日記:2020/5/7(木)

連休中に辰巳JUNK氏の『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)読了。ロビンエッグブルー(無論、ティファニーのシンボル・カラーでおなじみの色)の表紙に描かれた「セレブたち」の肖像そのまま、アメリカのポートレートとして読むこともできる1冊。2010年代のアメリカン・ポップカルチャーの傾向(と背後に広がるアメリカという国とその途方もなさ)がクリアに概観できる。

アメリカ文化に浸透する共和党/民主党の分断を、冒頭のレディー・ガガの章でざっくりと示しつつ、そこから予想もつかない逸脱をみせるカニエ・ウェストとテイラー・スウィフトを魅力的に浮かび上がらせる前半や、ポップソングの歌詞における「work」という言葉が意味するものとその変遷を読み解くことで、ブリトニー・スピアーズの『Work Bitch』(2013)の頃には堂々と提示されていた「アメリカンドリーム」が徐々に崩壊し、「働けど働けど…」の経済格差時代へと突入する2010年代の果てに、「闇属性」ビリー・アイリッシュと「光属性」アリアナ・グランデが爆誕する……という流れが手に取るように分かる後半など、とにかく章の並べ方が秀逸。アメリカにおける「ソフト・スピリチュアリティ」需要(個人的には「ソフト・オリエンタリズム」とも付け加えたいところだが)と、それを十二分に活用するKonMariこと近藤麻理恵氏の商魂たくましいビジネス戦略の数々が簡潔にまとめられた最終章に至るまで、久々にページを繰る手がとまらなくなってしまった。セレブへの愛情に満ちた皮肉とユーモアが添えられた、品のある脚注も絶品。

惜しむらくは、豊富な知識に裏打ちされた膨大な情報の「出典」をもっと細かくつけてほしかった。例えば、ビヨンセがヒット曲『***Flawless』 で引用したチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの演説は2012年のTEDスピーチのそれで、『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』(河出書房新社、くぼたのぞみ訳)というタイトルで日本でも書籍化されていることなど、いわゆる「ggrks問題」ではあるのだが、できれば明示してほしかったところ。(「リンク切れ」のおそれがあるウェブ上の出典を本に記載することの難しさは百も承知の上での無い物ねだりではありますが……丁寧に作られた本なので余計に)
※2020/5/8追記:アディーチェの演説は、本書「ブラッド・ピット」の章(特にジェームズ・グレイ監督の『アド・アストラ』)で取り上げられる「男性が自らのvulnerabilityと向き合うこと」というテーマとも深く関わってくる題材であることに、今更気づくなどする

あと、ケイティ・ペリーの『Teenage Dream』に寄せて書かれた「あとがき」にはグッときてしまったというか、正直少し泣いた。

 カオスな社会状況やソーシャルメディアによって「いろんな考えのひとがいること」を突きつけられがちな今、「自分の好きなものをただ好きでいること」は非常に重要なのではないか。結局、この世界に生きているたくさんの人たちが、それぞれ悩みを抱えながら一生懸命に生きてると思うのです。生きてるだけで大変ならば、たとえば趣味だけは、何人(なんびと)にも侵されない愛情の居場所にする。
(辰巳JUNK『アメリカン・セレブリティーズ』p.293)

最近Twitterを使って韓国語訳の練習をしている。ところでこちらはイ・ラン氏の飼い猫ことジュンイチ君(15才)です。正面顔の貫禄がすごい。

(拙訳)06年早生まれ(現在15歳)(の)ジュンイチは、建大(建国大学校)ストリート出身です。1.5 ヶ月の時、建大に住んでいた知人が救助して、私と一緒に暮らすようになりました。小さく虚弱で片手で抱くことのできたジュンイチは2020年現在、8㎏に拡大し、頼もしい我が家の世帯主として暮らしています。永遠に愛

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