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100m10秒の走行例で解説する宇宙旅行での時間の収縮と双子のパラドックス(光速を毎秒15mとした計算)

   アインシュタインの相対性理論によると、「宇宙旅行して帰還する兄の時計」は「地球にいる弟の時計」より遅れる。
   双子のパラドックスとは、「兄に対して弟が動く」と解すれば、弟の時計が遅れることになる背理である。双子のパラドックスに関しては、膨大な数の解説がある。しかし、定速で移動中の兄の時計が弟の時計よりも遅れることがパラドックスでない理由の解説はない
   本稿では、この理由について、100mを10秒で走行する例(上図)で説明する。光速が毎秒30万kmでの時間及び空間の伸縮は0.000 000 000 000 00556秒及び0.000 000 000 000 0556m程度なので、仮想的に光速を毎秒15mにしてわかりやすい数値にした。重力の影響は全ての条件で同じとみなして無視した。加減速を伴う往復の宇宙旅行でも、本質は同じである。(加減速を伴う往復の計算式はyoshi-naga.jpに記載)
 なお、本稿は独学での計算や見解であり確立された知見ではない。
  「陸上競技場が静止する座標系(A)」で走者が100mを10秒で走行する事象を「走者が静止する座標系(B)」にローレンツ変換すると、ゴール地点は走者の時刻より5.96秒前の時刻に134m離れた位置にいて、走者の方に向かっている。(A)での同時刻が(B)では同時刻でなくなり(①)、距離が拡張する(②)。しかし、走者と同時刻でのゴール地点は74.5m離れた位置にいて(③)走者の方に向かっている。ゴール地点は7.45秒かけて走者の位置までやって来る。ゴール地点の移動時間は5.96+7.45≒13.4秒に拡張()している。しかし、走者の測定では7.45秒に収縮することになる(④)。すなわち、(A)から(B)への変換での時間・距離の伸縮は0.745倍の収縮と1.34倍の拡張との双方となる。(計算式は下記)

ローレンツ変換による収縮と拡張の計算式の例(式1


 宇宙旅行でも本質は同じ。地球はスタート地点、宇宙飛行士は走者、目的地はゴール地点に相当する。
    双子のパラドックスにおける誤解の要因を二つ述べる。一つは「定速で宇宙旅行中の兄」と「地球にいる弟」の距離・時間が対称との先入観である。このことで兄の時間だけが収縮する背理と誤解する。しかし、上記の走者と陸上競技場の時間・距離と同様に「定速で宇宙旅行中の兄」と「地球にいる弟」の時間・距離は、あたかも別物のように異なるので、兄の時間だけが収縮することは背理でない。もう一つは、ローレンツ変換による収縮のみを考察し、拡張を考察しないことである。このことで、(A)から(B)の変換でも(B)から(A)への変換でも収縮する背理と誤解する。走者の時間のように、(A)から(B)へのローレンツ変換で0.745倍に収縮する時間・距離は(B)から(A)への変換で1.34倍に拡張する。ゴール地点の時間のように、(A)から(B)へのローレンツ変換で1.34倍に拡張する時間・距離は(B)から(A)への変換で0.745倍に収縮する。
   双子のパラドックスに関して、「加減速するから宇宙旅行する兄の時間が収縮する」との説明では不十分である。宇宙飛行士の兄は加速によって弟より時計が遅く進む座標系に移行する。定速で旅行中の兄の時計の遅れは大きくなる。減速して止まると時計の時間差は一定になる。光速が毎秒15mの世界では秒速10mまで加速すると時間の進み方が0.745倍に遅くなる座標系に移行する。減速して停止すると時間の進み方は元に戻る。あたかも、加速により時間・距離が別世界の竜宮城に行き、減速により元の世界に戻るかのごとくである。
   計算式、および加減速して100mを20秒で往復する計算例はyoshi-naga.jpに記載している。加減速時には上記の(式1)に相当する式で速度を変数として積分した。                 2024.03. 吉永弘志

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