23日目 どこへ行っても嫌われちゃう人


って、いるんだなあ。


人が20人も集まれば一人ぐらい合わない人がいる。そして、そういう人はみんなにとって合わない人だったりする。周りが精神的に大人であれば受け入れてもらえるけれど、世の中そんなに優しくない。学校や会社のように閉じた世界であれば、なおさら優しくない。このスクールでも、「みんなに合わない人」、つまりみんなに嫌われちゃう人がいた。


彼女はインド系イギリス人なので、見た目はインド人。生まれも育ちもロンドンなので、ヒンズー語より英語の方が流暢だった。でもその英語はイギリス訛りとインド訛りがきつくて、アメリカ人でも理解するのに何度も聞き返していた。各地域の訛りネタで盛り上がった時、彼女だけ自分の訛りを馬鹿にされたと本気で怒っていた。同じく訛りのきついカリフォルニア出身の女子高校生がやれやれまた始まった、という仕草をした。

彼女はプライドが高く、気が強く、そして劣等感も強かった。私は彼女と一番仲が良かった(というか一方的に話しかけてきた)けれど、そのきっかけは彼女が「あなたも同じアジア人ならわかるでしょ?先生は白人の若い女ばかり贔屓してる。私たちのことはちっとも気にかけてくれない。本当に男の先生ってしょうがないわよね」という言葉だった。私は言われるまでそんなこと感じたことなかった(確かに注意してみると、白人の若くて可愛い女の子に甘い気もしたけれど、それは見た目というより彼女たちのキャラが可愛いからであって)。そのあとに「私はここにいる誰も信用していないけれど、貴女だけは信用してるの。立ち振る舞いがちゃんとしていて、友達になりたいと思ったの。他の奴らはどうでもいいわ、あの人たちは悪口ばかり言ってて生産性がないもの」とほとんど話したこともない私に先生とメンバーの悪口を懇々と語ってくれた。帰り際、「そういえば貴女、ドライヤー持ってるって言ってたよね?悪いけど、貸してくれない?日本人はサラサラだけど、私の髪は癖っ毛でドライヤーがないとパサパサなの」と言ってきた。友達になるのが目的なのかドライヤーを借りるのが目的なのかわからなかったけれど、新しい視点の話が面白かったのでとりあえず貸した(そこから3週間ほど、貸し借りをすることになってしまった)。
同じ環境なのに見ている世界が全然違っていて、この人の世界を生きるのはしんどそうだなぁと思った。


数日経つと、彼女は確かに利己的で口が悪くて面倒臭い人なんだということが言動の端々から感じられた。昨日まで「あの女、嫌い!」と騒いでいたのに、その人から優しい言葉を掛けられた次の瞬間「あの人良い人ね、彼女と貴女がベストフレンドだわ」と急に手の平を返す。ヨガの実習では「チームのことは関係ない、自分のやりたいところだけをやる!」と言ってチームメンバーの反感を買う。「先生は私のこと無視するわ!」と先生本人に向かって騒いで、10歳年下の女の子に「これだけ人数がいるんだから仕方ないでしょ」とたしなめられる。実害がなければある意味可愛い性格で、一挙一動がコミカルなので生暖かい目を向けて見てられる。イヤイヤ期の小さい子みたいだ。だけど、子どもの素直さや可愛さといった長所は一切ない。どこへ行っても嫌われる人の特徴って、世界共通なんだ。



一度、彼女が本音を言ってくれたことがある。

「私は自分のことしか考えていなくて、いつもイライラしていて、ヨガが教える心の平穏なんて程遠いの。直そうとしているのに、治らないの。」

ここから先は

946字
インドでヨガをしようと考えている人、ダラムサラへの旅行を考えている人、旅エッセイを読みたい人、色々な考え方に触れたい人に。

全米ヨガアライアンスの資格(RYT200)が格安で取れると聞いてインドに1ヶ月ヨガ合宿した話。ヨガ初心者、英語日常会話レベルLow、カルチ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?