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アイスランド一周ロードトリップ | 人間を凌駕する自然美

アイスランド一周中に感じたこと

今、夏休みをいただいて、アイスランドを車で1周しています。

南西の首都レイキャビクから出発して7日間で約2,000キロの旅路。
アイスランドには、Ring Road というアイスランドを外周できる有名な車道があります、このドライブが本当に最高なのです。(画像参照)

ちなみに今日は、温泉で、一人でテントを張って同じ距離を旅しているノルウェーの女の子に出会いました….つよい、流石すぎる。

各拠点で圧巻の景観・そしてビールと共に温泉に入れるのも、日本人たる私にとっては最大の魅力ポイントです。

サンセットを見ながらの温泉。
温泉の中にバーがあるのが粋すぎます
出所: ZigZag on earth


アイスランドは近年特に観光国として盛況で、欧州は勿論米国からの観光客も多いのですが、自然が圧倒的すぎて、どこをドライブしても”in the middle of nowhere”を感じることができます。

自然環境に対してひたすら人が少なく、こんな広大な土地があれば豪邸だって建てられるのに、ポツンとに質素に慎ましく佇んでいる「大草原の小さな家」
アイスランドのひとびとの価値観を感じます。 

今回は長い長いロードトリップの中で感じたことを、フレッシュなうちに書き留めておこうと思います。

複数投稿になりそうですが、まずは私が肌で感じたアイスランドの自然美について、抽象的に。

もうこれは、どれだけニヒルな人だってポエマーにならざるを得ない、圧巻の美しさです。熱が冷めやらぬうちに、存分にここでポエマーさせていただこうと思います(笑)

刻一刻と変わりゆくアイスランドの表情

ロードトリップの道中、これまでは目にしたことなかったような限りなく悠大でありながら、全く異なる顔を持つ自然に、毎分毎秒、圧倒されっぱなしです。

  • 脅威的でありながら、apocalypticで寂莫とした自然。
    (実際にインターステラーのほとんどシーンも、アイスランドで撮影されたそう。)

  • 霧に包まれたミステリアスで神秘的な自然。

  • 人をまるごと優しく包み込むような広大で、牧歌的な自然。

どこを切り取っても、ロードオブザリング等の大作映画のワンシーンのよう。

アイスランド1周をドライブをしていると、少なくとも1,2時間ごとに天候、風景並びに色味がガラリと様変わりします。

例えば、分厚い雲で覆われた苔岩だらけの山道を抜け、気づいたら、今度は雲1つのない快晴の空が広がり、小川がキラキラと流れている風景に突入したり。

濃霧立ち込める山道に入っていき、走っていくと突然神の如く、ほんのりと一縷の強烈な太陽の光が垣間見えてきます。

刻一刻と全く違った表情を見せる天候と自然。

太陽だけではなく、雲や霧さえもこんなに私たちの感情を突き動かす原動力になりえるのかと、ハッと気づかされました。

ゆえに、アイスランドの自然が創り出すカラーパレットはこんなにも多彩です↓

緑グラデ: Kirkjufell(アイスランド北西部)
灰色と緑: Lögurinn湖(アイスランド東部)
茶色と抹茶: Folaldafoss (アイスランド東部)の苔に覆われた山
茶色マーブル: Námafjall Hverirの火山
水色マーブル: 同上 (何と同じ所!)
水色と白: ヨーロッパ最大のヴァトナヨークトル氷河(アイスランド南部)


オレンジ・茶色: アイスランドのサンセットタイム


どの色彩も、パントーンでは指定できない、そして言語化できないような、多様な色味が奇跡のように織り重なって生まれたグラデーションで、唯一無二の色彩です。

そして、世紀末のような真っ茶色の風景にポツンと咲いている、黄色い花のようなアクセントも所どころあって、それもまた胸をつかまれるような愛らしさ。

色味だけではなく質感も多様で、改めて自然が織りなす美に圧倒され、人の作為では到底辿りつけないような領域だと感じる限りです。

星野道夫さんが語っていた自然美の違い

ちなみに私は、この旅に、もう何回読んだかわからない、かの有名な自然・野生動物の写真家 星野道夫さんの「旅をする木」を持ってきました。

アイスランドはアラスカとは勿論全くもって違うのですが、その本にこんなフレーズがあり、勝手ながら共感しました。

星野道夫さんが、出張でオーストリアのザルツブルグに滞在している際の言葉です↓

ぼくはこの旅で、どうしてアラスカにはスイスやドイツから観光客が多いのかわかりました。数日前、友人とザルツブルグ郊外の山に登ったのです。

けれどもアラスカから来ると、ヨーロッパアルプスは箱庭のように小さく見えます。とても美しいのですが奥行きがないのです。

ホッとさせてくれる自然ですが、人間を拒絶するような壮大さがないのです。
ヨーロッパの人々がアラスカに惹かれるのは、本当の野生の自然を求めてやってくるんのですね、そのことが身にしみてわかりました。

星野道夫「旅をする木」

本格的な自然愛好家や登山家でもなければアラスカに足を運んだことがない身で、もう完全に「わかった気になっている」だけなのですが、星野道夫さんのこの言葉のエッセンスがほんの少し理解できました。

誤解してほしくないのは、スイスの自然がアイスランドの自然と比べると美しくない、つまらないと言っているわけでは決してありません。スイスの自然も全く別の魅力であふれていました。

そもそも自然美はその土地の文化などと対話しながら生まれるような個性があって、相対化・比較するものではないと思います。(詳しくは後述)

例えば、日本にも北海道や長野、富山、沖縄などをはじめ、日本が誇るべき、日本にしか生み出せない自然美も私はたまらなく好きです。

スイスは「平和」が体現された自然

それでもなお、この対比はごもっともだなと思いました。

私は7月にスイスを旅行しましたが、確かに夏のスイスはとにかく「平和」が体現された自然だったなと。(もしかしたらスイスが永世中立国だというバイアスもあるかもしれません笑)

キラキラしたエメラルドグリーンの湖に、新緑の山、そして統一感のある茶色の綺麗なログハウスと色とりどりの花。あまりに出来すぎている、夢の中、絵本の中にいるような気分でした。

英語で言えばSerenityということばがぴったりな、日本でいうと軽井沢をさらに夢のような空間にしたような感じです。
それもまたうっとりするほど美しくて、心落ち着く、healingな空間です。 

スイスのKandenstag
スイスのOeschien 湖

アイスランドは「人間を拒絶するような」自然

一方、アイスランドには、星野道夫さんがまさに語っている「人間を拒絶するような壮大な自然」があると感じます。

人間なんて全く眼中にない。

火山や川、大地がそれぞれありのままに活動し、必死に生きて、互いに共生している世界を目の当たりにすることができます。粗野で荒いのに、それが奇跡のように美しい。

月並みな表現ですが、このような壮大でダイナミックな風景を見ると、自分の仕事の悩みなんて本当にちっぽけに見えてしまう、圧倒的なパワーを持っています。


ゴールデンサークルのGullfoss

ちなみに同様の書籍で、こんなフレーズもあります。取材で東京からアラスカの星野道夫さんの元を訪れた女性のひとことです。

東京での仕事は忙しかったけれど、本当に行ってよかった。…私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと。

星野道夫「旅をする木」

私も、仕事で大変なことがあったら、深呼吸をして、
「あーこんなドタバタしている間に、Ytri Tunga で見た野生アザラシは今日も絶妙なバランスで岩の上でひなたぼっこしているのかな」
… 等と思いをはせて、諦念を取り戻したいと思います(笑) 

Ytri Tunga (アイスランド西部)の野生アザラシ!

自然そのものではなく、自然を見て感じたことを比較する


長い長いロードトリップ中に、旦那にちらりと上記の自然美の違いについて話した際に、面白いことを話しました。

この星野道夫さんの比較は正しいものの、そもそも自然は比較や相対化できないのではないか?という上述の話です。

勿論自然は単体の「海」や「山」からなるものではなく、様々な要素の集合体・コンポジションであって、そこには人の営みや文化なども入ってくる。

例えば、AよりもBの方が海が透き通っているから、山が高いから、生態系が豊富だからといってBの自然がベターなわけではない。
(こうして改めて書くと、至極当たり前ですね笑)

様々な変数が有機的につながり合って絶妙なバランスで自然が成り立っていて、そもそも比較なんてできっこないよね、という話をしました。

その時に達した結論としては、
自然そのものを比較するのではなく、自然を見て感じたこと、その感情でその土地土地の自然を比較するのが良いのではないかと。

なかなかに良いことを言ってくれるではないか、旦那(笑)

最後に

ちなみに、星野道夫さんの本は、真正で一切の淀みもないような純粋無垢な言葉であふれていて、たくさんの普遍的なインスピレーションをもらえます。

さらっと読めるのですが、読むたびに禊を受けたかのような平穏な気分になります。

おそらく生涯自然と真っ向から対峙してきた方だからこそ、私たちの想像を超える発想力で、忖度や見栄などの俗世の邪念が一切ない、まっすぐな言葉が紡げるんだろうなと感じる、珠玉の名言の数々です。

読んだことがない方がいたら、おすすめです。ノーザンライツも大好きです。

アイスランドは、特に首都レイキャビクから車で1-2時間ほどのゴールデンサークルの火山群、そしてさらに南東部のヴァトナヨークトル氷河が有名ですが、東部・北部にもたくさんの魅力があります。

車も少なく道も舗装されていて綺麗なので、より多くの人に、丸ごと一周して、人間を凌駕するような多様で壮大な自然を全身で感していただきたいです。  


次は、この旅でちょっと深堀できた、「計画しすぎない旅のすすめ」について書きたいと思っています!

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