見出し画像

かなりオススメ映画「マッドマックス:フュリオサ」~戦う姿は「ナウシカ」そのものの清々しさ~

 ハリウッドでもブロンドで美女中の美女スターが圧巻のダーティ・アクションに挑む。よくぞ前作でシャーリーズ・セロンを口説いたもので、監督の慧眼が大いに評価され、彼女を芯に据えた本作が生まれた。ただし前日談として選んだキャスティングがお見事、現在のハリウッドでピカ一の美女と言えばアニャ・テイラー=ジョイに尽きますから。およそ華奢でガラス細工のようなアニャは大柄(177cm)なセロンと違って小柄(と言っても169cm)ですが、有無を言わせぬ美女だからこそカラカラに乾いた赤い台地に坊主頭にも関わらず大スクリーンを支配する事が出来た。被り物にマスク姿で砂漠に立つ、殆どアニメのように大きな目だけで物語るショットは「風の谷のナウシカ」そのものでした。

結構機敏に動き回るのですよ、この細さで

 もう10年近く経つのですね「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が2015年ですから。1979年に初公開のメル・ギブソンの出世作「マッドマックス」が狂気の世界を描いて大ヒット、その10倍の大金を投入しての「マッドマックス2」1981年を経て、「マッドマックス/サンダードーム」1985年はティナ・ターナーがセールス・ポイント。これで一旦終わったはずだったのに、なんと30年も経ってジョージ・ミラーは完全復活させた。

 トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、とキャストも一新してのリブートで、昔は無かったIMAXなどのプレミアム・スクリーンに最適化した爆音映画で大成功。この手の作品がアカデミー賞にまで絡むなんて快挙です。だから当然その続編は営業的にも必須なのでした。が、この9年間はどう派生させうるべきか、試行錯誤の積み重ねだったでしょうね。

三頭立てに見立てた「ベンハー」ばりの将軍の乗り物

 「スター・ウォーズ」のキーワード「may the force be with you」に倣って本作では母娘の別れのシーンに2回も登場するのが「star be with you」。地球壊滅後の限られた緑豊かなグリーン・ランド、フュリオサの故郷でもあるその場所を忘れるべからずと、星座の位置関係を左腕にタトゥーで刻む。決して敵に場所を知られてはならないために。ところがセロン版では左手が義手だったはず、ここがストーリー展開のポイントで、悲劇的展開がクライマックスとなる作劇。前日談の宿命がここにある。

 とは言え、売りの過激アクションは正直言って前作で尽きたようで、巨大なタンクローリーは登場するけれど新味はないのは確かです。敵も味方もごちゃごちゃの中盤での猛スピードアクションは、こんなに爆音にも関わらず退屈を催しもするのが残念。運転する役者の背景が明らかに合成と見えてしまうのも惜しいですよね。体当たりのリアル・アクションがウリですが、結構なSFXを駆使してますね、別に悪くはありませんが。前作のように白塗りのウォー・ボーイの一人にニコラス・ホルトを配し、クロース・アップすれば白塗り戦士に情が移りもするのですが、単なる自爆駒にしかみえないのが勿体ない。

 憎き敵役としてのディメンタス将軍に扮したクリス・ヘムズワースがいいのですね。ワシ鼻のつけ鼻つけての憎々しさを思う存分発揮し、まるで楽しんでいるようなのびのび怪演が素晴らしい。脇役だからこそ出来る芸当で、普段は圧巻の主役ばかりでヒーロー役となれば責任多く、こうは行きません。そして伸び放題の髭面に、おや、ケビン・コスナーそっくりなのに驚いた。

ケビンじゃありません、クリスです

 ラストシーンには、前作のアクションシーンが一部映し出され、フュリオサ役のシャーリーズ・セロンも映り、こうして前作に繋がるのですよと、ご丁寧です。正面ショットではなく後姿と真横のショットの大柄シルエットに、アニャとの違いを再認識。それにしてもNetflixの「クイーンズ・ギャンビット」が2020年ですから、監督はこれを見てアニャを口説いたのでしょうね。本作の撮影が2022年の頭となってますから、もう2年以上前、「ラストナイト・イン・ソーホー」が公開された頃ですか。彼女が売れるか否か不確実な頃なのにね。

 p.s. IMAX版、通常のワイドスクリーンで、天地までフルに伸ばしたものではありませんでした、ちと残念。

この記事が参加している募集

#映画感想文

68,930件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?