。
「ずっと籠の鳥なんかでいたくないだろう?」

ナガノ先生はこの放送にあわせてノートルダムの鐘のファンアートを寄せていた。ここは意識した部分もあったのではないだろうか。
葉っぱちゃんたちは自由を手に入れた。その先にあるものがどんな未来であれ、彼らはいま自由になったのだ。


ちなみに先生が描いたファンアートはこれだ。

なぜディズニー史上最悪ヴィランとの呼び声も高いフロローを!?いや多分好きなのわかるけど…さ…。

さて次回、ちいかわは草むしり検定に合格できるのでしょうか?というか島編は本当に終わったのか?(疑心暗鬼)
次のシリーズも楽しみです。ちいかわは止まらない。
でも先生、休み休みでいいですからね!








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