600万部超のベストセラー『五体不満足』には、当初こんなタイトルがつけられていた。
いやあ、申し訳ないなとは思ってるんですよ。最近、TwitterをはじめとするSNSが新刊『四肢奮迅』の宣伝ばっかりで。
でも、まあ考えてみると、どんな会社にも大抵は「営業」という部署があって、自社の商品やサービスをPRしてくれるわけですよ。ところがフリーランスというのは、それもすべて自分でやらなければならないわけで……。
まあ、こんなときには頼りになる敏腕マネジャーが、週イチの日記でしっかり宣伝をしてくれるので心づよ——。
え、ウソだろ。ひと言も触れられていない……だと!?
あ、そうか。「僕の日記なんて誰も読んでない」と日頃から拗ねているキタムラのこと。きっとTwitterのほうで宣伝をして——。
え、ウソだろ。ひと言も触れられていない……だと!?
みなさん、こんにちは。ついにマネジャーにも見捨てられた乙武です。あまりに不憫なので、もう一度だけ宣伝させてください。
仲間たちと取り組んでいる #乙武義足プロジェクト が、ついに書籍化されました。みなさんが無意識にこなしている「歩く」という動作が、じつはこんなにも高度で難しいことだったのかと驚かされるはずです。
#四肢奮迅 、ぜひ読んでみてください!!
Kindle版もありまーす!
というわけで、先週はやはりPRを兼ねて、発売直前にこんな記事を書きました。
記事の最後に、こんな“次回予告”をしたこと、覚えてますか?
じつは21年前、『五体不満足』に小沢さんがつけてくださっていた仮タイトルが、まあまあヒドいものでした。
いったい、『五体不満足』は、どんなタイトルだったのか!?
気になるみなさんを焦らしに焦らして、この続きはまた次回に!!
では、時計の針を21年ほど巻き戻してみましょう。
あれは1998年、夏。初の著書となる原稿をすべて書き終え、あとは秋に出版されるのを待つばかりという状況でした。そんななか、担当編集者である小沢一郎さん(政治家ではありません!)からは「宣伝・営業のために、そろそろタイトルを正式に決定しなければなりません」と言われていました。
必死に知恵をしぼるも、なかなかいいアイディアが浮かばず、日にちだけが過ぎていきます。そうして、ついに〆切日が訪れてしまいました。この日の夕方5時までに決めなければ、小沢さんが提案してくださっていた“仮タイトル”が、そのまま正式タイトルになってしまいます。
(失礼ながら)それだけは避けたかった私は、何かいいヒントが隠されていないかと、自分が書いた原稿のあとがきを読み返してみました。そこに、こんな一節がありました。
健常者として生まれても、ふさぎこんだ暗い人生を送る人もいる。そうかと
思えば、手も足もないのに、毎日、ノー天気に生きている人間もいる。
関係ないのだ、障害なんて。
たしかに、せっかく五体満足に生まれたのに、毎日しんどそうな人はたくさんいるもんな。それにひきかえ、自分なんて五体満足ではないのに、こんなに楽しい毎日を——。
ん、待てよ。
俺は、「五体満足」ではない。
五体満足ではない。
五体……不満足?
おお、『五体不満足』!!
すぐに小沢さんに電話をかけました。
乙武「小沢さん、いいタイトルを思いつきました」
小沢「どんなタイトルですか?」
乙武「はい、『五体不満足』です(ニッコリ)」
小沢「…………ええ、面白いとは思うのですが…………あの、ちょっと会社に相談させてください」
小沢さんがたじろぐのも、無理のない話です。当時(今でも、かな)多くの親がお腹の中の子どもに対して、「せめて、五体満足であってくれたら」と願うわけですが、その言葉を否定形にして、さらにはタイトルにしてしまおうというのです。少しでも常識や分別を持ち合わせた大人なら、戸惑うのが当然のことだったと思います。
その数日後、講談社で会議にかけてくださった結果、「本人が言っているならいいのでは」という結論になり、無事に『五体不満足』という、当時としてはかなり刺激的なタイトルが誕生しました。まあ、“不謹慎狩り”が喧しい現代では、もしかしたら却下されてしまっていたタイトルかもしれませんね。
さて、いよいよ本題です。
小沢さんは600万部を超すベストセラーとなった『五体不満足』に、いったいどんな仮タイトルをつけてくださっていたのか!?
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