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【書籍】自閉症児と絵カードでコミュニケーションPECSとAAC 【レビュー】

 合同会社はびりSPOTのCOO(児童発達支援&放課後等デイサービスで言語聴覚士・保育士の支援者)による書籍レビューになります。
 日々講習や書籍などで学んだことをアウトプットし、学ぶことの大切さや療育を全てのお子様に提供できたらと思いつつ、少しでも役立てられるよう書き綴っています。

まとめ

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はじめに

 この本は訳書であり、PECSを開発した方の考えに触れることができる数少ない日本の書籍の一つであると言えます。
 別で紹介しようと考えていますが、『絵カード交換式コミュニケーション・システム トレーニング・マニュアル 第2版』という本があります。
 こちらの本は今回紹介する本より実践的かつよりPECSについて事細かく詳細に書かれており、マニュアルという名にふさわしいと思われます。
 それとは別で今回の本は、他の拡大代替コミュニケーションについても触れており、PECSだけでなくコミュニケーションとは何なのかといった根本的な部分にも触れることができると感じました。

どんな人におすすめなの?

 実例を豊富に挙げられており、わかりやすくできていますが、所々行動分析に関係する用語や言語機能について触れており、コミュニケーションについての学問を学んだことがない方にはハードルが高いかもしれません。
 特に読みやすいと感じる方は発達心理学、行動分析学などを学んだことがある方や言語聴覚士公認・臨床心理師、行動療法士などといった資格をもっている方でしょうか?
 といっても200ページに満たない程度でAACという広い括りでの話から進められており、結局PECSの話に繋がるのですが、PECSだけでなく他のAACについても語られているので導入として分かりやすく書かれているように感じました。

おすすめポイント

 PECSを他で知って、少しやってみようかなという方には丁度いい難度ではないかと思います。
 自閉症の方とのかかわり方がよく分からないといった方や、問題行動に対応で苦慮している方に、対応方法に対する根本的な考え方を知るきっかけになるかもしれません。
 その考えの一つとして問題行動と表現されがちな言葉を筆者はチャレンジ行動と言い換えており、この意味合いは我々がコミュニケーションに困っている人たちの行動を変えるチャレンジをするという意味だそうです。
 私は環境に適応できないために起こるという意味で問題行動は不適応行動と呼びがちですが、前向きな言葉としてチャレンジ行動も使っていきたいと考えています(影響されやすい
 その他にも学習とは行動を変えるものといった考え方があり、例えば新しく学んだ漢字が書けるにようになるのも行動変容ですし、社会で歴史上の人物を覚えて答えれるようになるのも行動変容と捉えられますね。
 私なりの解釈ではありますが逆を言えば行動を変えれないものは学習とは言えないものとし、常に子どもの成長(行動変容)を起こせるよう学びある時間を提供できたらと受け取った次第です。
 学習の話はコミュニケーションとは少し離れますが、コミュニケーションの本質に迫る考えにいくつか触れることができる本だと思います。

感想

 AACの一つであるPECSは行動分析学に基づき、さらにエビデンスがあり、高い確率でコミュニケーションを成立させる手段ではあると言えます。
 しかしその手段をPECSに限定する必要はなく、コミュニケーション手段の一つとして考え、その子がコミュニケーションが取れるのであればそれが一番の方法であるようなことを筆者も仰っていました。
 今回PECSの考え方にあったコミュニケーションを手段と機会の観点からお話させてもらうと、まず手段に関してはある程度の手助け(プロンプト)が必要な場面が散見されると思います。しかしこれに関してはやりすぎてしまうと、コミュニケーションを取る機会を奪ってしまうことにもなりかねないことが書いてありました。
 手助けは言葉の通り手を貸すだけでなく口頭指示、目線、表情、こちらの身振り動作、など多岐に渡った意味があり、我々は知らずに手を貸してしまうことで本人がそれを頼りにし、それがなければコミュニケーション(行動)が取れない可能性があります。
 自分から自発的に動ける子なら問題になりにくいと思いますが、受動的な子であればあるほど気を付ける必要があるのではないかと感じる所です。
 機会に関しては人的環境だけでなく物的環境も常に本人に分かりやすい形になっていることで、周囲に助けを求めるというコミュニケーションの機会を損失しているかもしれません。
 とは言うものの分かりにくいことや不安に感じる環境により本人の不適応行動を誘発する可能性があり、そうなると本末転倒なのですが、こちらがコントロールできるレベルで、本人に解決できるレベルのほんのちょっとのストレスが常に作り続けられることが、本人のコミュニケーションを伸ばすことに繋がるのではないかと読んでみた感想になります。
 当施設にもピラミッド社でPECSを受講した言語聴覚士がいるので(私です)もし頼りにして頂けたら実践的なフォローを行いたいと考えています。

書籍情報

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注意:第2版が2020年に販売されています
著者:アンディ・ボンディ/ロリ・フロスト
訳者:園山 繁樹/竹内 康二
出版:(有)二瓶社
発行年:2006年7月31日(初版)2015年6月10日(第5版)
目次:
第1章 コミュニケーションとは何か? 
第2章 コミュニケーションというコインのもう一つの面:理解
第3章 話すことができないのか?コミュニケーションができないのか?
第4章 なぜ彼女はそうしたのか?行動とコミュニケーションの関係
第5章 拡大・代替コミュニケーションシステム
第6章 絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)
第7章 PECSの上級レッスン
第8章 理解を促すための視覚的方略の活用

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