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居場所づくりの失敗事例

私が虐待サバイバーの活動を始めたのが、今から3年前の2018年でした。それより前の約4年半前、 社会に欠けている「大人の支援」がしたいと思い、空き家を借りて、「大人の居場所」づくりを北海道室蘭市で始めました。 個人事業主にはせずに、ボランティアとし、居場所を運営していたのですが、結果、失敗に終わりました。

しかし、やってみて様々なことを学ぶことができ、今後の活動に活かしていきたいと考えています。まず、居場所の当時の写真とコンセプトの紹介を簡単にします。

30代以上が懐かしい昭和ルーム

居場所1


高齢の方が交流できる囲碁や将棋

居場所2


30代以上が懐かしいファミコンなどゲーム

居場所3


漫画や書籍

居場所4


100円でカップ麺のみ飲食可とした

居場所5

お休みどころ。居場所とは一人でいたい人のシェルターも必要

居場所6


学んだこと①【仲間の存在がなかったこと】
社会的に困難を抱えている大人は、社会に多くいると思いますが、ほとんどの方が、カミングアウトせず社会生活を送っているため、一緒に活動する当事者の「仲間」がほとんどいなかった。このため、計画性がない部分が出てきたり、自分が常に居場所にいなければ成り立たなくなった。

学んだこと②【社会の大人の支援への無理解】
子ども食堂が全国各地で出き、学習支援などもなされるようになっていますが、子どもの支援といえば、多くの賛同者が現れる一方、大人の支援と言えば、社会の反応が非常に薄いことが分かりました。
これは、私自身が、ホームレス支援団体の方に同行させてもらったとき、その支援者に「社会は、大人の貧困に冷たい」という意見をもらったことからも、その通りなのだと思います。
子どもには責任はないけど、大人はどんな子ども時代を送っていても、「自己責任論」が非常に強いのです。
なので、メディアにも居場所を取材してもらって、新聞記事に対する市民からの反応はありましたが、応援したいけれど「関わりづらい」という声が少なくありませんでした。

学んだこと③ 【当事者だけど居場所へ行けないという電話】
これも数件ありました。当事者の方から、居場所に行きたいという連絡はあったのです。しかし、田舎だったということもあり、居場所へ行けば、自分が何か、精神的な病や困難な問題を抱えていることが、地域にばれてしまうため、噂になることが嫌で興味はあるけど、行けないという電話です。

学んだこと④【受け入れる対象を「よろず」にしてしまった】
これには、受け入れる側の私は、どんな相談者が来るか分からないというデメリットがありました。さすがに何でも相談に乗れるだけの知識も経験も当然ありません。
そして、この居場所を新聞で知っても、「居場所でどんな支援をしてくれるかが不明」という意見です。「よろず」にしてしまうと、支援してもらいたい側は、何をしてくれる場所なのか、非常に分かりにくいという声が少なくありませんでした。

なので、現在、私は、貧困や精神的な心の傷を抱えていますが、その原因は、子ども時代の虐待被害の体験なので、活動のテーマを「大人の虐待サバイバー」の啓発一つに絞っています。

学んだこと⑤【ボランティアの完全無料という欠点】 
困っている人が対象ですから、基本的にお金のない方が多いわけです。それで、ボランティアで無料にしたのですが、支援する側の私の生活が成り立たない。つまり、続かない活動となったのです。これは、NPOなど助成金に資金面を頼っている団体も、どこも抱えている一番の問題かと思います。
また、無料にすると、利用する側が、勘違いを起こすというデメリットが少なくありませんでした。 
「いつでも何でも無料でしてくれるボランティアさん」という、認識にどの人もなっていき「依存傾向」が現れました。
例えば、医者だったり弁護士だったり、お金を払って何かをしてもらう場合、利用する客側も、してもらえるのはここまで、という常識的な判断ができます。利用者が、相手との境界線が見えやすい方が支援は安定的にうまくいくのです。
しかし、無料というのは、利用者側は、どこまでしてくれるのか、という線引きがないので、どんどん依存してくるようになり、こちらの境界線が侵害され、私が精神的にも時間的にも、潰されるようになっていきました。
お金を介在するというのは、お互いが適切な距離感を持ち、安定した関係を築くために必要なものだということを学びました。

学んだこと⑥ 【新聞などマスコミに出ること】 
新聞社はできるだけ、メジャーなところが良いですが、一番大事なのは、「記者」です。同じ内容を話しても、書く記者によって、全く異なった記事が出来上がります。記者を選ぶことと、良いマスコミとの繋がりを持っておくことの大切さがあります。
また、自分の地域でメジャーな新聞であっても、デジタル版にならなければ地域限定の情報発信となってしまします。
それならば、購読者が少ない新聞社であってもデジタル版の記事にもなるなら、一過性ではなく長期的に読まれますし、ネット記事になれば全国の人が読むことができます。デジタル版を意識しましょう!

学んだこと⑦【アンチを減らすための「発信」の工夫】

貧困女子高生が、NHKに出演し、貧困を訴えたけれど、ネット上で、貧困ではない、と揚げ足を取られ、バッシングが大炎上したことがあります。
「発信」というものは、ある種の力があるものです。例えば、オリンピック選手が、金メダルを獲ったとき、必ず言う言葉があります。
「皆さんの応援のおかげで、金メダルが獲れました!」。この言葉の意味は、アンチを減らすためです。
「自分の努力と才能で、金メダルを獲りました!」と言えば、真実だったとしても、バッシングされます。

不幸の発信も同様なのです。
「自分は過去に虐待されて不幸だったけれど、誰かの助けがあり、今は前向きに社会のために貢献したいと思っています」というような、不幸を発信しつつも、必ず、「感謝と前向き」をセットにした発信をしなければ、応援よりも、敵の方が多くなることもあります。

学んだこと⑧ 【空き家という物件のデメリット】 
この居場所は、たまたま、室蘭市でできた知人からの紹介で、高齢者の方が施設に入っており、もう使わないからということで、格安で借りた物件でした。 
今、空き家問題は、全国的な問題になっていますから、活用の余地はこれからもっと増えるでしょうが、デメリットもありました。
それは、空き家という一軒家は、元々、賃貸目的で建てたものではないということです。つまり、大家さんの都合で、立ち退きをしなければならなくなることも、充分に出てくるということです。

買い取るのであれば、何をしようと自由だし、来年の心配はいりませんが、賃貸で空き家を借りるということは、いつ出て行かなければならなくなるか、分からないというデメリットも大きいということです。
これらの経験を踏まえて、居場所をやりたいと検討されてる方の参考に少しでもなれば幸いです。

また、私の専門が野生動物で、学芸員の経験もあったこと、助成金で有害駆除されて致し方がなく駆除された個体をもらいうけ剥製師に依頼し、環境教育用の剥製を助成金で作っていました。なので、大人の居場所には、子どもたちも遊べる・学べるような生き物を使った『環境教育』ルームも併設しました。多様な部屋があると、多様な世代のニーズに応えられると思います。

剥製の居場所


虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!