ヒーローものとは違うのだよ・・・。

 仕事始めが7日だった今年、第1週目はまだまだお屠蘇気分が抜けきらず、成人の日を含んだこの3連休がインターバルだった人も多いはず。明日からいよいよトップギアで仕事に専念しなければいけない日常を迎えると思うと、実際かなり気分が萎える。
 心機一転がんばって仕事に打ち込もうと思う気持ちはもはや1mmもない。そのくらい今の仕事、というか職場環境にウンザリしているが、そのネタはまた後日改めて。

 連休最終日、小学生の息子がおもむろに、「ねぇお父さん、月ってなんで地球に落ちてこないの?」と聞いてきた。いきなり突拍子もない質疑をかましてくるのは茶飯事なので、今さら驚きもしないが、サイエンス的なことを小学生が理解できるほど噛み砕いて説明する時間も自信もないので、とりあえず「図書室へ行ってこい。答えはそこにある。」とだけ答えてみる。まぁ、今でいうところの会社の上司や先輩に何を聞いても「ググれ」としか答えないアレと同じことかも知れない。
 こちらの言い分としては、何事も楽して話を聞くだけでは知識は身につかず、自分で疑問に思ったことは自分で探して、答えにたどり着いたらそれを検証し判断する。そうやってある程度のアクションを自己啓発で取り、調べた物事は死ぬまで忘れない。という主張なのだが、実際はただ解答するのが面倒くさいだけだろうとツッコまれてもなかなか反論は難しい。
 学校の図書室へ行くよう進言したあと、これまたおもむろに息子が聞いてくる。
 「月って鉄取れる?」
 その言葉を聞いた瞬間、ある程度の話の趣旨が理解できたが、敢えて聞き返して確かめてみた。
 「それって、月には鉄の材料があるかってことか?」
 「そう。」
 話の流れが疑惑から確信に変わったので、すぐさま自分の寝室にある本棚を確認しに行く。予感的中。本棚から“機動戦士ガンダム THE ORIGIN”(角川書店出版)のコミックが全て引き抜かれていた。

 自分に興味があるものとないものが結構くっきりなほうで、さらに物欲が豊富で何にしても原則的に自分が納得するツールにこだわるほうの俺は、物を粗末に扱うのを極端に嫌う。それが自分が使うものだけでなく、自分以外の誰かに与えたものであっても。
 この概念は子育てにも遺憾なく発揮されており、以前、物欲に乏しい嫁がめずらしく買ってきたコミックを小学生の子供に貸し出したところ、表紙から何からズタボロにして机の付近へ投げ捨ててあったことを発見したとの一報を聞いたその日、敢え無く鉄拳制裁の刑に処された経緯がある。
 質問の内容を聞いて、子供の行動を予想し確認行動を取り確信に至るまでに2分とかからなかった後、作中のギレンのような顔になった俺は子供に一言。
 「おい、俺のガンダム・・ 出せ。」
 その言葉のトーンとギレンの形相を見た息子は、これまた表情と顔色が作中のハロみたいになりながら「!!・・・ はい・・・」と言って枕元にヒタ隠していたコミックを次々と手渡してきた。当然その直後、200万Vの落雷を受けることになった。

 たとえ家族間であっても、誰の部屋へ許可なく侵入し、誰かのものを許可なく無断拝借していくことは断罪すべきなのが俺のルール。興味が湧いたなら湧いたでいいから、一言そこにある○○に興味があって見たいんだけど、いいかな?って言えば済む話。変に勘ぐって、正規のルートを通らない癖を今覚えるべきではない。当然、自分がやったことの責任は取るべきであって、そこを子供がやったことだからと甘やかす愚行はしない。
 ただ、ガンダムに興味を持ったことだけで言えば、悪い気はしない。目を真っ赤に腫らした息子に、1stガンダムが放映された当初、そのストーリー背景があまりにも画期的で、賛否両論の激論が飛び交う社会現象を起こしたこと、どちらが正義の味方でどちらが悪者という単純な話ではないことなどを説明した。これらの諸問題は、過去にも現在にも存在することであって、自分の正義はどこにあるかを常日頃考えて行動しなければならないことも付け加えた。
 ただ、あまりにも精神論的な話をするあまり、宗教的になると息子の将来が不安すぎるのでほどほどに。