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【短編小説】剥がれ落ちる鱗

魔女からもらった小瓶を抱え
岬へと向かった

岬の周りは 激しく波打っているから
邪魔しに来る者はいない

私は 一気に小瓶の中の液体を飲み干した

ドクドクと身体中(からだじゅう)の血が脈打ち始める

熱い
ものすごく熱い

はぁはぁと荒い呼吸をしながらも
私は嬉しかった

これで[足]という物が手に入るんだ
そう思ったからだ

半年前、海辺で見かけた男性
あの人に 人間として会いに行ける

この薬は 副作用がないと魔女が言っていた

今までの薬は[足]を手に入れる代わりに[声]を失ってしまうという副作用があったのだ

まだ研究 途中ではあるけど ほぼほぼ完成らしい

動物実験では 成果が出ているそうだ
だから 無料で分けてくれた

なんて優しい魔女なんだろう

鱗(うろこ)が ボロボロと剥がれ落ちる

ああ、人間になれるんだ
これで 私も ついにっ!!

ボロボロ…
ボロボロ…

剥がれ落ちた先から
真っ赤に腫れ上がり
爛(ただ)れ 化膿(かのう)し
猛烈な痒みが襲う

私:
「痒いっ!痒いっ!」

掻きむしったそばからヒリヒリ ズキズキと痛む

私:
「痛いっ!痛いっ!助けてっ!」


魔女が 私の鱗(うろこ)を拾い集めていた

私:
「早く助けてっ! 足を私にちょうだい!」

魔女は 聞こえてないのか
私にお構い無しに 夢中で拾っている

私:
「ちょっとっ魔女さんっ 話が違うじゃないのっ!足が手に入るなんて嘘だったのねっ!」

魔女:
「すっかり騙されてバカな娘だことw
人魚の鱗(うろこ)は貴重だから高く売れるんだよ。ほら、綺麗だろ?」

ニタニタと笑う魔女

私:
「騙(だま)され…た…」

私の意識は途絶えた

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#文披31題
Day.15 岬
Day.17 半年

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