第一話☀︎「引越ししました」

春の日差しが気持ちいい日曜午後の三軒茶屋。

あ、どうも初めまして、今年で29歳になります、アラサーのおのはること小野寺遙です。先日約4年住んだアパートを去り、新しいマンションに引っ越しをした。前住んだ場所から徒歩3分の場所になる。エリアは三軒茶屋。
「え、引っ越しした意味あんの?」って会社の人にツッコまれたのですが、契約更新日が近づいていて、なんとなく部屋を変えたいのそれだけ。要するに気分転換的な? 三軒茶屋エリアが便利すぎて、一度住み慣れてしまったら、ここから出られないのだ。前に比べて、キッチン周りとクローゼットが広くなって、オートロックもついた。部屋はひと回り広くなった。

まだ引越しをしてまもなくて、荷物が散らかってはいるんだけど、徐々に片付けていけば良いか。買ったばかりのカーペットの手触りが気持ちよすぎて、寝っ転がっていたら、開けっ放しのベランダから声が……。お隣さんは女性なのか。声のトーンから聞いて、彼氏と電話しているのかな。んーでも何か愚痴を言っているようにも聞こえる。ダメだダメだ聞き耳をたてるなんてだめ! せっかくだし、挨拶でもしに行ってみようかな。挨拶するなら何か手土産渡さないといけないかな。晴れているし、暇つぶしにがてら野口さんのところに行ってこようっと。準備をして、マンションを出た。

なかみち街にある磯丸水産やおしゃれな居酒屋のテラス席で昼から飲み始めている人がいて、あぁこの街はなんて平和なんだろう。三軒茶屋の象徴、キャロットタワーが見えてきた。首都高速道路が通っているどうを渡り、歩行者天国になっている茶沢通りを歩いていく。3本目の通路を左に入り、奥に入っていくと、ひっそりと経営するカフェTOMOSHIBIに入る。窓越しから、野口さんの後ろ姿が見える。

「こんにちわ〜!」

野口「いらっしゃい。」

続く。