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好き嫌いの落としあな。

2年ダイビングを続けていると、好きな生物が増えてきた。

好きな生物

たとえば、水温が低い、この時期にしか現れないダンゴウオ。

てんとう虫ほどの大きさで、とてもちっさい。からだの色は、葉っぱと見分けがつきにくく、探すのに一苦労。やっとの思いで見つけた、ダンゴウオがこちら。

とぼけたような表情が、なんとも愛くるしい。時々口を大きく開け、あくびをしていたり、フヨフヨ泳ぐ姿がさらに心をくすぐる。

嫌いな生物

中には嫌いな生物もいる。それがこちらの、アメフラシ。

初めて出会ったときから、わたしには、黒こげのなめくじにしか見えない。

なめくじを、20倍に拡大したような姿と動きが、どうしても好きになれない。触り心地も、やっぱりなめくじに似ていて、ヌルヌルした触感が、ゾワっとする。

私には、アメフラシをこよなく愛する友人がいる。彼女いわく、「あのつぶらな瞳が、本当にかわいいんです!」とのこと。あらためて観察を試みたが、やっぱりダメだ。かわいさなんて、さっぱりわからない。

謎の物体、タマゴ麺

ある日のダイビングで、私はこんなものを見つけた。

え、タマゴ麺?

この不思議なタマゴ麺は、水中のあちこちで見かけた。一体、水中で何が起こっているんだ。まさか魚も、たまにはラーメンでも食べたくなったのだろうか。(んなわけない)私の頭の中は、クエスチョンでいっぱいだった。

とりあえず写真におさめ、陸上でタマゴ麺の正体を確認した。

「あ、これアメフラシのタマゴだよ」

はい?あのアメフラシが?

あのまっ黒な身体から、黄色い美味しそうなタマゴ麺を産むとは。私にはそのギャップが、ギャグにしか思えなかった。

そしてもうひとつ、まさかの新事実。

「たまごを産んだら、ヒトデに食べられて死ぬんだって」

え、ええぇーーーー!

アメフラシの方がヒトデよりも何倍も大きいのに、食べられて死ぬなんて。タマゴ麺を産んで、子どもの顔も見ずに、死んでいくなんて…。

弱肉強食はわかるけど。でも、そんなの悲しすぎる。

なんでヒトデなんかに食べられるんだよ!もっと頑張れよ!!お前のほうが生物らしいじゃないか!!!

私はいつしか、アメフラシを応援したい気持ちになっていた。

これって「100日後に死ぬワニ」を読んでいたときの感情にちかい。


それからというもの、アメフラシの行動と、生存状況が気になって仕方がない。

「お、昆布に乗るなんて、イカしてるねえ」(ダイビング中の心の声)

今では、あんなに嫌っていたアメフラシが、ウソのように可愛く見える。10分以上、観察した日があるほどだ。あの「嫌い」という感情は、どこへいったのか。

アメフラシは、そんなことなどつゆ知らず、わかめをモシャモシャ食べていた。

好きの嫌いは紙一重?

私はアメフラシを好きにも嫌いにもなった。そもそも本当に嫌いだったのか、今となっては定かでない。てか、なめくじに似ているから嫌いって、なんやねん。その理由。


アメフラシは何も変わっていない。変わったのは、私の見方だ。


「好き」と「嫌い」は、なんだかサイコロに似ている。「好き」とは、サイコロの目が、偶然、自分の好きな数字だっただけ。「嫌い」とはその反対で、たまたま、自分と合わない数字がでただけで。サイコロ自体はなにも変わらない。

だからもし、嫌いな目がでたら、無理して好きになる必要はないと思う。それよりも、サイコロを転がして、いろんな面に触れて、見つめて、感じでいく。ただそれを繰り返す。

すると違ったセカイが見えるかもしれない。


そんなわけで。アメフラシさん。私は、またキミに会いたいです。ヒトデに負けないでください。

わぁぁーーーー!!が、、、頑張ります!!