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【短編小説】涙雨の公園

【朗読】涙雨の公園


雨は、降り続いている……

なんで…ここに呼び出したの??

誰もいない公園は
ひっそり としていた


「幸せになってね…好きでした」
と過去形にした


アナタは、頷(うなず)き
振り返らず
傘を前かがみ に持ち
いそいそと去っていく…

たぶん何かを言ってくれたと思う
でも雨とワタシの心の雨のせいで
聞こえなかった


アナタの背中が滲(にじ)んでゆく…


思い出の公園はワタシの為に
涙を流してくれているようだった


「こんな時にまで強がって…
バカみたい…ワタシ」

バネが付いたパンダが微笑んでいた


「なに笑ってんのよっ雨に濡れてるのにさ…」

ワタシはバネ付きパンダに傘をさし出し、手で雨を はらってやった

「ワタシと一緒に泣いてくれたんだよね。ありがとう…」


声を上げ泣いた
泣きじゃくった…

滑り台やジャングルジムも
雨の雫を流して泣いていた


「皆んな ありがとう
しばらく来れないと思うけど…
次に来る時は笑って来るから 」

雨の公園に別れを告げ
ワタシは歩き出した

腫れ上がった瞼(まぶた)を傘で隠しワタシは歩き出した
新しい明日に向かって…

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