AIの発達により、多方面に様々な影響が及んでいますが、アートの領域もそのひとつです。この事例のように、すでにAIによるアート領域の拡張は進みつつあると思います。
そこで、今回はAI時代のアートについて述べた論文がありましたので、その内容について簡単に触れたいと思います。
Art in an age of artificial intelligence
論文はこちらです。
この論文では、AIがアートに及ぼす影響として、以下の5点が挙げられていました。1つずつ見ていきたいと思います。
嗜好への適合
多様な生成
制作プロセスへの貢献
意図的な曖昧さ
発散的/収束的思考
嗜好への適合
画像・動画を用いたSNSの拡大により、人々がどのような画像・動画を好むのかという嗜好に関するデータが集まりやすくなっています。これによって、AI側は人々の嗜好にあわせたアートを制作し、人間のアーティストよりも影響を与えるアートを生み出す可能性が考えられます。
多様な生成
アートを生成するAIツールは複数あり、それぞれが特徴を持っているため、多様なアートが大量に生み出されていきます。また、それぞれのツールが特徴を活かしながら、鑑賞者の嗜好を学習して洗練されていくため、独自のアートスタイルを確立していくことが考えられます。
制作プロセスへの貢献
AIを使えば、短時間で多くの画像を生成することができます。アーティストはこれらの画像を下書きやアイディア構築に活用することができ、より多くのインスピレーションの創出へと結びつけられるのです。これは、アーティストの表現を拡張し、アートの可能性を広げることになると言えます。
意図的な曖昧さ
アートには明確なルールがあるわけではないため、その曖昧性に対してAIアートの特徴が合致し、アートしての魅力が引き出されます。AIアートには、人間にも理解できないブラックボックス的な表現要素やコンセプトも含まれており、そこがアート作品の魅力を高めるのだと思います。また、曖昧性を含んでいるがゆえに、鑑賞者に対する洞察のきっかけを与えることもできます。
発散的/収束的嗜好
創造的思考は、発散的思考と収束的思考の2種に大別されます。AIは、前者の発散的思考において、アイディアやインスピレーションを得るための素材づくりとして用いることが考えられます。AIのアウトプットをもとに、作品制作を収束させる方向に持っていき、行き詰まってしまったら、思考を発散させるためにAIにサポートしてもらえばよいのです。
以上のように、AIが社会全体に浸透していき、アート領域にも入り込んできており、AIと共存することは遠い未来ではありません。アート活動においては、AIによってその活動の多くが代替されるのではなく、むしろAIを活用した活動によって、アートの可能性を大きく広げていくことが期待されます。