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令和3年公認会計士試験体験記(6/9):管理会計論・会計学(午前)

※本記事は、こちらから始まる会計士試験体験記の一部です。全体の目次はこちらで見られます。

6.管理会計論・会計学(午前)

6-1.試験結果

短答式試験は82点(不正解は問題5(理論)、問題13(理論)、問題15(計算))だった。ただ問題4は試験中に時間切れとなり、適当に選んだ選択肢が当たったもの。問題13は「手元流動性」という用語を知らなかったという知識不足による。問題1は試験中には疑義問であることに気づかず、なんとなくの判断で切り上げていた。

問題15であるが、手を付けてから30秒ほどで解答放棄した。常備材料と固有材料を区別して資料提示しているので、出題者が翌1か月に限定した比較をさせたいことは察せられるが、その旨の明示がない。そして現実では、1か月分のみの有利不利では意思決定上意味がない(1か月ごとに自製・外注を切り替えることは通常難しく、それが可能という条件も問題文中に示されていない)。従って、「業務執行上の意思決定」としては使えない可能性が高い数値を、解答として要求されている(らしい)ことが分かる。出題者の意図を忖度して計算すれば金融庁発表の正解には辿りつくが、解答条件が全て示されていない問題は、出題不備と評価されるべきだと思う。
【2022年6月18日追記:ただし、本問が「解無し」でなかったことに不満はない。管理会計論の計算問題は解答条件を全て記述することが原理的に難しく、多少の不備では「解無し」という判断にはならない。本問も、曖昧な指示で意思決定に使えない数値を解答させるという不快さはあるももの、問題文から推測される作問者の意図に従えば一応計算できるので、「解無し」とまではいえない、という点には納得している。】

論文式試験は第一問が素点29(調整後得点28.85)、第二問が素点32.5(調整後得点45.4)だった。試験では問題を眺めて第二問から解き始めたのだが、時間配分を間違えて最初の第二問問題1に40分以上使ってしまった。第二問問題2,第一問問題1は30分くらいで切り上げたのだが、しわ寄せが第二問問題2に行くことになった。問題2の問3、問6、問7は完全な空欄で答案を提出した。

今年の計算問題は、概ね「解き方が分からない」難問は無く、計算の速さと正確さが問われていたと思う。デシジョン・ツリーも大原では(ステップ演習期開始前の)講義テキスト付属の問題集でカバーされており、大原生は初見で戸惑うことは無かったはずである。また見たことが無くても、概念的にはリアル・オプションの基本例のようなもので、受験生にとって新奇な論点ではなかった。

大原の解答速報を使ってみていくと、まず第二問問題1問2の記述は数値もあっているのでおそらく点が入っている。一方問4は3数値のうち正解は2つであり、その後の記述もキーワードは入っているものの数値が合っていない。問5は(良くないと知りつつ)空欄で提出した。

第二問の問題2は問1・問2の5か所を埋め、4か所が正解だった。問3は問1・問2が正解でないと合わせられないのでリスクを考えて手を付けなかった。問4は一応埋めたが、点が入っているは分からない。

第一問の問題1は数値7か所、記号5か所は全て合わせた。第一問の問題2は埋めた数値4か所(問2)は当てたものの、上述のように問3、問6、問7が全て手付かずだった。

…こうして振り返ると、会計学は午前・午後とも時間配分に割と失敗していることが分かる。演習で訓練を積んでいたのに…


6-2.使用教材など

管理会計論も、基本的には大原のカリキュラムに従っていた。ステップ演習前はテキスト付属の問題集と「肢別チェック」を進め、ステップ演習が始まってからは演習の復習・反復(と、引き続き肢別チェック)を中心に習得度を上げていった。演習の相対位置は、概ね財務会計(計算)と同じく、取り立てて良くもないが平均以上、という感じだったと思う。

ステップ演習Ⅰはテーマ別となっており、論点ごとの復習に便利だった。ステップ演習Ⅱからは様々な出題パターンに慣れる目的の問題が増えた。解いた回数(初見含む)は、ステップ演習Ⅰ(全14回)は6.9回(最低3回、最高10回)、ステップ演習Ⅱ(全10回)は3.1回、短答式試験後のステップ直対(全4回)は2.5回だった。初見時の平均点はステップ演習Ⅰが56.2点(最低35点、最高95点)、ステップ演習Ⅱが54.7点、ステップ演習直対が78.8点という結果だった。

短答対策の成績推移を見ると、演習全10回の管理会計論平均は65.9点(最低50点、最高80点)、公開模試は72点(258位)だった。

理論対策としては、講義テキストの他に「短答理論対策」「理論対策」が配られ、それを使って学習した。論文用の理論テキストが(講義テキストと併用するものの)想像していたより薄かったので、2020年12月ごろに教材の追加購入を検討した。ネットでの評判から、池邉講師のテキスト・講義に興味を持ったが、体験講義動画を視聴して講義視聴は不要と判断し、過年度の理論テキスト(論文対策集)のみをメルカリで入手した。

結果、相対的に詳しい説明が読めて好奇心が満たされたし、論点に対応する過去問が同じページに解説付きで載っているのも試験対策本としては評価できると感じた。ただ、本試験の得点に直結したかという意味では今一つ実感が無かった。いわゆる「吐き出し」では答えられない問題は結局出た(今後も出るだろう)し、大原のテキストでも典型論点はカバーされている。とはいえ本格的な試験傾向分析を行ったわけではないし、自分の中で両テキストの効用を切り分けられないので、判断を保留する。なお、詳しいテキストであろうと理論書の(あまり批判的でない)切り張りであることに変わりはないので、将来的には研究者の書いた理論書や教科書に触れたいと思っている(現在、櫻井(2019)が積読状態)。

12月ごろからは論文演習が始まった。初見の点数は全12回の平均が51.3点(最低28点、最高74点)。公開模試は午前に限ると第1回(3月)が49点、第2回(7月)が42点だった。正確な数字を出すのは難しいが、管理会計論の論文演習は、財務会計論の論文演習よりも多く反復に用いたと思う。これも一度に全部解きなおすのではなく、大問一問(場合によっては小問一問)単位で時間を決めて解いていた。

演習問題は概ね良質であり、習得度を上げるのに有用だったと思うが、ステップ演習直対の第4回で意思決定に関して微妙な問題が出た(問題間の独立性について指示がやや曖昧で、意思決定に使うと判断を誤る数値を正解として答えさせる問題)。また、論文直対演習第4回のアメーバ経営に関する理論問題でも、前提を補わないと解答できない問題が出た。しかし本試験でも似たような疑義問が出うるので、その対策という意味があったのかもしれない。

短答式試験後には、過去問を数年分解いた。計算問題のバリエーションを独力で網羅的に把握するのは困難であり、予備校の方に蓄積があってそれが演習に反映されているので、企業法ほどには過去問が有用ではないと思う。また出題範囲の疎密を占うことにも関心がなかったのだが、「本物」の雰囲気を知るという点では役立った。


最後に勉強時間であるが、計算・理論合計で977時間、一日平均で2.0時間を使った。講義消化期で科目数も少なかった2020年4~5月は一日平均が4.2時間だったが、それ以降はあまり変動がなく、2021年6~8月も一日平均1.7時間を管理会計論に充てている。2020年11月だけ突出している(一日平均2.6時間)理由が思い当たらないが、原価計算基準を集中的にやりこんでいたのかもしれない。


(続きます) 


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