「おおかみこどもの雨と雪」の感想
「おおかみこどもの雨と雪」の個人的感想を述べる前に、断っておきますが、細田守監督のアニメーション映画はこれまでもいくつか観てきており、私は細田守監督の作品がとても好きという立場の人間です。
「おおかみこどもの雨と雪」も、大好きな作品だけど、以下に述べる私の感想は、この作品を「現実的に考える」と疑問が沢山わく作品だという感想を述べたいと思います。★以下、ネタバレ注意★
現実的に観るとわいてくる沢山の疑問
【疑問①】母親の花は、親の援助がなく(父親はすでに他界)、国立大学に奨学金を借りてアルバイトで学生生活を送る苦学生。それなのに、在学中に、2子の子どもを出産するという無計画さ(避妊していなかった?)。父親がオオカミ男なのはアニメなのでいいが、父親は肉体労働をしており低収入。籍も入れておらず??、事実婚といういい加減さ。
【疑問②】オオカミ男の夫が事故死した後、生活に困り果てた花は、田舎へ引っ越す。大きなボロボロの古民家を花1人で修繕していたが、あれは女1人で短期間での修繕が不可能なレベル。あれだけ古くて大きな古民家は、通常、修繕費の方が高くつく。業者委託しないで自分でやるなら修繕費は安く済むが、相当な時間がかかるし、女一人では不可能。
【疑問③】花は少ない貯金で子育てを始めるが、節約するために自給自足で、畑を耕す。あの面積の畑を耕すのは、近所の爺さんのアドバイスだけでは女性一人で不可能な広さ。あの畑で作物を作る労力より、アルバイトをしに行った方が収入には確実になるはずが、なぜか畑で自給自足が成り立つ設定。
【疑問④】雨が小学校に上がった頃、山について知りたがる雨のために、花はネイチャーセンターで自然ガイドの補佐という低賃金のアルバイトを始める。高校生のアルバイトより時給が低いと面接官にも言われた仕事に就くが、その後、どうやって生活が成り立ったのか?
【疑問⑤】花は、田舎に引っ越した当初、車を所持しておらず、自転車で買い物に出掛けていた。それなのに、雪が小学校3年生くらいの頃、赤いジムニーを購入している。ネイチャーセンターで自然ガイドの補佐という低賃金のアルバイトの収入だけで、どうやって車が買えたんだろう?
【疑問⑥】冬に、大雪が積もり、花も雪も雨も親子で大はしゃぎする。しかし、あの広い古民家の庭に積もった雪かきは、どのようにしたのだろう?北海道でも一軒家に住む最大のデメリットは、冬場の毎日の雪かきという重労働である。あの古民家の広い庭の雪かきは、女1人では不可能である。雪かきしなければ、玄関の戸もふさがれてしまい、家から出れなくなるし、買い物にも学校にもいけなくなる。※近所の人が手伝ってくれたのだろうか?
【疑問⑦】雨は、山に自分が生きる場所を見つけ、10歳で自立してしまう。オオカミとしてはそれでいいのですが、人間社会から見ると、学校にも通っていた10歳の男子の失踪事件となってしまっている。花は学校や役所、近所の人に雨がいなくなった理由をどう説明逃れしたのだろう?警察と児相介入の母親の虐待が疑われて事件化しても不思議でない10歳児の失踪事件となってしまっている。
【疑問⑧】花は、奨学金を借りて国立大学に通っていたが、2児を在学中に産み、大学を中退している。奨学金の返済だけ残って、学歴は高卒。せっかく国立大学に入学したのに、超・無計画である。その後、返済できる職にも就いていないし、娘の雪はまだ中学生になったばかり。これからがお金が沢山かかる年齢になるのに、収入源が謎である。
いくつかの疑問点をあげたが、「おおかみこどもの雨と雪」は、ファンタジーとして観るととてもいい作品で安心して楽しめる作品だ。しかし、この作品を現実世界とリンクさせて観ると、上記のような疑問が沢山わく作品なのだ。
細田守監督の最新作「竜とそばかすの姫」の感想も以下に書いたが、現実世界で起きている社会問題(児童虐待)を作品の中で取り上げるなら、もっとよく下調べをした上で映画に取り入れてほしかったと当事者の私としては思った。’’トレンド的’’に児童虐待を取り入れるアニメーション映画が増えている気がするが、当事者が観るとどう思うか?当事者が更に傷ついたり、社会的無理解に遭っていかないか?など、細心の注意をはらって作品を描いて頂きたいと思っている。今後に期待している。
虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!