「星降る町の物語」8章 窮地
アイリスは必死の思いで、大きく張り出した屋根によじ登ると、端っこの方で小さくなって身を隠しました。
「どこだ、探せ!」
「魔女を捕まえろ!」
「処刑しろ!」
恐ろしい声が聞こえてきます。
ついさっきまでの平和な学校が、まるで嘘のようです。
(私、そんなに悪いことを言ったの?)
アイリスは泣き出してしまいました。
「いたぞ、あそこだ!」
向かいの棟の窓から、学生たちが叫んでいます。
アイリスは恐ろしさのあまり、体が震えて動けません。
「静かに! みなさん、落ち着いてください!」
よく通る声が、狂乱した学生たちの動きを制しました。
「守護隊だ!」
「守護隊がきたぞ!」
皆は英雄を迎えるかのように、守護隊に声援を送りはじめました。
「魔女を捕まえてくれ!」
「この町の平和を乱す魔女を処刑しろ!」
ひとりの青年が、アイリスを見上げて叫びました。
「アイリスさん、心配しないでください! 危害を加えるような事はしません!」
「リリオ!」
「大丈夫ですか? 怖かったでしょう。学校のみなさんは少し誤解しているだけです。私と一緒に来てください。誤解を解けば、また自由になれますから。さあ、こちらへ」
リリオは優しく言いました。
しかし、リリオの後ろにいる守護隊の人たちは、アイリスに向かってボーガンのような物を構えています。
「リリオ、私……」
なにもしてないのに、と言いながら、アイリスは立ち上がりました。
「魔女が動いたぞ!」
「俺たちを油断させて、魔法を使う気だ」
ビシッ!
「いたっ……!」
アイリスは、腕を押さえて膝をつきました。
ボーガンの矢が腕をかすめたのです。
「矢が当たったぞ! 今だ!」
「おい、打つな!」
リリオはそう命令しましたが、魔女への恐怖で半狂乱になった部下たちは止まりません。
他の者たちも矢を放とうとした、そのときでした。
ガッシャーン!!!
ガラスが割れる、大きな音がしました。
時計台のある講堂の、一番大きなステンドグラスが砕けたのです。
矢を放とうとしていた守護隊も、学生たちも、皆、そちらに注意を引かれ、アイリスは無事でした。
「あれは、まさか……」
アイリスは、思い出していました。
(今度は必ず、俺が助けるから)
そう言って微笑んだ、金色の瞳の輝きを。
「リュー、なの?」
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