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私と夏、私の夏。 | Kii

とにかく私は暑いのが苦手だ。

視力が弱く日常的にメガネをかけているので、暑いととたんに額から流れてくる汗を、メガネが堰き止める。そして曇る。それがもうほんとうに鬱陶しく、暑い時期にはいつもコンタクトレンズに切り替えていた。でも今年はついに老眼がはじまってしまい、そうはいかなくなったので、仕方なくこまめに汗を拭いてしのごうとしている。でもやっぱり、顔まわりはほかほか蒸されているように赤くなる。

一方、手のひらの汗腺は極端に少ないのかいつもサラサラで、熱がこもってしまう。自分の手のほてりによる体感温度の上昇を避けたくて、かつて通勤時には最寄駅への徒歩に保冷剤を両手に握りしめていた。今はさらに更年期も重なって、何より気温も年々上がり一層堪えるようになったので、可能な限り屋外では過ごさないようにして、日々エアコン様々で暮らしている。

まだまだ当分暑い日は続くだろうけれど、12ヶ月を単純4分割しただけの季節とは言え、夏と言う括りが終わろうとしていることには、本編完遂のような心境で安堵している。今年は一体どれくらい番外編が続くんだろうか。もしくは去年は11月初旬まで暑かったので、同様にシーズン2まで観終えるほどの長さになってしまうのか。

ちなみにこれほどの暑さであるからこそ、屋外で過ごしている人ほぼ全員が「暑い」と思っているだろうから、普段気の合わない同士であったとしても「暑いですね」と共感し合えるのではないか。俯瞰してみたらひょっとして日本人全体の親睦に一役買っているのかなぁ、なんてくだらないことを考えたりするのもきっと暑さのせい。

そんな暑いのが苦手な私も、夏ならではの楽しみにしていることがある。海外に暮らす幼なじみが毎年夏のバカンスを利用して帰省するのだ。いつもだいたい4週間ほどの滞在の中、期間限定で徒歩圏に戻る私たちは、ご家族との時間の隙間に1年分を埋めるように過ごす。その時は車で小一時間ほどのもう1人の幼なじみも合流して、私たちは3人揃ってセットである。

今年の彼女の帰省は7月中旬から8月半ばまで。数回立ち話程度の時間は持てつつ、帰国前に差し掛かった頃にやっと3日連続で会えることになった。この年になって同じ友だちと3日連続遊ぶだなんて近くに住んでいてもないことだと、再会と同時にケラケラ笑いながら、私たちはそれぞれの現在地を確認しあった。限られた時間に3人で新しい経験など望んではいなくて、ただとりとめのない話をしあえるのはとても尊いことだと年々噛みしめている。

8月14日、高台に立って遠巻きに帰国する飛行機を見送ると、途端に寂しくなった。もう一人の彼女に「まだ終わってないけれど今年の夏のピークはあの3日間だ」と伝えると、すぐに「私も」と返ってきた。しばらく浸ったあといつもの日常に帰ったら、どんな距離にいても存在は変わらないことを思い出して安心した。

暑いのはとても苦手だ。でもそれ以上に3人揃う次の夏が、もう既に待ち遠しい。

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