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褒めるときは人前で、叱るときは個別に

以前、ある人から昭和時代のマネジメントを聞きました。

うちの会社では、朝礼ではまず昨日ミスした人を発表し、みんなの前で怒鳴り叱るというのをやっていた。そうすることにより、周りもみんなの前で叱られたくないという気持ちから、ミスしないようにしていた。恐怖で支配するやり方は今ではあり得ないけど、あの時代は当たり前のように行われていた。

恐怖で支配するやり方は、(転職したら汚点になる)終身雇用の時代だから罷り通っていたのかもしれません。社員が辞めない(辞められない)と分かっていれば、会社の立場がかなり優位になります。

パワハラなど上からの圧力が多かったのも、その力関係からですが、当時はそれが当たり前の時代で、みんなその力関係を疑わなかったと聞きます。当時を知らない人たちからすると、信じられない状況です。

恐怖政治は、いっときの対処療法として行動を促すことができるのかもしれませんが、長くは続きません。そもそも恐怖心で人を動かすこと自体、相手の意志を尊重せず、誠実性に欠ける行為です。

叱られた本人のモチベーションが下がるどころか、聞いている周りのモチベーションも下がります。ただ自尊心を傷つけるだけで、何も良いことはありません。

また、みんなの前で一人を叱って、周りもそれに準じるようにさせる行為は、マネージャーの怠慢です。ミスは個人ではなく、その多くは会社の仕組みが問題です。

それをミスをした当事者だけが悪いという見方は、表面しか見えていません。俯瞰した視点から、なぜそれが発生したのか。問題を仕組み(システム)で解決する必要があります。

とはいえ事象自体は全体共有する必要があるので、もし人前でシェアする際は、課題点のみにフォーカスして周知させるのが理想です。

叱る以上に大切なこと

誰かを注意するときは、できるだけ周りに人がいないところで二人きりが理想です。ミスしたことで一番落ち込んでいるのは本人なので、威圧的な態度は避けるべきです。

またこのようなときは、実は叱ることは本来の目的ではなく、ミスした本人の感情面のケアが最優先になります。

仕事のミスをどのように捉えるか。責任感から苛まれていないかをケアしたり、向き合い方や改善方法を一緒に考えます。大事なのは次に繋げることなので、それをどのように今後の糧とするか。

このようなことは、取り越し苦労なら問題ないのですが、その逆は問題ありです。心にダメージを負っていないだろう。メンバーに対して楽観的に見ているときほど、知らぬ間に心が病んでいるときがあります。

まずは細心のケアを素早く行い、問題なければすぐ通常に戻れば良いだけです。落ち込んでいたり、心が崩れる兆候があるのに見落とすことが何よりいけません。

故にまずはそれに気づけるよう、取り越し苦労を恐れず、即座に対話を試みることをお勧めします。

人前で個人にフォーカスするときは、叱るではなく褒める

一回叱ったときは、その十倍は褒めると良いです。先日こちらにも記載しましたが、人の脳はネガティブなことに反応しやすいように出来ています。何も意識していないと、叱りたい点ばかり思い浮かびます。

だからこそマネジメントする立場の人は、思考停止にならず、意識的にメンバーの良い点を見つけるように努めます

また褒めるときは、できるだけ人前で盛大に褒めると良いです。

これは、褒められる本人が嬉しいというのもありますが、それだけではありません。良いことをみんなに共有することにより、それがチーム(コミュニティ)に伝染していきます

感情の伝染に関しては、多くの研究がされていますが、喜ぶ感情は他人に伝染します。これは心理学では「情動感染」と呼ばれ、ネガティブもポジティブも、どちらも周りへ伝染し影響を与えます。

例えばある研究によると、上司がいつも不機嫌な感情でいると、組織のメンバーの感情に大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。

ある心理学者の研究で、チームリーダーの感情の状態とチームの利益との関係を調査した結果、リーダーの感情の状態が良いチームの利益は高く、リーダーの感情の状態が悪いチームの利益は低いという傾向が見て取れました。

この研究からも、チームや組織の利益を高めるためには、自分の感情の状態を良い状態に保つことは上司の重要な仕事なのです。

冒頭のように、いつもメンバーを怒鳴り叱り、不機嫌でいるような組織は、会社の利益は低くなるということです。要は、個人のパフォーマンスが落ちてしまうのです

不機嫌なネガティブ感情が伝染することにより、本人も自覚しないうちに生産性が落ち、結果に影響を与えています。

一方、ポジティブ感情も伝染するため、リーダーがいつもご機嫌だったり、意図的にそれが広がるような仕組み(人前で盛大に良いことを褒めたり、みんなが笑顔になる催し)を設けることにより、メンバーの生産性が上がります。

故に褒めることがある場合は、ぜひ人前で褒めてあげることをお勧めします。

褒めるときは平等に褒める

一方、特定の人物を褒めすぎると、他の褒められていない人のマインドが下がることがあります。

もし褒められていない人がいると、その人は「自分は至らない人間だ」と劣等感を抱いてしまうことがあります。マネージャーは評価をする立場でもあるので、その人から自分だけが褒められないと、そのように陥りやすいです。

マネージャーは、特定の人物に偏るのではなく、メンバーそれぞれの良いところを、平等に見つける意識が大切です。意識すると、良いところを探すアンテナの感度が良くなります。

良いところが見えてくると、各メンバーのことをより尊重できます。尊重することにより相手への思いやりが生まれ、コミュニケーションも円滑になっていきます。

また、「褒めると調子に乗る」というのをよく聞きます。だからあまり褒め過ぎないほうが良いと。

しかし、私は寧ろどんどん調子に乗ってもらうほうが、事業創造の観点では良いと思っています。縮こまるのは簡単ですが、「調子に乗る=自己肯定感が高くなる」のは相当難しいです。

事業創造や新しいことへのチャレンジには、自己肯定感が必要です。ある一定数の根拠のない自信を持っていないと、不確実な領域に勇気を持って飛び込むことが出来なくなります。

とくに弊社のようなスタートアップにとっては、前のめりにどんどん挑戦する人物が必要なので、これからも引き続きメンバーの良いところを見つけていきたいと思います。


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