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人事企画を任されて一年間の振り返り

DMM.comの人事部にて、人事企画チームのリーダーをやっています。
チームが発足してちょうど一年が経ちましたので、これまでの取り組みを振り返りながら、DMMが抱える人事課題への向き合いや、人事部機能の強化について書き記していきます。
成長拡大フェーズの企業や、大胆な組織変革をリードするような人事パーソンに届けばいいなと思います。


DMMの人事組織と人事企画の機能

部長の大嶋のnoteでも触れられているとおり、大きく3つのセクションに別れています。
事業成長の一翼を担う事業部人事Unit、全体最適を整えるCoE、高品質なオペレーションを届けるHR Shared Service。
そして、人事部長の直下にHR-Officeがあり、その中に人事企画チームが存在しています。

人事部の組織体制

人事企画の機能としては、一般的な解釈とは少し異なっており、

  • 人事部内の各セクションへの支援

  • 人事部長の相談相手

  • 人事部の人事(HRBP)

  • HRデータ利活用

みたいな顔をいくつも使い分けてやっています。
都度、重点を置くべき役割が異なるため、明確に追っている目標やKPIは置いていません。
大目的は、HR-Officeの設置意図でもある、人事部長を本来の役割に集中させること、です。

各セクションとの向き合い

事業部人事Unit

ここが一番重点を置いてきたポイントです。
当社では戦略担当のBP(ビジネスパートナー)と区別するために、HRBP機能を担うメンバーに事業部人事という呼称を使い、60以上ある事業の支援を行っています。
2022年9月、ちょうど我々人事企画チームが立ち上がったタイミングで、事業部人事の体制も大きく変わりました。
それまで部長の大嶋が直接見ていた事業部人事セクションに、マネージャーとして7名を登用しUnitという単位で組織化することで、権限移譲を図ったのです。
以前から、弊社における事業部人事の役割や存在感は大きなものでしたが、体制が課題でした。
LINEさんのようなスクラム体制、DeNAさんのようなチーム体制、色々と模索をしましたが、事業部の数が多いことが最大のネックで、過去の議論では「究極は60ある事業に対して60人の事業部人事がいるのが理想だよね」なんて会話もしていました。
そこに、マネージャーを任せられる人材が整ってきた去年のタイミングで、事業部人事のUnit化に踏み切りました。

権限移譲が行われたことにより、意思決定のスピードや事業貢献のための柔軟性を高めようとしたものの、業務品質やメンバー育成に関してはバラつきが生じるだろうという見立てがありました。
そこで、人事企画の機能のひとつとして、事業部人事の標準化を加えました。
テーマは事業部人事に「武器を渡すこと」。そのためにやることは、一緒に課題解決に取り組みナレッジを抽出して横展開すること。

当時のイメージ図

構想は悪くなかったと思いますが、このイメージ通りにはいきませんでした。
まずは一緒に取り組む課題を決めるところから始めると、想定以上にネタがないことが発覚しました。
正確にはネタがないわけではなく、事業部人事メンバーの当事者意識が良い意味で高かったため、スピード感をもって課題解決ができるケイパビリティを有していることがわかりました。わざわざ人事企画を巻き込んで一緒に課題解決するよりも、その場で自分達で何とかしちゃった方が早い、というケースが多かったんですね。
一通りヒアリングをしたり、部内営業を掛けてみたものの、1,2件くらいしか挙がってきませんでした。ここまで3ヶ月。
一方で、スピード感とUnit制によって、ナレッジの蓄積と横展開が行われづらい業務特性と組織構造があることもわかりました。
さてどうしようかと・・・。

ここは腹を括って強制的に自分を追い込み、2022年12月から事業部人事ー人事企画の定例MTGを隔週1時間設け、人事企画から何らかのナレッジを2,3件共有するという場を設けました。
そこからは毎週のように、ナレッジとして提供すべきネタは何か、ひねり出す毎日です。
体系的に整理した中から優先順位を決めていく王道スタイルを提案されたこともありましたが、実践知や実務に必要なナレッジを提供してこその標準化だと考えていたため、体系的・網羅性は一旦諦め、生きた情報として実例と共に展開できる案件を必死にかき集めては、ドキュメント化し、定例MTGで共有する、ということをやり続けました。

そこから今日まで半年以上、10数回の定例会を行いナレッジを資産として残していくことで、最初は無かった手応えが少しずつ感じられるようになり、権限移譲の狙いであるマネージャーによる意思決定がスムーズに行われるようになったり、事業部人事メンバーの業務品質が上がってくる感覚を掴むことができました。

CoE

機能別組織になっているCoEは、各領域に専門性を持ったマネージャーが登用されています。
採用、組織・人材開発、労務管理といった人事の屋台骨を支える領域です。
DMMは事業成長に寄与する行動が全てにおいて優先され、逆に横串のルールで縛ることは敬遠されがちです。
ガバナンスの観点で時にルールは必要ですが、非上場である強みを活かしたスピーディな意思決定と大胆なトライ&エラーを実現するためには、ルールで縛り過ぎないこと、一人ひとりの誠実さを信頼する文化が強みであると自分自身も考えています。

そこで難しさにぶつかるのがCoEセクションです。
全体最適でレギュレーションを定めていく、効率さを求めてイレギュラーを回避する仕組みをつくるのが役割ですから、どうしても事業部人事側の個別最適志向と対立するわけですね。
文化としては中央集権型の管理体制はそぐわない、しかし、現行の個別最適が行き過ぎるとガバナンスが利かなくなり、トラブル対応がCoEの役割としてしわ寄せが来てしまう、この状況を打破するために、2023年3月から人事部内では各領域の戦略を引き、プロジェクトを立ち上げることにしました。
採用戦略、育成戦略、報酬戦略、労務戦略など、各領域ごとに5-10本のプロジェクトを立ち上げ、今ある仕組みの改善や既存制度の刷新、新制度の企画立案を目指しています。

これらのプロジェクトのポイントは、業務遂行を得意とするメンバーが、「目的とゴールを設定し」「期限を決めてやり切る」ことにチャレンジすることでした。
一般的にバックオフィス組織は定常業務の割合が多く、プロジェクト経験が得られにくいです。
そこで、人事企画としての役割は、プロジェクトの立ち上げから進捗管理、スタックした際のサポートを担うこととなりました。
具体的には、まず、プロジェクト基本計画書のひな形を作ったことです。
必要十分な情報を関係者と握り、目的やゴールやスケジュールの目線を合わせた上でプロジェクトをスタートする、これを徹底させる支援を行うことで、何となく始まって目的を見失い自然消滅してしまうという、失敗プロジェクトを撲滅することに寄与することができたと思います。
立ち上げ後、各プロジェクトの進行を見ながら全体を俯瞰する立場として行ったのは、人事部全体に向けての月次の進捗報告です。
プロジェクトに対する関心を高めながら、人事部内へ情報流通させることで、プロジェクトメンバーの健全なモチベーションの担保を狙いとしています。
これはまだ期待した効果が出ているとは言い難く、もう少し工夫が必要だと感じているところです。
スタックした際のサポートは、都度壁打ち相手となったり、資料のブラッシュアップを手伝ったりしています。
ここは、各プロジェクトメンバーから人事企画に声が掛かる状態を作り上げるところが課題で、まだまだ部内への影響力を高めていく余地が残っているなと感じています。

HR Shared Service

膨大な中途採用の選考管理から入社手続き、毎月のように行われる異動発令や組織変更、年間数百名単位の派遣・業務委託の入退社管理、グループ会社のPMIなどを司っているのがHR Shared Service(HRSS)です。
当社の人事業務の血液であり神経として、質の高いオペレーションを提供しています。

このセクションに対しては、まだまだ人事企画としては向き合いきれていないのが現状です。
しかし、他部署からBPRに強いメンバーに兼務してもらい、現行のオペレーションの整理などに取り組み始めています。
レガシーシステムや慣習的な業務プロセスが散在している状況を紐解いて整理しています。
ひとつのオペレーションや、ツール・システムを変更するだけでも、後続への影響範囲が少なからず発生するため、あるべき姿を実現するために中長期的な構想を持ち、辛抱強く進めていく必要があると考えています。

人事部長の相談相手

ここまで書いてきて、人事企画という役割を担うようになってから、人事部全体を俯瞰し、かつ、解像度高く理解できるようになったという実感を強くもっています。
それは単なる役割だけの話ではなく、部のトップである部長と近い距離感で仕事をしたことが影響していると思います。

これまでは部長の大嶋ともう一名のマネージャーで、部内のマネジメントやアサインなどの体制面、会議体の設計や情報連携、個別に寄せられるメンバーからの悩みなど、ハードからソフトまでを一貫して担っていました。
50-60名程度の組織規模なら何とかやってこれたものの、70名を超える組織になってきたことで、そのマネジメント体制に限界が来ていました。
片や、経営から人事への期待が高まっているタイミングとも重なり、人事部長が完全にボトルネックになりつつありました。
そこで、人事部長が自由に使える頭脳と手足として、人事企画が機能することになりました。

具体的にどんなやり取りをしているか、ここでは説明しづらいのですが、
わかりやすいシチュエーションとしては、こんなメンションが飛んできます。

会話の中で、人事企画チームメンバーが頭の整理に付き合いながら、タスクを引き取ったりアウトプットしたりします。
確かこの時は、翌日の経営会議に上程する事案のエビデンスとなる人員情報を整理しようという話だったと思います。

このような会話が恒常的に行われるようになったことや、後述する部内向けの情報連携役を人事企画が担うようにしたことで、人事部長が本来向き合うべきイシューに集中できる環境を作り上げることができたかなと思っています。

人事部の人事(HRBP)

DMMの人事部は、日本一の人事部を目指すというビジョンに向かっています。
そのために、採用や育成、抜擢、キャリア形成など、組織づくりの基礎を固めるだけでなく、全員が同じ方向や同じ山の頂を目指していく必要があると考えています。
一方で、事業は待ってくれません。事業立ち上げ、組織再編、M&A、事業撤退、様々な動きが押し寄せ対応に追われます。
長距離走と短距離走を同時にこなしていく感覚かなと思います。

中でも、長距離走の方の基礎固め部分が、どうしても優先度が低くなってしまうため、人事企画の役割として「人事部の担当人事」としての役割を担うことが必要だと考えました。
具体的には、定量定性情報による組織コンディションの把握、個別メンタリング、上司によるキャリア面談の必須化、行動指針に基づく部員全員の360度FB、評価指標の再設計、トレーニングの実施などを進めてきました。
ここまでの成果として、部長・マネージャー陣から見て、従来よりは組織やメンバーの状況が解像度高くみえるようになった点が挙げられます。
特に、人や組織の課題は情報がクローズドになりやすく、当事者間での少人数で解決を図るケースが多いため、我々が介在していることで、客観的な視点を担保することができている感覚は持っています。

また、部内の情報発信や情報のハブとしての役割も意図的に担うようにしてきました。
上層部に集まってくる情報を適切なタイミングで現場に降ろしていくことと、現場からの情報がクイックかつ事実ベースで上がってくること、この当たり前の情報流通を実現するためには、多忙な部長・マネージャー陣だけでは難しい実態があったため、特に現場へ降ろす方の動きは人事企画が一部引き受けています。
毎週一時間行われている部員全員参加の朝会において、従来は部長から発信されていた部内周知の中で、事務的なものを引き受けるところから始めていきました。
そこから、組織運営に関するものや横断プロジェクトの進捗など、発言機会を増やすことで、部内での役割認識が確立されてきたと思っています。

直近でひとつ仕掛けた施策が、エラー改善レポートの導入です。
業務上発生するトラブルや従業員からのクレーム、ヒヤリハットなどを部内で共有し、組織学習を促進して教訓化することを目的に、事象・対策をまとめたレポートを作成するフローを整備しました。
原因を引き起こした人物に反省してもらうことが目的ではなく、フローの構造的欠陥や、ポリシーの未整備、未然に防ぐ仕組みの無さなどにフォーカスして抜本的な改善を実現するための取り組みです。
導入後一ヶ月の現在、数件のレポートが作成されており、今後の蓄積と共有によって組織が強くなり業務品質が上がっていくことを期待しています。

今後は、人事企画が主体になり過ぎずに、人事部の組織運営にマネージャー陣を巻き込んでいきたいなと思っています。

HRデータの利活用

元々5年前から人事部のデータアナリティクス機能を立ち上げて推進してきたメンバーが、現在の人事企画チームに在籍しているため、HRデータアナリティクス機能も持っています。

当社のHRデータ利活用の現在地

上記スライドは一年半前に作成したものですが、状況は大きく進捗していません。
と言うのも、Lv.4以上を目指すよりもLv.2と3をやり切ることが重要であると考え、精度を高めることに集中してきたためです。
データ管理と可視化を突き詰めることで、まずは「こんなデータが見たい」という要望に対して応えられるようになりました。
人事企画チームに機能が移管されてからは、経営に対してHRのデータをぶつけていくことで議論の呼び水に使うことが増え、経営からの関心も高められている感覚は持てています。(残念ながら不発に終わることも少なくありません笑 )
また、社内外への情報発信も怠らないようにしています。

振り返りとして触れておきたいのは、人事部全体としてデータ利活用を推進する観点です。
部内の各チームから人事部が蓄積・管理しているデータを出力・集計の依頼を受ける際に、HRデータそのものが活用され始めて日が浅い時期は、認識や解釈にムラがあることが多く、知りたいことと要求されるデータがズレているケースが散見されていました。
この課題に対しては、そのデータによって何を確認したいのか?目的・仮説は何なのか?を都度確認することを続けていく地上戦と、データ利活用の原理原則をインストールするための勉強会(空中戦)を並行して取り組んできました。

まとめ

この一年間で実現できたこともあれば、まだまだ成果が見えていないことも数多くあります。
これからもトライ&エラーを繰り返しながら、効果がある取り組みや意義のある役割は強化し、効果が薄いものは見切りをつけ、ブラッシュアップしていくフェーズが半年から1年は続くかなと思っています。
敢えて役割や機能を明確にせず物事の本質と向き合うための仕事をする、という点で非常にDMMらしい価値発揮をしているという自負はありますが、あらためて書いてみるとなんと支離滅裂で整理のない仕事をやっているかが如実に表れていますね。
立ち上げ当初からガンガン自走してくれているメンバー、新たに入社しキャッチアップ早く立ち上がってくれているメンバーの皆さんはとても頼もしく、感謝を述べると共にこれからもカオスを楽しんでもらえればと思っています。

人事部の機能そのものと向き合い経営に資する人事を目指すという、少し珍しいポジションかもしれませんが、HRBPとは異なるアプローチで経験を積むことができる面白い仕事です。
一緒に働く仲間も募集中ですので、ご興味があれば気軽にカジュアルな会話からでも是非お願いします!


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