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ミニマリスト

という人種がいるらしい。宇多田ヒカルの元旦那さんはいつぞや「所持品はトランクケースひとつ分です」と言っていた(確か)。「着替えの服は??替えの靴は??」と思った。

私は荷物が多い。日頃の持ち物もそうだし、家の中の所持品もだ。一応全て収納に片付けているので部屋が散らかっているということはないが、転勤の度の引っ越しでは1人分とは思えない見積もり金額が算出される。増やさないように気を付けているものの、本やDVDは自分の血肉を成す財産だと思っているので基本捨てられない。タテヨコ2mという大きな本棚の半分以上は本とDVDが占めている。あとお皿。これも増やさないように気を付けているが、一時は旅先でお皿を集めるのが趣味で、ひとり暮らしでそう種類もいらないのに買い揃えていた。そこいらのオシャレ雑誌が特集する随分前から、波佐見焼は現地調達していた。

ひとり暮らしのいいところは自由に自分の持ち物を買い揃えられることで、悪いところは誰もブレーキをかけてくれないことである。

1年だけ都内に住んだことがある。それまで地方都市で40㎡前後(1番広い時で46㎡)のスペースをのびのび1人で使っていた私は、品川区内・築10年以内・駅から徒歩15分以内のその広さの物件の家賃を知り、青ざめた。いや、手取りの半分以上いってまうやん。会社からの家賃補助があったとて、それまで住んでいた土地の倍額である。そしてのびのびしたスペースに合わせ増殖していた、溢れんばかりの荷物たち。何とか30㎡弱で家賃の折り合いがつく物件を見つけ、5人の屈強なお兄さん達の手を煩わせ引越しの段ボールを全て運び込んだら、収納の鍵を握る本棚を組み立てるスペースがなくなった。どうやって最終形態に持ち込んだか、あまり記憶がない。

ミニマリスト。なぜ急にこんな言葉が浮かんだかというと、久しぶりに広めのビジネスホテルに宿泊しているからである。部屋にはダブルベッドとデスク、壁には嵌め込みタイプのTV、ユニットバスとトイレ。本当はこれだけあれば十分なのにね。まぁキッチンはないけどさ。あと必要最低限の衣類と3足くらいの靴さえあれば。一昔前の大物文化人には、晩年ホテル暮らしだった方もいる。料理しなければゴミがそんなに出ることもない。TVもAmazon primeさえ映れば、観たい映画に不自由することもない。

でも分かってる。次の日には本が3冊くらい増えてて、マガジンラックが必要になって、机の上にも“積読”が増えて…きっと1ヶ月後には今の自宅と同じ状態になっているのだ。というか「3足くらいの靴さえあれば」と言ってる時点で、既にミニマリスト失格である。入り口にすら立てない。

ミニマリストは一種の解脱状態だと思う。煩悩まみれの私はまだまだ到達できそうにない。

お読みいただきありがとうございました。今日が良い日でありますように。