見出し画像

オジェ優勝! 0.6秒差のラリーには魅力しかなかった-WRC Rd3 クロアチア-

こんにちは、トヨタWRCチームで働く山下です。
先週末はラリークロアチアが開催されました。非常に魅力的なラリーだったので少し紹介させてください。

(1) Day1: 散々な競技初日

トヨタは新しい空力パーツをラリー・クロアチアに乗り込みました。前戦までのドライバーズ選手権ではカッレ・ロバンペラ (トヨタ・ヤリスWRC)が史上最年少でポイントランキングの首位に立っている状況です。

しかし、そのロバンペラが最初のステージであるSS1でコースオフしてしまい、車両は修復できずにリタイヤ。昨年の王者オジェもロバンペラと同じコーナでコースオフしかけ、またタイヤをパンクしてしまいタイムを失いました。

その後は、ヒュンダイのヌービルが他を寄せ付けないタイムを連発して首位に立ち、チームとしてはかなり不安な展開となりました。

(2) Day2: タイヤ選択の重要性

競技2日目はタイヤ選択が命運を分けました。トヨタがハードタイヤを選択したのに対して、ヒュンダイはハード2輪、ソフト2輪を混ぜるという選択をとりました。

結果的にはトヨタの戦略が当たり、2日終了時にはオジェが首位、2番手にエバンスと、初日首位のヌービルを逆転しました。SS10、SS14では勝田選手もステージ優勝を果たしました。

全体的には順調でしたが、午後のステージでオジェのタイヤが再びパンクして、稼いだマージンを失ったことは残念でした。ピレリ頑張ってください!笑

(3) Day3: ドラマしかなかった最終日

前日の流れを維持したかった最終日の朝、首位のオジェがまさかのアクシデントに見舞われます。サービスを出て最初のステージであるSS17に移動中のロードセクションで一般車に追突されてしまい、車両右側のドアが大きく損傷してしまいました。事故の状況がTwitterに上がってました 笑

チーム内で損傷した車両の写真が回ってきた際には、もう駄目かもしれないと思いました。幸い致命的なダメージはなく走行は可能でしたが、ドアは大きく凹み、走行中に容赦なく風が侵入してくる状態でした。

せっかく空力パーツを投入したのに何故こんなことに・・・設計担当は泣いています&オジェのラリーエンジニアのフランス人は怒っていますね、たぶん 笑

その後のSS17、18ではチームメイトのエバンスに首位を奪われその差は3.9秒、SS19でトップだったヌービルも4.1秒差まで迫り3台が接戦で最終SS20を迎えました。

SS20のハイライト動画です。首位エバンス、2位オジェ、3位ヌービルのトップ3のアタックだけは見て欲しいです (1分54秒以降)

3台ともフルアタックしており、攻めるしかないヌービルは途中までその時点のトップタイムでしたがコースオフで暫定2位のタイムにとどまりました。オジェも下り坂の後に車両バランスを崩すほどの限界アタックでSS20トップタイムを叩き出します。3.9秒差で首位に立っていたエバンスはギリギリの走行で最終コーナーでイン側に乗り上げて僅かにタイムロスしてしまいました。

結果的に総合タイムでは0.6秒差でオジェが逆転して優勝となりました!

(4) まとめ

波瀾万丈だったラリー・クロアチアでしたが、チームとしてはワンツーフィニッシュを飾り、素晴らしい結果となりました。チーム開発拠点のフィンランドで行われたにも関わらず惨敗だった前戦アークティックラリーの雪辱を果たせたことでチームの雰囲気は明るいです。

個人的な感想としては、僕が変更したりテストした設定も今回のイベントに反映されたので、加入直後だった前戦よりは少しだけ気持ちが入りました。僕のキャリアはサーキットレースが大半なのですがラリーも面白いですね!
但し、正直まだ貢献できている実感はないので、早くチームメンバーに追いつこうと思います。

チームを応援頂いた方、この記事を読んで頂いた皆様ありがとうございました。
次戦はラリー・ポルトガルです。引き続き、応援よろしくお願いします!

追記:ちなみに劇的な勝利を飾ったオジェですがロードセクション事故の責任として罰金7000ユーロ (およそ91万円)が課せられました。

自動運転とモータースポーツのテクノロジーについての記事を書きます! 未来に繋がるモータースポーツを創りたいです!