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ゼニガタアザラシの起源

 ゼニガタアザラシの起源について書籍『ゼニガタアザラシの生態と保護』の知見を参考に、仮説を立てて私なりに考察してみた。
 ゼニガタアザラシ(以下、ゼニガタ)とゴマフアザラシ(以下、ゴマフ)は、別種とされているが、形態の変異は大きな差がなく、両種の成獣の体色変異の重複から、雑種らしい個体を私は学生時代のフィールド調査で何度か見かけている。また、飼育下では、交配し雑種も産まれているが、野生下では、繁殖期がずれているために、交配しないと言われている。しかし、この繁殖期も、重複する時期が若干ある。

 ゼニガタとゴマフは、行動が大きく異なり、ゼニガタは岩礁に上陸・繁殖するのに対し、ゴマフは流氷の上で繁殖し、新生児の体毛は白い。一方、ゼニガタは、岩礁で繁殖するため、保護色として、白い体毛は母親の胎内で抜けてから産まれてくるが、一定数、白い新生児毛が残って産まれてくるものもいるらしい。

 ゼニガタは、比較的最近、ゴマフから分化したと言われている。このため、新生児毛が白い個体が産まれてくることがあるのは、ゴマフの名残ではないかと言われている。また、ゼニガタの斑紋の変異は、アリューシャン列島の北へ行くほど白い個体が多くなり地理的クラインになっていることが報告されている。そして、北へ行くほど、ゴマフと判別できなくなると言われている。

 ゼニガタは、その起源が判っていないが、ここからが、私の疑問と仮説である。ゼニガタは、いつ、どのようにして、ゴマフから分化したのだろうか?
 氷期には、流氷が今より多く、ゴマフももっと数がいただろうし、岩礁に上陸し繁殖するようになったゼニガタは、どのようにして岩礁に上陸し、ゴマフと分化したのだろう。
 氷期には、本州にまでゴマフは分布していただろうし、ゼニガタの起源は、北海道ではなく、南方かもしれない。また、別種なのか別亜種なのか、種がはっきり分化していないような気がする。

 ガラパゴス諸島の『フィンチの嘴』という書籍を読んでも、一度、分化した種が環境の変化によって、また元の1種に戻るという報告があるが、ゼニガタとゴマフは、今の環境が続けば、僅かずつ分化が顕著になるかもしれないが、また氷期になれば、元に戻るかもしれない。

 分化した理由の、私なりの仮説だが、ゼニガタは、間氷期の間に、何らかの理由で、流氷とともに北上するゴマフ個体群から取り残された「あるゴマフ個体群」が、陸上に上陸・繁殖するという行動変化を余儀なくされて、種分化したのではないだろうか。
 とまあ、素人なりに、仮説(空想)してみた。今後の解明を期待するテーマである。(トップの写真は、Wikipediaより)。

【参考文献】

『ゼニガタアザラシの生態と保護』東海大学出版会 (1986)

『フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌』 早川書房 (2001)

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