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敏感な人が会社と交渉するために必要な4つのこと

はじめに

 入社面接の時、面接官に「御社に貢献出来るように何でも頑張ります」と言った人は多いでしょう。
 また、「会社の役に立つために、会社の言われるとおり何でも頑張らないと」と思っている人もいるかもしれません。
 思い当たる人は、この法律の条文を覚えておいてほしいのです。

「会社と労働者は対等な立場で労働条件を決定し、労働契約を締結する。」

(労働基準法 第2条)

 つまり、会社と社員は対等な立場で契約を結んでいるということです。

 当たり前だと感じる人が多いかもしれません。
 しかしこの内容が本当に意識されていないと、会社の理不尽な要求を断れなかったり、必要以上に自分の能力が足りないと自信を失ってしまいます。
 特に敏感な気質の人は、周囲に流されてしまいがちです。会社の言いなりになってしまい、不利な状況に追い込まれてしまいます。
 今回はこの労働契約の原則を踏まえて、敏感な気質の私たちの立ち位置を再確認するとともに、会社と関わる時に意識すべきことを見ていこうと思います。

労働法って何であるの?

 先に書いたように労働基準法には「会社と労働者は対等」と書いてあります。しかし、現実にはそうなっていません。
 会社と社員とでは、情報の量や金銭的、人的資源が圧倒的に違います。だから、どうしても社員は不利な立場に置かれてしまいます。
 また両者が対等だと思っていない社員が多いことも、力関係の差を大きくしてしまいます。
 「会社に入ったからには、滅私奉公することが当たり前」と考える社員が多ければ多いほど、会社は楽です。
 このような社員が他の社員に自分の正義として押しつけるから、経営者が社員の頑張りにあぐらをかいてしまいます。

 この会社と社員の力関係の格差を引き戻すために、労働関係の法律があります。
 法律により、不利な立場に置かれてしまう社員を対等な立場に引き上げるのです。
 だから労働基準法には、労働者を保護するために会社が対応しないといけない義務が書かれているのです。

やっぱり交渉次第。

 でも、これら法律は、あくまで会社と社員を対等な関係まで引き上げるものであり、社員を一方的に保護する法律ではありません。
 民法には「契約自由の原則」があります。双方が自由に対等な契約を結ぶことが出来るのです。だから契約の一方の当事者である会社の権利も保護しています。
 だから、自分の条件をよりよいものにするために、会社と交渉しないといけないのです。

交渉するために必要なこと

 「交渉なんて自分には無理」、「何をどうすれば良いのか分からない」という人も多いでしょう。
 そこで意識すべきこと4つをご紹介します。

①交渉の相手を知る

 まずは「交渉の相手を意識しておく」ことです。
 交渉の相手は「会社」です。目の前にいる上司や人事の担当者が交渉の相手と勘違いしてしまいがちですが、実際は「会社」そのものです。
 上司や担当者がいくら色々言っても、就業規則や労働条件通知書などの書面に明確に書いてあればその内容が優先します。その書類が会社の正式な意思だからです。
 しかし、それらに記載がないことは、会社と社員との話し合いで決まります。
 話し合いになると会社の意思は、関係者である社員の気持ちに大きく左右される。
 だから相手が「会社」とはいえ、上司や担当者も蔑ろには出来ません。
 就業規則などの書面だけ、上司や担当者の顔色、発言だけに注意を向けていてはいけません。この両方に目を配るようにしましょう。

②自分が一番求めたいことを整理する。

 二つ目は自分が一番求めたいことを整理しておくことです。
 要求は全て通ることがほとんどありません。全ては契約であり、会社と社員双方の意向を合わせて決まるからです。
 だから、まず自分が一番得たいと思う条件は何かを交渉の前に考えておくのです。
 優先順位を意識せずに、自分の思っている要求を全て会社にのませようと強行に交渉した結果、全て受け入れられないという事も十分ありえます。

③相手方の心配、メリットを把握する

 三つ目は、交渉相手のメリットや懸念を正確に把握することです。
 自分の主張ばかりに気持ちが向きすぎて、相手方が考えていることに無頓着なことはよくあります。
 交渉する中で、相手方が何を求めているか?心配、メリットなどを出来るだけ把握することで、自分の主張を受け入れてもらうための道筋が見えてきます。
 まず自分の希望をやんわりと伝え、その中で、相手の反応を確かめましょう。
 交渉とは関係ない雑談も、とても有効です。
 職場環境、同僚の状況、仕事の進捗度合い。困ったことなど。
 その中で相手の言葉、反応に注意を向けましょう。自分が想像した相手の心配を投げかけてみてもいいと思います。
 相手方の反応に注意を向けることで自分の考えの精度が上がり、交渉を前に進めることができるでしょう。

④Win-Winの結論を得られるように努力する

 最期は、自分の主張を通すことだけを考えないということです。
 当然交渉は自分の主張を通すことが目的ですが、それだけを考えていては上手くいきません。
 交渉の結果はお互いの合意です。もしどちらかが納得いかない中で合意したとしても、必ずどこかで問題が再度発生します。
 それを防ぐためにも、相手の主張を取り入れた結論を模索しましょう。
 さて、どうするか?
 ここで「②自分の一番求めたいことを整理する」、「③相手の心配、メリットを把握する」が活きてきます。
 この相手の心配やメリットを踏まえた、双方が折り合える合意点を探るのです。
 求める事は主張するが、譲れる部分かつ相手が求めていることは大胆に譲りましょう。
 これにより、お互いに納得いく解決が図れます。

交渉なんて無理という人のために

 とはいえ、やはり「交渉なんて自分には無理」と思っている人は多いでしょう。
 それは、交渉することを尻込みさせるハードルがあるからです。
 「交渉すると会社との関係がこじれるのではないか」、「辞めさせられるのではないか」、「同僚から出過ぎたまねをする奴と思われるのではないか」、「会社にいられなくなるのではないか」など、感情のハードルが主張することを躊躇させます。
 そこで、このハードルを低くし、思い切って交渉の場に立てる4つのポイントをご紹介します。

①知識を得る。

 知識を得ることはとても重要です。
 知識がなくては、相手の思うままにコントロールされてしまいます。
 会社には会社の規則、就業規則があります。
 社員の権利、義務関係が載っています。会社の動きは、この就業規則に基づいて行われます。
 裏を返せば、就業規則に書いていないことは勝手にできないのです。
 例えば、就業規則に社員を解雇出来る要件が書いてあるにも関わらず、書いてある要件以外の理由で解雇することは出来ません。
 また休暇の制度が就業規則に書いてあるのに、上司が「休みは取らせない」と言うのは、会社が社員との契約を無視しているということになります。
 「上司はこう言ってるけど、おかしい。」
 知識があれば必ず疑問が生まれます。
 疑問を調べることで更に知識が厚くなります。
 その知識により、交渉を有利に進められます。
 疑問を生み出すためにも、会社の規則を確認しましょう。

②労働組合を利用する。

 そんな時に頼りになるのは労働組合です。
 確かに労働組合は体質が古い、しがらみがあって面倒くさいというイメージはあります。
 しかし、知識・情報を得るという観点で労働組合はとても役に立ちます。
 もし自分の会社に労働組合があれば、そこに相談してみることで、いろいろな情報が手に入るでしょう。
 自分が手に入れたい情報について、いろいろ相談してみるといいでしょう。
 相談する相手を見つけるのに苦労するかもしれません。
 職場で組合の役員をやっている人がいるかもしれません。
 その人から相談できる人を紹介してもらうことも出来るでしょう。

③自分だけ主張するのは出すぎているという思い込みを捨てる。

 「主張する人が出すぎていて煙たがられるのではないか」という心配する人もいるかもしれませんが、それは思い込みです。
 人事担当者には様々な情報が入ってきます。トップの方針、組織の改編方針、評価、採用状況、退職の状況、従業員の希望、そういった情報を元に人事異動が行われていきます。
 ここで人事担当者が一番困るのは、自身の希望、主張が見えない人の対応です。
 希望、主張がなければ、その人の事は特に何もないものとして人事が決定されてしまいます。
 何も言わない人のことを慮って、人事が決まることはあまりありません。
 更に言えば、上司など声が大きい人の個人的な評価や思惑によって、良いように扱われてしまう可能性だってあるのです。
 だからこそ、自分の希望は表に出しておくことが大切です。出過ぎたまねではありません。
 人事担当者としては材料が手に入りありがたいのです。
 出しておくことで、取り上げられる可能性が高まります。

④得た知識で上司・人事、周囲の人を助ける

 交渉というと相手と対立する構図を思い浮かべますが、実はそうではありません。
 先に述べたように、人事に携わる人は常に情報がほしいと思っています。
 何故なら、情報がなければいい人事は行えないから。
 だから、情報を提供するという意識で主張するといいでしょう。
 会社も情報を求めていると考えると、気持ちも楽になります。
 上司も、部下がどのような考えをもっているか事前に把握できると、仕事がやりやすいのです。
 いきなり部下から主張されると、上司もパニックになり話し合いにならないかもしれません。
 事前に知っていれば良い方向で対応出来るのに、お互いの気持ちの痼りだけが残ってしまいます。

 また、周囲の困っている人に得た知識を使ってもらうのよいでしょう。
 就業規則の内容など、自分の知っている知識を伝えるのです。
 就業規則などは、何かトラブルなどがない限り普通見ることはないはずです。
 だから教えてもらった人は、とても感謝してくれるはずです。
 そういったことが、職場内の人間関係を良くし、いざという時に自分を助けてくれます。

おわりに

 今回は、労働法の条文から会社と社員は対等であり交渉することが大切であること。そして交渉するためのいくつかのポイントについてお話しました。
 社員が会社と対等になるためには、法律の後押しも大事だけど、適切に主張するということが大事です。
 主張すること周囲から煙たがられるという考えは一面的で、正しくありません。
 主張することで、会社、上司、社員が同じ方向を向いて高め合うことに繋がるという事は理解してもらいたいです。
 でも、主張を躊躇させるハードルはあるので、少しずつそのハードルを下げていくために動くことが大切です。
 社内で自分を活かし、やりがいをもって働くために、これからも上手く主張して、快適な職場をつくっていきましょう。

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