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20代のみなさん、国に差別されたままでもいいんですか?

今回の参院選、私を含めて様々な方が名乗りをあげている。なかでも話題なのが、“令和の暴露王”東谷和義さん。「ガーシー」がNHK党から全国比例で立候補するというのだ。

東谷さんの出馬表明が“異例中の異例”なのは、彼が暴露系YouTuberであることだけが理由ではない。「命を狙われたり、逮捕されたりする恐れがある」として、選挙中だけでなく、当選しても帰国する予定がないことを公表しているのだ。

NHK党の代表である立花孝志さんも、「戻ってきたら国家権力に潰される。彼が捕まればYouTubeがBAN(停止)される可能性もある。これまでの政治家と違うタイプの活動をしてもらう」と東谷さんの方針を容認しているようだ。

当選後の“職場放棄”を堂々と公表していることについて、「冷やかしだ」「有権者をナメている」などと多くの批判も飛び交っているが、ここで大事なことは、そんな東谷さんにも立候補する権利が与えられている、ということである。

「日本の国会議員なのに、日本に帰国するつもりがないやつに投票なんかしてたまるか」

そう判断し、彼に票を入れないことは有権者の自由だ。しかし、そんな主張を掲げて立候補することもまた東谷さんの自由であり、彼に与えられるべき権利だ。民主主義とは、そういうものであるべきだ。

日本に帰るつもりがない人でさえ立候補する権利があるというのに、この国では立候補する権利が与えられていない人がいる。「29歳以下」の人々だ。

選挙においては、「選挙権」と「被選挙権」のふたつの権利がある。選挙権とは、どの候補者がいいか判断し、投票することができる権利。被選挙権とは、自分自身が立候補することができる権利だ。

選挙権については、それまで20歳以上と定められていたが2016年から18歳以上に引き下げられている。しかし、被選挙権については高止まりしたまま。国政で言えば、衆議院議員は25歳以上、参議院議員は30歳以上と定められている。

そもそも、なぜ衆議院と参議院で被選挙権が異なるのだろうか。総務省によると、参議院は「良識の府」とも呼よばれ、「思慮分別を衆議院よりもさらに求められるため」なのだそうだ。

20代のみなさん、あなたたちは「思慮分別がない」と言われている。誰かが陰口を言っているわけでもなく、メディアがそう書き立てているわけでもなく、国がそう定めている。この国は、年齢で「思慮分別の有無」を判断している。

しかし、20代でも思慮分別があり、「良識の府」である参議院議員にふさわしい人物はいくらでもいる。それこそ1990年代中盤以降の若者たちの総称でもある「Z世代」という言葉は昨年、流行語大賞にノミネートされたほどで、MXテレビ『堀潤モーニングFLAG』という番組ではコメンテーターをZ世代の若者たちに限定しているほどだ。彼らの発言を聞いていると、とても「思慮分別のない大人」であるとは思えない。


逆に言えば、30歳以上でも思慮分別のない人物などいくらでもいる。また、思慮分別の有無という個人的な資質を超えて、ルール上は100歳を超えて認知症が進んだ高齢者であっても、「30歳を過ぎているので思慮分別がある」と見なされ、立候補する権利が与えられている。年齢で判断することが、いかにナンセンスであるか、おわかりいただけるのではないだろうか。結局は「その人次第」であり、どんな人がふさわしいかを判断するのは有権者であるべきだ。

年齢によって線引きをすることに、どんな正当性があるだろうか。下限を設けることに正当性があるならば、被選挙権の上限を設けることだって議論されなければフェアではない。

もちろん、私自身の考えは下限も上限も設けるべきではなく、誰もが選挙に出られる、立候補する権利を与えられるようにすべきだと思っている。

こう書くと、「下限なし」ならば子どもでも立候補できるようにすべきなのかと疑問を持つ方も出てくるだろう。何歳までを「子ども」とするかにもよるが、私は義務教育修了と同時に、選挙権も被選挙権も与えられるべきだと思っている。

そもそも義務教育とは、何だろう。文科省は義務教育について、「国民が共通に身に付けるべき公教育の基礎的部分」と定めている。わかりやすく言い換えれば、「社会に出る前に最低限身につけておくべき学習内容」だ。これを修了していれば、私たちは自分で働き、自分で稼ぎ、自分で税金を納めることができるようになる。

にもかかわらず、義務教育を修了していても、選挙で投票する権利も、立候補する権利も与えられないのは、まったくもって理不尽ではないだろうか。ただ税金を納めさせて、政治に参加する権利は与えないなど、こんな不当なことがあっていいだろうか。

もちろん、10代や20代の政治家が誕生することに、「そんな若造に務まるはずがない」と考える人も少なくないだろう。ならば、その人に投票しなければいいだけの話だ。「この人に政治家は務まらない」と考える人が多いから権利が与えられないと言うならば、ガーシーにも、おそらく私にも被選挙権は与えられるべきではない。

10代や20代のみなさん、もっと怒ったほうがいい。あなたちは年齢で差別をされている。ただ年齢という条件だけで、参議院議員という立場で政治に関わる資格がないと言われている。

「被選挙権の引き下げ」は、私が絶対に実現したいことのひとつだ。この国が、年齢で国民を差別するような社会であり続けてほしくない。

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