「乙武さんは、宇宙についてどう思いますか?」
先日の記事でも書いたように、45歳という年齢になってくると、いかに“老害”にならずにいられるかと意識せざるを得なくなってくる。そのためにも、できるかぎり若い世代との接点を増やすことを日頃から心がけているが、そうした意味で非常にありがたいのが、若者が主催するイベントへの登壇だ。
ただ壇上から一方的に話すだけで終わってしまっては意味がないが、こうしたイベントではたいていスピーカーと参加者が交流することのできる時間を取ってくれている。私はそうした時間が楽しみで、マネージャーにも頼んでこのような機会には可能なかぎり参加させてもらうようにしている。
今月も二度ほど、若者が主催するイベントに登壇する機会をいただいた。ひとつは、先週末に開催された「U-18サミット」。そして、もうひとつが「Hive Tokyo」だった。東京大学の学生である堀拓人さんが主催するこのイベント。3回目の開催となる今回のテーマが「多様性」ということで、私にお声がけいただいた。
「LGBTQ当事者」「外国人支援」「女性経営者」というそれぞれの知見を持った方々とのパネルディスカッションや、「多様性」をテーマにした参加者同士のグループディスカッションが終わると、いよいよ交流会へ。先ほどの登壇での話に興味を持ってくれた若者たちが私を囲んでくれた。
いま私が取り組んでいる義足プロジェクトについて質問をしてくれる子もいれば、みずから取り組んでいるビジネスの話をしてくれる子も。参加者のほとんどが現役大学生ということもあり、私にとっても新鮮で、刺激になる話ばかりだった。
何人かと話していると、小柄な女性が「私もいいですか?」と輪の中に入ってきた。私にどうしても訊きたいことがあるという。
「乙武さんは、宇宙についてどう思いますか?」
あまりにバクッとした質問に、一瞬、戸惑ってしまったが、彼女はすぐさまその質問の意図を説明してくれた。
「私は宇宙開発ということに興味があり、その分野で活動もしているのですが、何回かこうした批判を受けたことがあるんです。『宇宙なんて何の役に立つんだ。世の中には、貧困だったり、障害者問題だったり、もっと解決しなければならない課題が山積している。もっとそうしたことに尽力していくべきじゃないのか』って……」
他者の夢や目標に、そこまで土足で踏み込んだ上に、わかりやすい社会課題だけに取り組むことを是とする主張に、まずは耳を疑ってしまったが、おそらくは純真な彼女は、真剣に悩んでいるようだった。
「私、そうした話をされるたびにモヤモヤしてしまって。私がやっていることって意味がないのかな、たとえばLGBTQとか障害当事者の方たちは実際どう思ってるんだろうなと気になってしまって。だから、今日は乙武さんにお会いできるとお聞きして、ぜひそのことをお訊きしてみたいと思っていたんです」
なるほど、そういうことだったのか。
私は少し考えて、彼女に向かってこう言った。
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