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元人事×HSP当事者が考えた「こうすべき」に苦しむ人への3つの処方箋

この記事で得られることは2つです。

①HSPの方が苦しんでいる言葉「こうすべき」について、なぜ要注意なのか、その仕組みが分かります。
②元人事×HSP当事者が考えた、HSPの方が「こうすべき」の言葉から逃れるための3つの方法が分かります。

HSPとは「とても敏感な人」のことです。詳しくはこちらで紹介しています。

■「こうすべき」(「べき論」)って何?

皆さんはこんな言葉をかけられて、嫌な思いをしたことはありませんか?

「周りに迷惑がかかる」
「本当にそれでいいの?」
「みんなおかしいって言ってるよ」
「誰がやっていいって言ったの?」
「あなたのためを思って言っている」
「そんなことしたら大変なことになるよ」
「そんな勝手なことをしてたら誰も信頼してくれないよ」
「場をわきまえなさい」
「みんなが困っているんですよ」

これらは、人に「こうすべき」と暗に強制する言葉なので、私は「べき論」と呼んでいます。空気や同調圧力と同じ意味です。
日本社会に多く見られる集団重視の人間関係、組織内での圧力のことです。

日本の同調圧力、空気の背景、対策については、この本に分かり易く書かれています。

「べき論」がなぜ要注意なのでしょうか?

特定の人が集団の空気をつくりあげ、コントロールするからです。
更に「べき論」に従った人が従わない人へ、ズルいという感情を抱き、従わない人を非難するという連鎖が起こります。集団が一つの方向に向かっていくのです。

「べき論」は、道徳やスローガンなどを利用して作られます。批判しにくいものを隠れ蓑につくられるのです。だから分かりにくい。
例えば、「みんな仲良く」というスローガンを元にいじめが横行する。
いじられるのは嫌だと拒否しても、コミュニケーションの一環、盛り上がりに水を差すのか?という「べき論」がそれを押さえつけるのです。

しかしこの「べき論」は、偏った考えからきています。本来、議論の余地があるものなのです。
それを無視し、集団で共有してしまう。そして逃れられなくなるのです。

私もこれまで、この「べき論」に苦しめられてきました。HSPの私は、人の感情に影響されやすいので、本当に苦しかった。

自分の望む事と、強制されていることの境界が分からなくなるのです。人の顔色や周囲を気にしながら生活するようになってしまいました。

職場でも「べき論」が支配していました。
例えば、「新入社員はみんなより早く職場にいないといけない」「電話は一番でとらないといけない」など。
先輩は敬われないといけないという上意下達の空気があります。
明確に指示がないのに強制される理不尽さをいつも感じていました。

■3つの処方箋

理不尽な「べき論」に対し、どう対処すればいいのでしょうか?
正論で戦うのは、周囲の人の感情を敏感に感じ取ってしまうHSPには難しい。
これからお話するのは、HSPの方のための処方箋です。

まず重要なのは、「べき論」の目的を考えることです。
集団にとって大事なことなら目的を言えばいいのです。それを言わないのは訳があります。
それは「相手を支配したい」という隠れた意志があるからなのです。

①危険人物を見つける、近づかない

だから、まず最初の対処法は「べき論」を投げかける危険人物を見つけ、近づかないことです。
まずは「べき論」を使う相手を把握しましょう。
「べき論」を使う危険性の高いのは、こんな人です。

○親しくないうちから人のプライベートに踏み込んで来る人
 距離感が近すぎる人は、意見の相違を認められない人が多いような気がします。要注意です。
○共感度が高すぎる人
 共感度が高すぎる人は、期待も高いので失望も早い。それが人をコントロールしたいという欲求につながるのではないでしょうか。
○偉い人、強い人の発言に敏感に反応する人
 いわゆる空気を読む人です。この人は言っていることの一貫性がありません。ポジションや立場が変われば言うことが正反対になります。しかし、本人は意識していません。そういう人は、無意識に「べき論」を使います。

こういった人から「べき論」を投げかけられる可能性が高い。だから基本は近づかないことを心がけましょう。

仮に「べき論」を投げかけられたとしても、議論する必要はありません。答えない。はぐらかす。
例えば、「そうですねー」「ちょっと考えておきます」「よく分からないんで」など。
場をやり過ごすことで成功です。聞いていないふりをするくらいでもいい。べき論は「支配するため」の言葉だと意識すれば、反応しないことで自己嫌悪に陥ることもなくなります。
相手に「こいつに言っても仕方がない。」と思わせる。正面から争わないのです。

この野本響子さんのコラムも参考になります。子育て中の小学校での親同士のお付き合いのお話ですが、「変わり者枠」に入ってしまうというものです。

お母さん友達の中でも「あーあの人変わってるからしょーがないね」枠に入ってしまいます。日本人は、どういうわけか自分と同じような人には厳しいのですが、初めっから「こいつは非常に変わっているな」となると、割と放っておいてくれるものです。突然、寛容になるのです。

②「そもそも論」を発動する

それでも追いすがられた時は、「そもそも論」を発動します。
「べき論」に対して疑問を一言ぶつけるのです。
みんなに聞こえるように一言だけです。
例えば、「~しないといけないってことですか?」「絶対にみんなしないといけないんですか?」「それって何か根拠(目的)があるんですか?」など。
みんなの前で言う事がポイントです。言った事実を知ってもらうのです。
大丈夫です。必ず同じ疑問をもつ人がいます。その時に賛同が得られなくても大丈夫。必ずいます。
また一言だけでいいのです。一言言ってすぐ退散するのが次のポイントです。
相手が反論したとしても、そこから議論には乗りません。「まあ、私も全てを知っているわけじゃないんで。でも、いろんな意見があるんじゃないですかねえ。」などとはぐらかします。
一言で退散する理由は、すぐに議論が感情の問題にすり替えられるから。建設的な議論が、人格批判に聞こえる人が一定数いるのです。そのような人に深入りしても議論にならず、話をこじらしてしまいます。
ここでは、「この人には、うかつなことは言えない」と思わせれば大成功です。

この「そもそも論」は、「べき論」を打破するためにとても重要です。「べき論」には議論の余地がある。「そもそも論」で問題点に気付くのです。
この「そもそも論」に気付くために2つの方法があります。

まず一つは、「一般の人ならどう考えるか?」を考えること。
客観的な視点を意識します。
そのためにも、集団の外の人との繋がりは大切です。仕事以外の趣味の友達、学生時代の友達など、複数の友達の考えを参考にするのです。
本も重要なツールです。自分の価値観を揺るがす本、社会の仕組みを知ることが出来る本が沢山あります。少しずつでも触れることで客観的な視点がもてます。

もう一つは、自分が譲れない原点を考えること。
自分が一番大切にしていることは何か?
もしかしたらHSPの方にとっては一番苦手な部分かもしれません。今、自分の奥底で小さくなっている自分の気持ち、感情を拾い上げる。自分の感情を書き出して、それを読みながら譲れない原点を探るのもいいでしょう。

③集団を移ること、やめること

しかし、会社や学校、家族自体がこの「べき論」を押しつけて、行動を強制することがあります。
学校が「個性を大切に」と言いながら、均一で「みんなと同じことが出来る」ことを目指している。会社が法令遵守と言いながら、実は売り上げを第一優先にし、法令違反を見て見ぬふりをしているなど。
組織が個人を無視し、集団を優先していることに他ありません。それが染みついている。これは簡単には変わりません。
この個人への押しつけが、あなた自身の根本を揺るがす状況なら、その集団に留まることはよくありません。個人が尊重される場所に移ることを考えましょう。
集団を移る、やめることの重要性は、この本が本当に分かり易く、納得できます。

「べき論」を使う人の目的は人の支配であること。
そして現実的な対応法は、支配する人を事前に見つけ、距離を取ること。
打破するために「そもそも論」を使うこと。
そして、集団を移る、やめる事も選択肢とすることをご理解いただけたかと思います。

■まとめ

私自身、職場の「べき論」とずっと戦ってきました。そして人事として風通しのいい職場をつくるため、試行錯誤してきました。
分かったことは、職場では、大小様々な集団が様々な「べき論」を生み出していること。例えば、フォーマルな組織だけでなく、インフォーマルな派閥とか仲良しグループなどです。それらが中だけで通用する「べき論」をどんどん生み出しています。
なぜ「べき論」が生み出されるのでしょうか?それは「自分を守るため」です。
人は問題が起こると、不安から自分を守ろうとします。日本ではその不安が健全な議論ではなく、囲い込みに繋がってしまうのです。不安が「べき論」を生み出すのです。

私は思いました。人は自分を守るために人を傷つけている。でも、その事に気づけた人は優しくなれると。

だから、ここまで述べた「べき論」の仕組みを知り対処する方法を身につける人が増えてほしいのです。そうすれば空気は変わっていきます。この記事で楽になり、行動出来る人が増えることを望んでいます。

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