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十数年ぶりに『五体不満足』を読み返したら、あらためて気づかされた5つのこと。

先日、『五体不満足』を読み返す機会がありました。というのも、出版から23年が経ち、新たにオーディオブックが出ることになったのです。しかも、出版後の苦悩や戸惑いを描いた「第4部」を加えた『五体不満足  完全版』のほうを。

本来であればプロの声優さんに朗読していただくのですが、せっかくだから著者本人がやってみようとのことで、私が朗読することに。もともと私は、出版後に自分の著作を読み返すことをしない性格なので、『五体不満足』を読み返したのも、おそらく十数年ぶりのことでした。

あらためて22歳の私が書いた文章を読んでみると、「やっぱりな」と感じることや、「こんな感情になるのか」という驚きがありました。やはり商品の仕上がりとしてはプロの声優さんにお願いしたほうがよかったのかもしれませんが、こんなことでもなければ『五体不満足』を読み返すこともなかったでしょうから、私としてはありがたい機会でした。

さて、実際にどんなことを感じたのか、ひとつずつ挙げていきますね。

1.感謝

これはもう予想通りというか、当時、この本を書いている段階から感じていたことなんです。「ああ、自分はこれだけ多くの人に支えられて、ここまで来ることができたんだなあ」と。両親だったり、学校の先生だったり、友人だったり。あらゆる場面で多くの人の助けがあって、いまの私がいるんですよね。

でも、これって私が障害者だからということでもないと思うんですよ。もしみなさんにも「自分史」のようなものを書く機会があったら、きっと程度の差こそあれ、「多くの人の支えで、いまの自分がいる」といった感謝の念が湧いてくるんじゃないかなあ。


2.文章の稚拙さ

いや、もう文章が下手すぎてね。まあ、現時点でも決して文章が上手いとは言えませんが、大学卒業後にスポーツライターとして活動したことで、プロの編集者にある程度は揉まれたこともあり、少しはマシになったのかなと。当時の文章を読むと、そのあたりの自分の成長も感じられますね。

それもそのはずで、当時は講談社の編集者からアプローチをいただいても、「文章なんて書いたことないので」とお断りし続けていたんですよ。どうしても早稲田大学に行きたくて文系学部はほとんど受験したのに、文学部だけは受験科目に小論文があったので志願すらしなかったというくらい、文章を書くことには苦手意識があったんです。


3.社会の変化

いまから23年前に出版された本なので、やっぱり当時とは社会状況など含めて、大きな変化を感じます。それは物理的なバリアフリー状況もそうだし、障害者に対する人々の意識もそう。このあたりは、かなりいい方向に変化が見られた20年だったのかなと感じます。

また、障害者をめぐる状況だけでなく、いまだったらコンプライアンス的にどうなのだろうという表現もあったりして、考えさせられましたね。これが当時はOKだったけれど、いまはNGになりつつあるのは何が変化したことが理由で、それ自体いいことなのだろうか、とか。


4.私自身の変化

「いやあ、おまえわかってるね。いいこと言ってるよ」

そんな言葉を発したくなるような場面もたしかに多くあるのですが、一方で「当時の俺はそう考えてたのか……あまり周囲が見えていなかったんだな」などと感じさせられる箇所もありました。つまり、当時書いていたことと、いまの私が考えていることに隔たりがある面もあるんです。

だけど、決してネガティブには捉えていません。これは人間の歩みとして、むしろ自然なことなのかなと。人はさまざまな出会いや経験を通して、考えや価値観を変化させていく。だから、20年以上も経っていれば、当時の自分とは異なる部分があって当然なのだろうと受け止めています。

さて、肝心の5つ目。これはとても言語化しにくいものの、じつは最も強く感じたことでもありました。

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