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「#教師のバトン」炎上で、怒りの炎を向けるべき相手。
文科省が始めた「#教師のバトン」というプロジェクトが炎上している。
文科省のホームページによると、このプロジェクトは「教職を目指す学生や社会人の方に、現職の教師が前向きに取り組んでいる姿を知ってもらうことが重要」であり、「『令和の日本型教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン」のためにスタートさせたのだそうだ。わかりやすく言えば、「教師という仕事の魅力を“教師自身に”発信してもらい、人材確保につなげよう」というわけだ。
ところが、これが炎上している。
文科省の目論みでは、教師たちがその仕事の「魅力」を発信してくれるはずだったのだが、彼らが実際に発信したのは耐えがたい「窮状」だったのだ。こちらをクリックしていただければ、怨嗟に満ちたツイートの数々をご覧になれるが、ここでいくつかご紹介したい。
教師になって38年。明日で退職です。若い頃は、朝から晩まで土日もなく働きました。充実した日々だと思っていました。でも今思うと、失ったものの方があまりにも多かったと思います。#教師のバトン
— 南志 (@masayamika1) March 30, 2021
残業代が出てたら、もうとっくに家一軒建ってる。家一軒分の労力をやりがいに捧げる仕事、それが教師。#教師のバトン
— 南部鉄子 (@nanbutetuko) March 26, 2021
残金代は出ません。その代わりに教職調整額として本給の4 %が毎月支払われます。4 %って1日(7時間45分)あたりで約18分です。つまり何時間働いても平日は18分分の手当しかつかないのです。
— こおり❄ (@8oA6B64Kt2kwJuj) March 27, 2021
自分の健康と生活を守るために知っておきましょう。学校ではほぼ教えてもらえません。#教師のバトン
初任で未経験の運動部顧問になりました。土日は練習や大会で消えていき、連勤が続きました。授業準備もろくにできず、身体も授業もボロボロでした。休みなく働いた結果、自殺を考えるようになりました。うつ病でした。
— うつの私(うつわた)@2度目の休職→復職に向けて (@5gd6l04iNnFGxUd) March 26, 2021
未来ある初任者の皆さんには私のようになっては欲しくはないです。 #教師のバトン
これらをしたらバトンが渡ると思いますよ
— アイムフリー☺︎ (@TeacherhaGreat) March 26, 2021
①部活動の外部委託
②残業代を払う
③休憩時間の確保
④勤務時間の周知徹底
⑤免許更新制の廃止
⑥各校に専門家の配置
⑦講師の待遇改善
⑧教員の増員、定数の見直し
⑨エアコン、トイレ掃除の業者委託
⑩勤務時間前の児童の登校の禁止
#教師のバトン
これだけの悪条件を並べられて、誰がこのバトンを受け取ろうと思うだろうか。文科省の思惑は完全に外れ、「#教師のバトン」プロジェクトは人材確保に向けてのネガティブキャンペーンとなってしまった感がある。
まさに下のツイートが示す通りの展開となってしまった今回のプロジェクトだが、なぜここまで教師たちの不満は一気に爆発してしまったのだろうか。
パンドラの箱を開けてしまった文部省
— しょうに (@sho_ni_555) March 27, 2021
#教師のバトン pic.twitter.com/87qPtxXNy2
ひとことで言えば、今回の文科省によるプロジェクトが「やりがい搾取」だと感じられたからだろう。「やりがい搾取」とは、経営者が支払うべき賃金や手当ての代わりに、労働者に「やりがい」を強く意識させることにより、本来支払うべき賃金の支払いを免れる行為のことを指す。
つまり、文科省が人材確保のためにすべきことは、ひとえに労働条件の改善であり、そこが改善されないなかで、「やりがいある仕事です!」というキラキラTweetで若者を集めようという手法に対して現場の教師たちが憤りを覚えた、というのが正直なところのようだ。
私自身も教育現場に身を置いていた時期もあり、このハッシュタグに連なる教師たちの不満には一つ一つ共感している。おそらく私自身、いまも教育現場にいたならきっと同じような感情を抱き、「やりがい搾取」だと批判の声を上げていただろう。
ただ、本当に問題を解決しようと思うなら、その怒りの炎を誰に向けるべきかは冷静に考える必要があるのではないだろうか。今回の件で言えば、怒りの矛先を向ける相手は「文科省」でいいのか。私は、そうは思わない。もう少し正確に言えば、文科省に怒りをぶつけるだけでは小手先の対策しかなされないだろうと思っている。
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